この記事では、人間が行動するうえで重要な要素である『動機づけ』と『欲求』について解説していく。

 

動機づけと欲求

 

 

人が一定の目標に向かって行動を開始し、それを維持する働きを『動機付け(motivation)』という。

 

さらに人の内部にあって、人の行動を引き起こすものを『欲求(need)』という。

 

欲求の中でも、餓えや渇きによるもの、睡眠・排泄などの生理的欲求は、誰にでも共通している極めて基本的な欲求である。これは生存に不可欠なものであり「一次的欲求」と呼ばれる。

 

さらに、一次的欲求が満たされることのよって生じる心理社会的なものは「二次的欲求」と呼ばれる。

 

これらは、安全・安定・愛情・所属・承認・自尊などの欲求であり「欠乏欲求」とも呼ばれる。

 

「何かが足りない」という欠乏状態を充足させることが行動を引き起こし、それがやる気の源泉となる。

 

そして、満たされる度合いが少ないほど強くなり、満たされることによって減少する。

 

さらに、一次的・二次的欲求が満たされると、次に「成長欲求」と呼ばれる、より高次な欲求が現れてくる。

 

欲求は高次になればなるほど個人的なものとなり、それが強く現れる人もいれば、あまり現れない人もいる。

 

「成長欲求の」の例としては、達成・自律・自己実現の欲求などが挙げられる。

 

すなわち、生存のための基本的欲求や「欠乏欲求」が満たされると、人は「自分の能力を生かして、さらに成長したい」と願い、より高次の欲求を追求するようになるのである。

 

マズローの欲求段階説

 

アメリカの心理学者アブラハム・マズローは「人間は、満たされない欲求があると、それを充足しようと行動する」としている。

 

さらに、欲求には優先順位があり、低次の欲求が満たされると高次の欲求へと段階的に移行する「欲求段階説」を唱えた。

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例えば、ある人が高い次の欲求段階にあったとしても、病気・怪我などのアクシデントによって低次の欲求が満たされなくなると、一次的に段階を降りて欲求の回復作業に挑み、その欲求が満たされると再び欲求段階に戻る。

 

さらに、この段階は一方向だけではなく双方向に行き来するものである。

 

また、最高次の欲求である「自己実現の欲求」が仮に充足されたとしても、より強度に充足(自己超越)させようと志向し行動するとしている。

 

 

リハビリテーション対象者の自己実現

 

リハビリテーションの対象者が、どのような状況下で、どの段階における問題・欲求を抱えているか、把握し整理することを優先していかなければならない。

 

つまり、現状において次の段階に上昇することが必要とされているのか、もしくは現状よりも下降させて満足感と安定性を得ることが必要なのか、さらに現実的にそれが可能なのか、本人の欲求だけではなく実現性とのバランスが図られたものであるのかというこある。

 

円滑なリハビリを進めていく上で、これらを判断していくことがカギとなる。

 

また、リハビリを行う対象者にとって、急性期・回復期・維持期(生活期)それぞれの状況下での欲求段階は同党ではなく、また、回復過程や障害の程度によっても、その欲求が自ずと異なってくる。

 

維持期のリハビリを行う対象者の欲求は、より高次な方向に向かう可能性もある。

 

維持期でリハビリを行うセラピストは、一次的・二次的欲求の充足の身にとらわれることなく、対象者のより高次な「自己実現」の視点に目を向け、目標設定・アプローチしていかなければならない。

 

さらに、障害がある故に理想的な生活と乖離せざるを得ない実情を踏まえて、欲求を捉えていかなければならない。

 

このように、心理的欲求の段階付けを理解した上で介入を試みると、目の前にある、時として複雑に絡み合ったように思える状態も、ひとつひとつ意味のある欲求が組み合わさったものとして整理することができる。