この記事では、リハビリ(理学療法)を提供するうえで重要な『行動変容』について、各ステージごとで療法士が大切にすべきポイントも踏まえて知識を整理していこうと思う。
ちなみに、行動変容のステージは以下の5つで構成されている。
- 前熟考(無関心)期
- 熟考(関心)期
- 準備期
- 実行期
- 維持期
前熟考(無関心)期
前熟考(無関心)期は「現在、自分の行動を変えようという気持ちが無く、将来(通常6か月以内)にも変えるつもりが無い段階」である。
無関心であるが故に、行動変容は起こせない。
熟考(関心)期
熟考(関心)期は「現在は何も行動を起こしていないが、近い将来に行動を変える気持ちになっている段階」である。
この時期に重要なことは、「どのような動向をすれば、どんな効果が期待できるかについて知ること」である。
つまり療法士に求められているのは『正しい知識の提供』ということになる。
ポイントは、以下の知識を提供すること
- なぜそれをしてはいけないのか?
- なぜそれしなければいかないのか?
例えば介護予防では結果期待(○○をしたら○○になる)を持ってもらえるような情報提供をする。
⇒毎日散歩をすると、体重も落とせ、認知症を予防できる。
また、『行動的翻訳』も重要となる。
※行動翻訳とは、あいまいな指示を具体的な行動レベルに落とし込むこと
例えば、高血圧を持つ人に対する生活指導は以下の様に具体的に成されるべきである。
- 「毎食後、1日3回オレンジジュースをグラス1杯飲みましょう(K摂取)」
- 「毎食後、自宅の周りをウォーキングしましょう(適度な運動を)」
準備期
準備期は
「現在、望ましい水準ではないが、不定期に行動している段階あるいは、すぐに行動を変えようという気持ちになっており、行動を始める最後の調整を行っている段階」である。
この時期に重要なのは『どのようにすれば良いか方法を知ること』
であり、療法士が考慮すべきポイントは以下の2つである。
- チェイニング
- シェイピング(=スモールステップ法)
チェイニングとは「行動を段階に分けて教示すること』であり、例えば歯磨きであれば「歯ブラシを手に持つ⇒水道の蛇口をひねって水を出す⇒毛先を濡らす⇒チューブの蓋をとって歯磨き粉を歯ブラシにつける・・・・・」といった感じ。
シェイピング(=スモールステップ法)とは「一度に高い目標を達成するのではなく、小目標を立てて、段階(ステップ)を踏んで実施する方法」である。
※挫折した時は1つ前のステップに戻る。
実行期
実行期は「現在、望ましい水準で目標とする行動を実行しているが、まだ間もない(通常6か月以内)段階」である。
この時期に重要なことは『実行してみること』である。
また、実行しながら『セルフモニタリング』をしていくこともポイントとなる。
セルフモニタリングとは、「達成しようとする目標に向かっている途中の自分の行動や体調、気持ちの変化を観察し記述する方法」であり以下の3つで構成される。
- 目標を決める
- 何をモニターするか決める
- 記録をつける
維持期
維持期は「現在、望ましい水準で目標とする同道を実行しており、安定して継続している(通常6か月以上)段階」である。
この時期に重要なのは『成功体験(強化因子)や次も出来そうだ(自己効力感)という感覚を得ること』である。
ただし、強化因子の発生には『即時強化(60秒ルール)』が求められる。
60秒ルールとは「人の行動が強化(あるいは弱化)させるためには、その行動が起きた60秒以内に報酬(あるいは罰)が提示される必要がある」という意味の用語である。
しかし、実際のリハビリ(理学療法)では、「筋力トレーニングをしても60秒以内に効果を実感できる」ということは無いので、他の強化因子が必要となる(実は、これが結構難しかったりする)。
少し話は脱線するが、ブログ記事の作成も60秒ルールに当てはまらない(ブログ記事を書いて60秒以内に何か良いことが起こるわけではない)。
なので、個人的には「自身の知識が、また一つ体系化された」と解釈し、喜ぶようにしている。
※実際に、ブログが少しずつ構築してきているのを実感するのは楽しかったりする。
更には『動機づけ(外発的・内発的動機づけ)』を高め、成功体験を増やしていくことも重要となる。
例えば以下など。
- 自分で自分を褒める、評価する(内発的)
- 他者に褒めてもらう、評価してもらう(外発的)
- 少し上の目標を立てる。目標達成でご褒美(外発的)
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維持期で登場した『自己効力感』に関しては以下の記事でも詳しく解説しているので、興味がある方は観覧して頂きたい。