この記事では、廃用症候群の一つであり、看護・リハビリ(理学療法・作業療法)の知識として大切な『起立性低血圧』について、原因・症状・対処法・予防などを記載していく。

 

廃用症候群自体については後述するリンク先も合わせて観覧してみてほしい。

 

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起立性低血圧とは

 

起立性低血圧(Orthostatic hypotension)』とは以下を指す。

 

「起立時の血圧調節機構に障害があるために、起立時に血圧が低下する状態のこと

 

※急に立ち上がった時に意識が一瞬無くなる『立ちくらみ』は俗に脳貧血とも呼ばれるが、貧血ではなく、正式な病名は起立性低血圧である。

 

 

内科学の立場からは、起立性低血圧は『失神(急性及び一過性の全般的な脳血流低下に起因する一過性の意識消失)』に含まれる。

 

※失神に関しては以下の記事でまとめているので合わせて観覧してもらいたい。

⇒『失神とは(意識障害シリーズ)-意味・種類・問診のコツを完全網羅!

 

 

起立性低血圧の原因は以下などが挙げられている。

 

・特発性自律神経障害

・二次性自律神経障害(加齢による起立性低血圧は、ここに分類)

・薬剤性

・脱水性

 

ちなみに「廃用性(廃用が原因になって生じる)起立性低血圧」は上記のいずれにも位置づけられていない。

 

一方で、廃用性の起立性低血圧は「高齢者に多い」+「脱水や薬剤による影響も受ける」といった特徴を持ちやすいことから、
「二次性」と「薬剤性」と「脱水性」の要因が複合したものが「廃用性起立性低血圧」だと考える人もいる。

 

 

起立性低血圧の原因(発生機序)

 

血液には重さがあり、立位姿勢では重力によって下肢方向へ移動しやすい。

 

しかし、私達が立ち続けても血液が下半身にたまらず脳に行く血液も確保されている。

 

これは、起立時にも血圧を自動調節する機能(圧受容器反射系)が働いているからである。

 

そして、この調整機構によって反射的に静脈が収縮し、「起立することによる下肢方向へ血液が停滞を防ぐこと」が可能となる。

 

※ちなみに、起立時に必要な下肢体幹の筋収縮も静脈還流を助ける。

 

しかし、臥床が続くと、圧受容反射系機能が十分に起こらなくなり起立性低血圧が生じる。

 

これが、起立性低血圧の原因(発生機序)である。

 

 

以下は、「健常者」と「長期臥床者」の比較

※画像引用:神経内科学 (標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野)第1版

※圧受容体からの反射によって生じる「細動脈収縮」が両者で異なっているのが分かる

 

 

起立性低血圧という表現は「起立時に低血圧を起こすこと」をイメージし易いが、上記機序を起こす総称を起立性低血圧と呼ぶ。

 

つまり、長期臥床を強いられていた人が車椅子に移乗し、車椅子座位を数分とっていると、頭がフラッとして立ちくらみのような症状が出現することがあり、これも(起立はしていないが)起立性低血圧と呼ぶ。

 

同様に、ベッドから起き上がった際や、ベッドから車いすに移乗する途中に起こる症状も「起立性低血圧」と表現される。

 

 

高齢者と起立性低血圧(原因)

 

通常は、立ち上がると同時に交感神経が働いて下肢の血管を収縮させ、血液が重力に引かれ下に落ちるのを防げる。

 

しかし一方で、高齢者では交感神経の働きが低下し、とっさの血管収縮能力が低い為立ち上がると血液が下がり脳へ行く血が減ってふらっとしてしまう。

 

予防として、高齢者はゆっくり立ち上がって交感神経が反応出来るようにすることが有効である。

 

また、高齢者の場合は以下の要因を有している場合などがあり、起立性低血圧を起こしやすいため注意する。

 

・自律神経の障害を起こしやすい病気(パーキンソン病・糖尿病など)を有している。

・長期臥床によって体の反応が鈍くなっている

・降圧薬など血管に作用する薬剤を服用している

・・・・・・・・・・などなど。

 

 

起立性低血圧の予知に大切なポイント

 

起立性低血圧を予知するうえで大切なポイントは以下になる。

 

・脳貧血の症状(反応が鈍くなる・顔面が蒼白になる)

・血圧低下+(脈が微弱になる・血圧低下を代償するため頻脈になる)
・下肢うっ血(足の色が暗赤色になる)

 

 

これらに対し、以下のように患者の状態をよく把握することが大切となる

 

・脳貧血の症状⇒話しかける・顔色を見る

・血圧低下⇒血圧測定(脈拍の触知)

・下肢うっ血⇒足の色を見る

 

 

起立性低血圧の対処法(治療法)

 

起立性低血圧は、症状としては、めまい、意識低下などが起こり、なおも座位や立位を続けると脳障害を招くこともある。

 

したがって、前述した所見を見逃さず、起立性低血圧だと思われた際は、直ちに対処しなければならない。

 

※ちなみに起立性低血圧は臥位から起き上がるとすぐに発症するイメージが強いかもしれないが、例えば「短時間の座位では生じなくとも、長時間の座位では生じる」といったこともあるので、注意が必要となる。

 

起立性低血圧への対処法(治療法)としては、(前述した起立性低血圧の機序からも分かるように)『再び臥床し、頭(脳)を下げ、その高さを心臓の高さと同じにし、足はむしろ高く上げる(心臓方向へ下肢の血液を戻すため)』というのがポイントとなる。

 

 

車椅子座位で、起立性低血圧に襲われた際の対処法(治療法)

 

起立性低血圧への対処法(治療法)を前述したが、ベッドサイドではなく車椅子に座っている最中に突然起立性低血圧に襲われてしまい、尚且つ直ちに臥床できる環境ではない場合もあるのではないだろうか?

 

※車椅子座位から再びトランスファーをしてベッドに戻るまでのタイムラグで症状が悪化してしまうといったリスクもある。

 

※あるいは、トランスファー時に脱力してしまって以上介助が難しくなってしまう場合は、尚更タイムラグが生じる可能性もある。

 

そんな際は、車椅子のティッピングレバーを介助者の足で踏んで車椅子を後方に倒し、患者の足部が頭部と同じ高か、むしろ高くなるようにする。

 

すると、下肢にたまった血液が頭に流れていき、脳の血流が確保され、起立性低血圧を改善できる。

 

この際は介助者自身も低めの椅子に座り、患者の頭を大腿の上に抱くようにすると良い。
起立性低血圧 対処法
※この際も、前述したように顔色を見たり、(脈をとったり)、声掛けをしたりしながら、起立性低血圧が改善してきているかをチェックする。

 

 

起立性低血圧を予防しよう

 

重症例では、背臥位から数十度ギャッジアップするだけで起立性低血圧が出現するため、段階的にギャッジアップし、血圧やめまい、気分不良などの自覚症状をチェックしていくことで予防に繋げる。

 

次に、(ギャッジアップなどで)長座位に近い状態で低血圧の症状がみられなくなれば端坐位を行う。

 

端坐位で症状がみられなくなれば、車椅子への移乗を試み、問題なければチルトテーブルでの立位を行う。

 

また、上記の『姿位を段階的に変えていく』という点と同様に、『時間』という視点も組み合わせていく。

 

※例えば車椅子座位になってすぐ起立性低血圧が生じるのであれば、まずベッド上座位の時間を長くするなど。

 

※あるいは、一定時間内に出現するのであれば1回の座位時間を短くして頻回に(「少量頻回訓練」として)座位を保持するなど。

 

 

その他の予防法

 

ちなみに、この記事は「廃用症候群シリーズ」として廃用症候群にフォーカスして起立性低血圧を述べているが、疾患自体の症状として起立性低血圧を伴うことがある。

 

※例えば自律神経の障害を生じる神経疾患などでは、ここに記載した予防は必ずしも当てはまらないことがあるため注意が必要となる。

 

それらも踏まえた上でのリハビリ(理学療法)時の対策を補足としては以下が挙げられる。

 

 

弾性ストッキング・弾性包帯の装着:

 

血液が貯留しないように弾性ストッキングを履いたり、弾性包帯を巻いたりする。

 

両下肢へのストッキング・包帯は、起立することにより下肢方向に血流が移動するのを抑制するために行われる。

 

腹部の弾性包帯は、腹圧の上昇による一回心拍出量の増加と血圧上昇の効果を目的に行われる。

 

 

足踏みを行う:
下肢に貯留した血液を中枢に戻すために、座位股は立位での足踏みを行う。

 

筋収縮も、静脈還流を助ける。

 

 

飲水:
弾性包帯は両下肢に巻く方法と腹部に巻く方法がある。

 

飲水によって高齢者や自律神経不全では昇圧効果がみられる場合がある。

 

※飲水による昇圧効果については不明な点が多いが、起立性低血圧への容易で安価な対処法として期待されている。

 

 

念のため、『書籍:老年学 第1版 (標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野)P56』における起立性低血圧の項目を引用しておく。

 

起立性低血圧の治療:

 

・自覚症状のない場合は治療を要しない。しかし、転倒頻度の高い患者は治療が必要となる。まず、脱水・貧血・電解質異常などの危険因子を是正し、神経疾患などの他疾患が存在すれば治療する。

 

・本症は降圧薬のみならず、亜硝酸薬や抗不整脈薬、神経用薬、抗コリン薬などの副作用として出現することがあるので、これらの薬物を使用中であれば減量、中止が必要である。

 

生活指導としては急激な起立を禁止し、臥位からであれば座位、立位へと時間をかけて起立するように指導する

 

・アルコールは血管拡張をまねくため禁止し、カフェイン(コーヒー)摂取は推奨する。

 

・薬物療法ではエルゴタミン製剤やα1作動性刺激薬(ミドドリン)などを使用する。

 
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リハビリ(理学療法)における過用症候群としておこる起立性低血圧

 

起立性低血圧が生じると、その存在を知らない場合は「この立ちくらみや血圧の低下は病気が治っていないために起こったのだ」と誤解して、再び安静臥床をとってしまうことがある。

 

しかし、起立性低血圧の原因が廃用症候群な場合は、安静臥床にすることで更に起立性低血圧が起こりやすい体になってしまうといった悪循環に陥らないよう注意する必要があるため、正しい知識を持っておくことは重要である。

 

一方で、「寝たきりが良くないから」と考えて、(起立性低血圧の知識を持たずに)車椅子に乗せっぱなしなどで座位時間の延長を図ろうとしてしまうと、前述したように脳貧血による脳障害を起こす危険性すらあり注意が必要である。

 

そして、廃用症候群のリハビリとて「現時点の身体能力以上の負荷を体にかけてしまう」と言った意味で、これは過用症候群に該当する。

 

そんな過用症候群に関しては以下の記事でも記載しているので興味があればチェックしてみてほしい。

 

過用症候群・誤用症候群とは(+例・違い)

 

 

関連記事

 

以下の記事は、起立性低血圧も含めた『廃用症候群』のまとめ記事になる。

 

起立性低血圧以外の廃用症候群についても言及しているので、こちらも参照すれば廃用症候群の理解が深まると思う。

 

廃用症候群の恐怖!{高齢者のリハビリ/看護/介護で必須の知識}