この記事では、上腕二頭筋腱炎の鑑別テストとして「スピードテスト(Speed test)」と「ヤーガソンテスト(Yergason test)」を記載していく。
上腕二頭筋腱炎とは
上腕二頭筋長頭腱は結節間溝を通り、関節内を直角に曲がって肩関節の上端に付着しているため、摩耗・損傷を受けやすい。
で、摩耗・損傷した上腕二頭筋長頭腱は腱炎や腱鞘炎となり、肩関節の痛みや運動障害を引き起こす。
実際の運動・活動としては上腕二頭筋が収縮する「抵抗下に肘を屈曲させたとき」などはもちろんのこと、上腕二頭筋長頭が走行している肩関節を抵抗下に外旋した時などにも疼痛が生じる。
炎症なので、腕を動かさなければ症状が治まることも多いが、不動により肩峰下滑液包に周辺から癒着が起こり、上腕二頭筋長頭腱腱鞘にも癒着が生じる可能性もあるため、痛みの無い範囲で(神経感作が行らない範囲で)上肢を動かしていくことも大切となる。
上腕二頭筋長頭腱炎の整形外科的テスト(鑑別テスト)
上腕二頭筋腱炎の鑑別する整形外科的テストとして以下について記載していく。
・スピードテスト(Speed test)
・ヤーガソンテスト(Yergason test)
スピードテスト(Speed test)
- 前腕を回外・肘関節を伸展させたまま上肢を前方挙上させる。
- その際に、前腕遠位端に抵抗を加えることで結節間溝に疼痛が出現するかを確認。
- 疼痛が誘発されれば陽性と判断。
以下はスピードテストの動画となる。
※抵抗に対して上腕二頭筋の求心性収縮のみならず遠心性収縮、あるいは前腕回内位で上腕二頭筋の影響を除去して疼痛に変化が生じるかどうかなども合わせて紹介している動画となる。
ヤーガソンテスト(Yergason test)
- 前腕を回内・肘関節を屈曲位とさせ、前腕遠位部を把持し、回外運動を指示する。
- その際に、前腕遠位端に抵抗を加える(等尺性収縮)ことで結節間溝に疼痛が出現するかを確認。
- 出現すれば陽性と判断。
以下がヤーガソンテストの動画である。
上腕二頭筋長頭腱炎は、構造上の位置関係から、肩甲上腕関節の問題と混同されやすい傷害である。
でもって、ここに記載したテスト「肩甲上腕関節の関節運動を伴わず実施させることで肩甲上腕関節による問題」と鑑別できる可能性があるが、肩甲上腕関節の傷害の中には関節の内圧が変化しただけでも疼痛をきたす場合もある。
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なので、より詳細に調べるためには、逆に上腕二頭筋に負担をかけず関節運動させることによる疼痛の有無を確認することも重要となる。
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