この記事は、高齢者の排便障害についての一般的知識について記載している。

 

排便障害を有している高齢者は多く、通所リハビリ・訪問リハビリに携わり、本人や家族・職員へアドバイスする際にも大切な知識と言える。

 

排便について

 

排便は、便を肛門から体外に排出することを指す。

 

排便に至るまでの流れは以下の通り

 

①摂取された食物は体内(口、食道、胃、大腸・小腸)を通過する間に、消化管の運動、消化液の分泌と酵素作用によって、栄養が吸収できるような物質へと分解される。

②栄養素は主に小腸で吸収され、残り(残渣物)が大腸に送られる。

③大腸では主に水分が吸収され、便塊となって直腸に達する。

④直腸が便によって満たされると、便意が起きる。

⑤次いで直腸の蠕動、内肛門括約筋の弛緩が起こって便が体外に排泄される。
排便の回数は「3回/日~週」と個人差が非常に大きい。

 

 

排便障害

 

排便は個人差が大きいのが特徴と言え、一般的に排便の障害には以下の3つを指す。

 

  • 便秘
  • 下痢
  • 便失禁

 

以降は、便秘・下痢・便失禁について順に記載していく。

 

 

便秘について

 

便秘とは、便の出にくい状態を指す。

 

排便間隔は人によって様々なため「1日1回排便がないから便秘だ」とは言えない。

 

一般的には、3日以上排便がない場合や、毎日排便があっても排便感や腹部膨満感がある場合は便秘と考える。

 

便秘の原因は以下のことが言われている。

 

・加齢によるもの

・悪玉菌の増加

・服用している薬剤の影響

・器質性便秘

・原因として疑われる、そのほかの疾患

 

 

加齢によるもの

 

高齢者は体内の水分量が減り、皮膚も乾燥しやすく便も硬くなりがちとなる。

 

また、排便するための筋力も低下するため「いきむ」ことが不十分で、排便が難しくなる。

 

線維の少ない偏った食事や小食も原因となる。

 

加齢による便秘の改善には、以下が重要となる

 

  • 食物繊維の摂取
  • 水分補給
  • 適度な運動で以下を促進させる
    ①腹筋の筋力低下予防
    ②腸の動きを活性化させる

 

 

悪玉菌の増加

 

人間の腸内は、年を重ねるごとに善玉菌が減少し、悪玉菌が増えるため便秘になりやすくなる。

 

悪玉菌の増加による便秘の改善には以下が大切となる

⇒ヨーグルトなどの乳酸菌の摂取(1日の摂取目安量は200~300gとされている)

 

※「発酵食品や食物繊維の摂取」や「高タンパク・高脂質の食品を避ける」なども有効とされている。

 

 

服用している薬剤の影響

 

抗がん剤・癌治療の痛み止め・利尿剤・血圧降下剤など

 

 

器質性便秘

 

便の経路である消化管に物理的な障害があることで起こる。

 

原因として疑われる障害は以下の通りで、いずれも医師による治療を必要とする

  • 大腸がん・直腸がん(腫瘍による通過障害)
  • 大腸ポリープ(ポリープによる通過障害)
  • 腸管癒着、腸閉塞(癒着した腸のために腸管運動が上手くいかない)
  • 開腹手術後(手術により、腸管が癒着する)
  • 子宮筋腫、卵巣のう腫など(いずれも腸を外から圧迫するため)

 

 

原因として疑われるその他の疾患

 

痔(痛みのため、排泄を我慢してしまう)、パーキンソン病(食事量低下や、運動量低下、自律神経障害)。

 

ちなみに、厳密な疾患ではなくとも、運動量低下や自律神経障害によって便秘が起こることもあり、上記に挙げた以外にも様々な原因が言われている。

 

 

下痢について

 

下痢とは、軟便や水様便が頻回に排便さえる状態を指す。

 

具体的には「70~90%の水分を含む便が1日につき200g以上排便される」と定義されている。

 

下痢の主な原因は以下の通り

 

  • 風邪や体調不良からの消化不良
  • 食事の量が多すぎる・食事の質が低下している
  • 薬剤による影響(抗生剤の副作用・下剤の乱用など)
  • ストレス
  • 過敏性腸症候群(参加した油や消化の悪い油は胃腸に負担をかけ、下痢になる可能性が高くなる)
  • 細菌やウィルス感染
  • がん・ポリープ潰瘍性大腸炎などの疾患からの下痢

 

 

便失禁について

 

便失禁とは、自分の意思とは関係なく排便されることを指す。

 

便失禁の主な原因は以下の通り。

 

  • 寝たきりで、排便に必要な姿勢が保持出来ないことに起因する強度な便秘
  • 下痢(抗生剤の副作用・下剤の乱用など)
  • 外傷、手術などによる解剖学的な障害
  • 脳卒中・脊髄神経の損傷、糖尿病などによる神経系の障害
  • 運動機能障害、認知症などによる機能的な障害

 

※神経系の障害のために「便意はあるが間に合わない」といったケースでは、ポータブルトイレの利用やトイレ移動距離の短縮、脱ぎやすい衣類の工夫など、トイレですぐに排泄出来る介助方法を検討することも大切。

 

※便意はあるが、失語症や認知症のため介助者へうまく伝えられないことによる便失禁も起こる

 

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