脳科学では、実際に脳の中身をみる装置を使って、脳が働いているところを観察・比較する。

 

そして例えば、男女でどの程度違うのかを調べたりも出来る。

 

でもって、脳の中身をみる装置として現在よくつかわれているのがファンクショナルMRI(fMRI)である。

 

 

fMRIの仕組み(普通の「MRI」との違い)

 

fのつかない普通のMRIは有名だ。

 

皆もどこかで耳にしたことはあると思う。靭帯の内部構造を、身体を切ることなく、下肢化できる装置である。

この装置を脳に適用することも出来、脳の内部に病変が無いかどうかを頭蓋骨を切り開くことなく、調べることが出来る。

怪我や事故の後に入ったことがある方もいるのではないだろうか。

 

一方でfMRIでは、放射線ではなく、強い磁場を使う。

人体を構成する物質には水や脂肪などがあるが、これらの成分にはほとんどかならず水素原子が含まれている。

で、磁場をかけると、その水素原子が信号を出すのだが、それをキャッチして画像化すると、どこにどの程度どんな物質があるのかを下肢化することができ、内部構造が分かるという仕組みである。

 

fMRIでは血流量を観察

 

fMRIでは、前述した原理を応用して、脳における血流の変化を観察する。

 

脳神経細胞の電気的活動を直接見ている訳ではなく、神経活動に伴う代謝や脳血流量の変化を測定することで、脳の活動を間接的に捉えるという方法である。

 

血液中では、赤血球中のヘモグロビンが酸素を運ぶ役割を担っているが、酸素と結びついたヘモグロビン(オキシヘモグロビン)と、酸素を手放したヘモグロビン(デオキシヘモグロビン)では、磁場に対する振る舞いが違う。

 

オキシヘモグロビンは反磁性体なので、MRI信号に影響を与えないのだが、常磁性体のデオキシヘモグロビンは磁場を歪めるので、水素原子の出すMRI信号が弱められてしまう。

 

脳が活動するというのは、神経細胞が活動するという事なのだが、神経細胞の活動が増加すると、そこで酸素がたくさん消費されるようになる。

 

すると、その近くのデオキシヘモグロビンの割合が上昇する。

 

その数秒遅れで、局所的な脳血流量が急激に増加する。

これが、消費された量よりずっと多い酸素を供給するので、オキシヘモグロビン濃度が急激に増える。

すると、MRI信号が強くなり、また長く持続する。

 

 

fMRIで、色んなことが分かるよ

 

fMRIとは、分かり易く言えば、巨大な磁石のようなものによって脳をめぐる血流を視覚化することができる機械である。

 

これを使えば、人が様々な感情を抱いている際に、脳のどの部分が活性化するかが一目で分かる。

 

活性化した部分には血液が集り、充血した状態になるからである。

 

活動中の脳がどんな状態にあるかは謎に包まれていたが、fMRIの登場で大きく解明が進んだ。

 

これにより様々な情動に脳のどの部分が関連しているかも、ピンポイントで分かるようになった。

 

さらに明らかになったのは、こうした脳内の活動パターンに一定の安定性があることである。

 

もしも、あなたの喜びの瞬間に脳のどこが活性化するかを調べたら、半年後に何か別の喜びがあった時にも、だいたい同じ辺りが活性化する。

 

悪い知らせを聞いた時には、喜びの瞬間とは別の部位が活性化するが、それから一年後に何かで失望を味わったら、やはり同じ場所に反応が現れるはずである。

 

fMRIを用いれば被験者は、自分を偽ることも、実験者が聞きたがっている(と被験者が思っている)回答を故意に選ぶこともできない。

 

これが、脳の反応を直接計測する方法の大きな利点である