腰痛の慢性・難治化リスクを簡便に評価するツールとしてStarT Back testが系統別・治療手技の展開 改訂第3版に記載されていたので紹介する。

 

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KeelのStarTスクリーニングツール(StarT Back test)の概略

 

このスクリーニングツールは身体的要因に関与する設問が4問・心理社会的要因に関する設問が5問あり、計9問で構成されている。

 

総スコアが何点かによって、リスクが以下の3段階に区分される。

 

  • 3点以下の場合
    Low risk群
  • 4点以上、かつ心理社会的要因に関する5項目が3点未満
    Medium risk群
  • 4点以上
    High risk群

 

High risk群は、認知行動療法を行うよう推奨されている。

 

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質問項目

 

この2週間について、以下の質問に回答してもらう。

 

  1. ここ2週間腰痛が足の方にも広がった
  2. ここ2週間、肩や首にも痛みを感じることがあった
  3. 腰痛のため、短い距離しか歩いていない
  4. 最近の2週間は腰痛のため、いつもよりゆっくりと着替えをした
  5. 私のような体の状態の人は、体を動かし活動的であることは決して安全とはいえない
  6. 心配事が心に浮かぶことが多かった
  7. 私の腰痛はひどく、決して良くならないと思う
  8. 以前は楽しめた事が、最近は楽しめない
  9. 全般的に考えてここ2週間に腰痛をどの程度わずらわしく感じましたか?

 

「質問1~8まで」はYes1点・No0点で集計

 

「質問9」は全然0点・少し0点・中等度0点・とても1点・極めて1点で集計

 

※ちなみに、質問の1~4が「身体的」、5~9が「心理社会的」な質問になっている。
KeelのStarTスクリーニングツール(StarT Back test)

スクリーニングの判定

 

スクリーニングの判定は、質問1~9の集計である「総合得点」と、質問5~9の集計である「領域得点(心理社会的な要素の得点)」の2つの得点によってなされる。

 

  • 総合得点が3点以下
    lowrisk群

 

  • 総合得点が4点以上、かつ領域得点が3点未満
    medium risk群

 

  • 総スコア4点以上
    high risuk群

 

 

KeelのStarTスクリーニングツール(StarT Back test)のメリット

 

このテストは腰痛の慢性化・難治化リスクを簡便に評価するツールであり、腰痛が慢性化されていない時点からでも活用できるというメリットがある。

 

そして、これに引っ掛かるようであれば認知・情動的な要素にも細心の注意が必要だと判断できる。

 

強いてデメリットを挙げるとするなら、これが腰部のみのテストであるという点だろうか。

 

ただし、テスト項目を見て分かる通り、少し文言を変えれば他部位にも適用可能なツールと考えて良いのではないだろうか?

 

また、臨床において認知・情動的要素を大まかに把握したいだけならば、何も厳密に点数化する必要はない。

 

うっすらとテスト項目を覚えておくだけで、何となく慢性化・難治化のリスクを判断できると思われる。

 

※この様に書くと「テストを無理やりクライアントに当てはめている」と思う人もいるかもしれないが、このテストに引っ掛かったからと言って、心因性疼痛のレッテルを貼って通常の理学療法を行わないわけではない。認知行動療法的な要素も十分に取り入れながら接するというだけであり、これは痛みのリハビリテーションに大きく寄与する。そして、これらを繰り返すことは感覚的にリスクを判断するトレーニングにもなり、効率的なクリになるリーズニングに繋がる。

 

※注意点としては、痛みが認知・情動的側面の影響を受けやすいのは脊柱疾患であるということだ。もちろん四肢も影響を受けるが、(椎間関節などに比べて)四肢は各関節の自由度が高く、構造的な破綻の影響も受けやすい。このツールは四肢にも応用可能だが、脊柱疾患とは少し解釈を変えて用いる必要があるかもしれない。

 

 

関連記事

 

慢性腰痛における心因性要素にフォーカスを当てた、簡便な問診ツールに『BS-POP質問票』というのもある。

 

この質問票に関しては以下で詳しく解説しているので興味がある方はチェックしてみてほしい。

 

BS-POP質問票! 疼痛の精神医学的側面をチェックせよ!

 

 

その他の「痛み評価関連の記事」としては以下などがある。

 

痛み評価テスト(VASなどの疼痛スケール)の臨床活用法

 

マクギル疼痛質問票MPQ:McGill Pain Questionnaire)で痛みを評価してみよう