前頭前野は報酬-嫌悪回路の一部をなし、この回路は痛み刺激に反応し、興奮・抑制することで痛みの感じ方に影響を与える。

 

慢性痛が抑うつや認知障害を伴うことが多いのは、この回路の機能障害が関与していると言われており、慢性痛患者では前頭前野の活動低下(急性痛では活性化)とともに扁桃体や島皮質の過活動がみられる。

 

鎮痛は報酬で、持続する痛みは嫌悪であり、この回路のバランスが崩れ混乱が生じることで、痛みの評価や予測、自己評価などの認知機能の障害に至り、意思決定や積極的な行動に障害をきたすことになる。

 

慢性痛患者の前頭前野や視床で灰白質の減少、つまり脳委縮がみられることが報告されており、そのような機能的・器質的変化によって、慢性痛患者では様々な高次脳機能障害を生み出す可能性がある。