慢性痛を訴える患者の一定割合は抑うつ傾向を有していると言われている。
これは、慢性痛により行動の制限や、社会への参加が著しく制約されていることが一因とされている。
痛みが長期化することによる抑うつや不安感は、痛みに有効に対処できず、痛みが治まらないために生活が制限されているという思いが長引くために引き起こされていると考えられている。
また、不安と回避の悪循環が痛みを慢性化させる「恐怖-逃避モデル」という説がある。
人は痛みを感じると、何らかの深刻な障害の徴候と感じ、多かれ少なかれ不安を抱く。
そして、不安に対しては、対峙するか逃避するかという2つの対処法がある。
対峙すると適切な対応ができ不安は減衰する。
しかし逃避すると不安は維持され次第に増強する。
その結果、身体への注意集中や過度のとらわれが形成される。
並行して、痛みを増強させる可能性のある行動を控えようとする。
これらの反応や行動は、身体能力の低下と障害、疼痛の増強、抑うつ気分の出現に繋がる。
不安と回避の悪循環の中で痛みが持続していくのである。