この記事では、温熱療法の一つである『パラフィン療法(パラフィン浴)』について効果・適応・禁忌・欠点を紹介していく。

 

目次

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パラフィン療法とは

 

パラフィン療法とは以下を指す。

 

『パラフィンの伝導加熱を用いて行う温熱療法』

 

パラフィン療法を体験したことが無い人はピンとこないと思うので、まずは以下の動画を観覧してみてほしい。

 

 

 

パラフィンの熱伝導度は、水が0.0014であるのに対し、パラフィンが0.00059ときわめて小さいため、皮膚の耐忍温度が高くなり、50~55℃という温度での治療が可能となる。

 

皮膚に触れたパラフィンはすぐに固形化し、皮膚がパラフィン膜によって覆われるため、蒸発できない汗が皮膚とパラフィンの間に溜まり、結果として湿熱様の効果が得られる。

 

※パラフィン療法は水分を含まないので熱源の性質からはマイクロ波と同様に『乾熱』に分類される。

 

※ただし、治療時には皮膚とパラフィン層との間に空気の層ができ、加温による発汗と相まって、ホットパックや温泉療法と同様な『湿熱』効果が得られる。

 

※例えば、手にパラフィン浴を施行すると、手がシットリとするので上記はイメージしやすいのではないだろうか?

 

また、パラフィン浴は保温効果も高いため、熱原としての適用時間も長い。

 

パラフィン浴のポイント

 

・パラフィン浴の温度:50~55°

 

・熱伝導率:小さい(水の0.42倍)⇒不快温度が高い

 

・比 熱:大きい(保温効果)

 

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パラフィン療法のやり方

 

パラフィン療法のやり方は以下の通り。

患部をパラフィン浴槽に浸す

取り出してパラフィンが固まるのを待つ(すぐ固まる)

再び浴槽に浸す

8~10回繰り返し『パラフィン層(パラフィングローブ)』を作る。

 

パラフィン層(パラフィングローブ)を作る際の注意点:

 

・2回目以降に浸す際は、1回目に浸した高さよりやや浅く浸す。

 

・パラフィングローブを作った後(パラフィンが固まった後)は、患部を動かさないようにする(動かすとパラフィン被膜が破れる)。

 

上記のパラフィングローブが出来あがたところでビニールで包み、更にタオルを巻きつけて20~30分保温する方法が『間歇法(反復巻包法)』である。

 

 

一方で、パラフィングローブが出来上がった後に、そのまま浴槽内に15~20分間浸したまま保温する方法が『持続法(間歇液侵法持続法)』もある。

 

※あるいは、パラフィーングローブを作らず、そのままパラフィン浴槽内につけておく『持続法(持続液侵法)』もある。

 

※ちなみに、先ほどの2つの動画はいずれも『間歇法(反復巻包法)』となる。

 

 

間歇法・持続法のメリット・デメリット

 

上記の様に、パラフィンから取り出した状態で保持する「間歇法」と、浸しておく「持続法」があるのだが、持続法の方が「パラフィン層の冷却を防ぐことができ、適度な温度を一定の時間加えることができる」という意味でメリットがある。

 

一方で持続法は、「一定時間、ずっとパラフィン浴槽を一人が占領してしまう」ということになるため、使用者が多い場合はデメリットになる。

 

※間歇法であっても、(きっちりとした一定温度とまではいかないが)十分な保温効果が持続するため、医療現場では間歇法を用いている所も多い。

 

※使用者が少ない場合は、ビニールやタオルを用意しなくてよいので、逆に持続法のほうが手間が省けることもある。

 

 

パラフィンの効果

 

パラフィン浴の効果は、一般的な温熱療法の効果と同様であり、以下を参照してみてほしい。

 

温熱療法の作用まとめ! 『温熱の良し悪し』を把握して臨床に活かそう♪

 

 

パラフィンの適用

 

パラフィンの作用は上記の「一般的な温熱療法の作用」と同様なので、以下などが期待できる。

  • 疼痛の軽減
  • 筋スパズムの緩和
  • 局所の循環改善
  • 軟部組織の柔軟性改善

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・などなど。

 

パラフィン療法に特徴的なポイントとしては、凹凸部にまで万遍なく保温効果を与えることができるという点になる。

 

例えば、ホットパックでは指間まで温めるのは難しいが、パラフィン療法では可能となる。

 

治療部位は、通常上肢・下肢に限られます。

 

手指や足指のように凸凹のある形状の複雑な部位でも、細かいところまで一様にパラフィンが付着して均等に加温できるのが特長です。

~日本メディックスより~

 

従って、患部が手指・足指である場合は、「あえて(他の温熱療法ではなく)パラフィン療法が考慮されること」がある。

 

※ちなみに、パラフィン療法には『塗布法』も存在し、肘やひざなど直接浴槽にひたすことが困難な部位に対しても用いることが出来なくもないが一般的ではない(この手法を使うくらいなら、手間暇や効果を考えると別の物理療法が適応となる場合がほとんど)。

 

これらを踏まえた上で、パラフィン療法の適用は以下などが挙げられる。

  • 関節リウマチ
  • 骨関節症
  • 手部・足部の骨折(後の後遺症)
  • 手の外傷及び術後の瘢痕性拘縮)
  • 中枢性麻痺に伴う知覚異常・過敏

 

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パラフィン療法の禁忌

 

パラフィン療法の禁忌は以下となる。

  • 急性期の炎症
  • 閉鎖不完全な開放創
  • 知覚障害がある場合
  • 皮膚疾患、感染巣がある部位
  • 腎、心疾患による強い浮腫、循環障害がある場合
  • 出血傾向の強いもの(血友病など)
  • 悪性腫瘍

 

 

パラフィン浴の欠点

 

パラフィン療法をする際の欠点を述べて終わりにする。

 

パラフィン浴を実施する際は、患者が来院した際に直ぐ物理療法が実施できるよう、あらかじめパラフィンを加温しておく必要がある(もちろん患者を待たせても良いが)。

 

使用したパラフィン(パラフィングローブ)は、一般的に外した後に再び浴槽に戻して再利用される(その都度捨てていたら、どんどん浴槽内のパラフィンが無くなっていく)。

 

ただし、再利用すると汗やゴミなどによりパラフィンが汚れてくるので、定期的に清掃・濾過・入れ替えが必要となる。

 

 

温熱療法のまとめ記事

 

パラフィン療法も含めた『温熱療法全般』における作用のまとめ記事は以下になる。

 

この記事も合わせた観覧することで、温熱療法に対する理解が一層深まると思う。

 

温熱療法の作用まとめ! 『温熱の良し悪し』を把握して臨床に活かそう♪

 

 

また、物理療法全般における一覧記事は以下になる。

 

物理療法を使いこなせ!一人職場療法士が知っておきたい物理療法ポイントまとめ