プラセボ効果を検証する実験は数多く存在する。
そして、プラセボによる鎮痛効果に関しては、薬理学的な鎮痛効果と同程度に強力であったり、時にはそれ以上に強力であったりすることもあるとされている。
一方で、プラセボ効果には「ほとんど効果が認められない」というレベルから、「痛み治療の効果の90%程度に影響を及ぼす」といったレベルに至るまで幅がある(Fields 1981)。
これらのことから重要な点は下記の2つだと思われる。
- プラセボ効果は、時として非常に強力に作用する
- プラセボ効果は、使用する人物、使用される人物、あるいは時と場所などによって効果にばらつきがある
ここでは、プラセボ効果の実験のなかで有名なものを一つ記載する。
著者:
Cobb et al(1959)
目的・条件・治療法:
病理学的証拠の無い胸心痛の外科的軽減の理論的根拠を研究すること。狭心症患者への真の外科手術とプラセボ手術。
方法:
二重盲検法。乳腺動脈の完全外科的結紮に対する、偽の外科手術(皮膚切開と動脈を露出するのみで実際は手術をしていない)。患者も医師も偽手術が行われた事は知らされない。
所見:
どちらのグループも大半の人たちは、痛みの総量、歩行距離、治療薬の消費量などで改善を示した。心電図は両方のグループで改善のみられた患者がいた。この改善はいずれのグループでも6か月以上の観察中続いた。
結論およびコメント:
次のような点で最初の科学的証拠である。
- 外科手術が施行されたという信念は、本当の手術としての効果があった
- プラセボ手術は身体的、機能的および行動的な反応に影響した
- プラセボ手術は短期というよりはむしろ長期的な効果があった
- プラセボ効果は本当に器質的な病気を持った人に見出された
この研究の結果によって、狭心症に対する一つの医学的な治療法が放棄されることになった。
この治療法はそれまでは大変な人気があったのだが、研究結果からはもはや支持することはできなくなった。