この記事では、リハビリ(理学療法)で用いられる電気刺激療療法を、リハビリ(理学療法・作業療法・物理療法)の専門用語として有名な『経皮的電気刺激療法(TENS)』や『治療的電気刺激療法(TES)』などにも触れながら解説していく。

 

また、記事の最後には『機能的電気刺激(FES)』に関しても動画を交えて紹介しているので是非参考にしてみてほしい。

 

この記事を観覧すると、上記様々な治療法の違いなども理解できると思う。

 

目次

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電気刺激療法(TENS・TESなど)の目的や使用機器

 

まずは電気刺治療法(TENS・TESなど)の目的や使用機器について解説していく。

 

電気刺激療法(TENS・TESなど)の目的

 

電気刺激療法は以下などの目的で活用される。

 

・疼痛を軽減させる

・麻痺の回復を促進させる

・組織の細胞代謝脈活化

・・・・・・・など

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電気刺激療法に使用する機器

 

経皮的電気刺激を行う機器を『低周波刺激装置』とよぶ。

 

でもって、「リハビリ(理学療法・作業療法)で活用される機器=高価で個人では手に入らない」といったイメージがあるかもしれない。

 

しかし、簡易的な機器であれば個人でも入手でき、自宅で行うこともできる。

 

 

~鎮痛目的で用いられる家庭用の低周波刺激装置~

 

例えば、肩凝り腰痛など痛みを緩和させるといった「筋の収縮後弛緩効果」や「経皮的電気刺激(TESN)効果」を期待したものとしては以下など安価なものが売られている。

 

※ちなにみ以下は日本製と中国製があり、中国製をリンクしている。

 

あるいは、電気刺激効果に温熱刺激効果も兼ね備えた以下なども、同じくオムロンから販売されており、どちらもアマゾンでは高評価を得ている。

 

ちなみに温熱療法は電気刺激と異なった鎮痛機序を持っているため、適応となれば効果も倍増するのかもしれない。

 

※例えば温熱によるリラクゼーション効果は副交感神経を刺激し、筋緊張をゆるめるため、電気刺激の収縮弛緩による血行促進効果とも相性が良いのかもしれない。

 

関連記事

⇒『温熱療法の作用まとめ!『温熱の良し悪し』を把握して臨床に活かそう♪

⇒『(HP)持続的な筋収縮と交感神経作用による痛みの悪循環

 

ちなみに、上記2点は鎮痛・マッサージ・リラクゼーション効果を謳ってはいるが、筋収縮を伴うため、筋収縮を促す目的で用いることも出来なくはない。

 

両者が謳っている共通お効能は以下の通り。

 

肩凝りの解消・麻痺した筋肉の萎縮予防及びマッサージ効果

 

周波数に関しては、前者と後者で以下の様に異なる。

・基本周波数:約1~238Hz

  • ・発振周波数 : 約1~1200Hz

 

 

~筋収縮を促す目的で用いられる家庭用の低周波刺激装置~

 

筋収縮を促す低周波刺激装置で、最も分かり易い代表例は以下だろう(通販番組で嫌というほど類似品にお目にかかる)。

 

ちなみにアマゾン評価はすこぶる良い(楽して腹筋割れるのかな。。。)

 

上記は腹部限定であったが、以下などは様々な部位にパットを貼り付けることができ、筋収縮を促すことが出来る。

 

※細かな設定は出来ないがコスパ的には最高と言える(アマゾン評価もすこぶる良い)。

 

 

あるいは、上記より高価だが、安心の日本製であり、もう少し細かく設定できるものとして以下もある。

 

ただし、この筋収縮を『TES(治療的電気刺激)』として麻痺筋の萎縮予防に利用しようと思った場合は、刺激部位とその周波数、時間設定など患者個人に合わせた条件設定を行わなければ効果が得られない場合があるので、個人でやるにしてもまずは病院でポイントなどの指導を受けてからのほうが良い。

 

 

目的別!具体的な電気刺激方法を解説

 

医療施設に設置されている低周波刺激装置では刺激条件が細かく設定できるようにされているが、あらかじめプログラムされた設定(コンスタントモード・バーストモードなど)を用いることもできる。

 

その場合には使用目的に分けて条件設定がなされており、例えば以下の通り。

 

  • 筋肉に対する刺激であれば、筋肉の種類による刺激強度の違い
  • 神経に対する刺激であれば、パルス波形の差による刺激条件の違い

・・・・・など。

 

いずれにしても低周波刺激装置に接続されている2つの電極を目的の局所皮膚表面に貼って通電することになるのだが、このとき、患者に与える痛みが過度にならないように弱電流から徐々に上げていく必要がある。

 

ここから先は、電気刺激療法における以下の3つの効果に関して記載していく。

 

・電気刺激による筋収縮効果(TES的効果も含む)

・電気刺激による神経系への効果(TENS)

・電気刺激による細胞代謝亢進の効果

 

 

筋肉に対しての効果を期待する場合

 

筋の収縮力は刺激するパルス電流の電流強度と相関するため、持続時間が長く、周波数が高い方が理論的には強い収縮が得られる

 

しかし、刺激電流が強かったり、パルス幅が長すぎると痛みが強くなり、筋肉疲労も起こりやすくなる。

 

最大筋力の増強には周波数が50~100Hz程度、持久力の増強には25~50Hz程度が適当とされ、20Hz以下では筋肉の有効な収縮は得られないとされている。

 

具体的なパルス波の設定は以下のどれを目的とするかによって違ってくる。

 

  1. 筋肉における疼痛の軽減を目的とする場合(筋の収縮後弛緩による血流改善効果)
  2. 筋力増強を目的とする場合
  3. 脱神経筋に対する筋萎縮防止の防止(末梢神経自体の障害を改善させるというよりも、末梢神経障害によって生じる筋萎縮を可能な限り予防するということ)。

 

①に関して、なぜ電気刺激によって「筋収縮を起こすことが鎮痛に繋がるのか」の理由は以下の通り。

筋肉が収縮・弛緩することで、筋肉のポンプ作用が働く。弛緩した時に血液が送り込まれ、次に収縮すると(発痛物質などの)老廃物を含む血液が送り出される。

この働きが繰り返されることで、血行促進、鎮痛などの効果が得られる。

 

※さらに後述するTENSの作用として「(痛みのある部位に電気刺激を流すことで)痛みを伝達する機能に作用し、脳に痛みの感覚を伝えなくする作用」によっても鎮痛がえられる。

 

 

神経に対しての効果を期待する場合(⇒経皮的末梢神経電気刺激:TENS)

 

神経に対しての効果を期待する場合、代表的な方法に『経皮的末梢神経電気刺激(TENS)』がある。

※TENS;transcutaneous electrical nerve stimulation

 

TENSにおける電気刺激の強度は「わずかな筋収縮が得られる程度」がよく、患者もその刺激をわずかに感じる程度である。

 

TENSはメルザックら(1965年)が唱えたゲートコントロール理論(gate control theory)をその理論的背景としている。

 

この原理は「痛みを伝える求心性線維のうち、Aβ線維だけを刺激することによりAδ線維、C線維の刺激伝達を抑えて、知覚を抑制するもの」であり、以下の記事でも解説している。

⇒『ゲートコントロール理論を分かり易く解説!

 

また、現在では、ゲートコントロール理論以外に『内因性オピオイドの産生増加』も理論的背景として考えられている。

 

TENSは、「痛みのある部分、あるいは脊髄神経の起始部周辺などに表面電極を置き、低周波を通電する」といった方法になる。

 

※TENSに関しては、後ほど解説するので、そちらも合わせて観覧してみてほしい。

 

 

細胞代謝の亢進を目的とする場合

 

電気刺激により細胞の機能亢進、線維芽細胞の増加とコラーゲン線維・蛋白・DNA合成の促進が認められることから、血行改善や組織修復の効果を期待して,皮膚潰瘍治療にも用いられることがある。

 

このときの刺激強度は患者がその刺激による痛みを感じない程度に設定される。

 

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代表的な電気刺激設定条件

 

ここまで記載してきた「目的別な電気刺激方法」を一覧にしたのが以下の図になる。

~『運動器の痛みをとる・やわらげる−ペインコントロールの実際』より引用~

 

  刺激電流 周波数 パルス幅 通電時間

筋肉に対しての効果を期待する場合

①早い筋(白筋)

②遅い筋(赤筋)

0~80mA

(ピーク値)

概ね25~100Hz程度

①70~100Hz

②25~50Hz

概ね100~300~300μsec程度

①100~200μsec

②200~300μsec

1~30分

神経に対しての効果を期待する場合

①コンスタントモード

②バーストモード

0~80mA

(ピーク値)

波形による相違が大きく、

①1~200Hz

②1,2,3,4,5バースト

50~250μsec 1~30分
細胞代謝の亢進を目的とする場合

0~80mA

(ピーク値)

0.3,0.5,1~400Hz 1~250μsec 1~30分

 

※あくまで一例。

※文献や使用機器によっても異なる部分がある点には注意してもらいたい。

 

例えば、「筋に対しての効果」と「神経に対しての効果(TENS)」は両者とも鎮痛目的で使用でき、必ずしも周波数・パルス幅は上記の通りでなくとも良い(重複するが、あくまで目安)。

 

 

周波数による作用の違い

 

念のため周波数に関して、補足程度に記載しておく。

 

周波数とは以下を指す。

 

1秒間に電気刺激を加える回数のこと

 

※周波数はヘルツ(Hz)という単位で表される。

 

 

でもって「筋肉に対しての効果を期待する場合」の項目では以下の様に記載した。

 

筋の収縮力は刺激するパルス電流の電流強度と相関するため、持続時間が長く、周波数が高い方が理論的には強い収縮が得られる。

 

この理屈から行くと、イラストの3Hzと100Hzでは100Hzのほうが強い筋収縮が得られるという事になる。

 

※ただし、周波数(1秒間に何回の刺激が加わるか)が高くても、電流強度自体が弱ければ、当然のことながら強い収縮力は得られない。

 

※例えばTENS(経皮的電気刺激)では「電流強度は弱く、周波数は高い(高頻度刺激療法)」もよく活用される。

 

また、(電流強度とともに)周波数が高い方が強い筋収縮が得られる一方で、感覚が残っている場合最大筋力に達する以前に皮膚の疼痛の限界に達する。

 

なので、筋トレ目的にメチャメチャつよい刺激強度にしようとしても、(特に表面電極による刺激では)痛すぎて、強度を抑制せざるを得ない。

 

また、電気刺激に対する反応は人によ個人差があるので、院内のリハビリ(物理療法)として通電する際も「(同じ肩への電気刺激であっても)こんな強い強度で大丈夫か?」と不安に思うレベルでも平気な人から、「ほとんど通電していないに等しいのではないか」といったレベルで丁度良いという人までまちまちである。

 

なので、事前に十分に説明した後に低い刺激強度から開始し、徐々に強度を上げ
ていくことが望ましい(中には、痛いのを我慢するするくらいが効果的なのだという思想を持っている人もいるので、注意が必要となる)。

 

 

鎮痛に関する、他の物理療法と比べて優位な点

 

鎮痛に働く物理療法には、電気刺激療法(TENSなど)の他にも『温熱療法』があり、具体的には以下の通り。

 

・・・・など。

 

でもって、これら温熱によって疼痛閾値の上昇による疼痛軽減が見込まれるものの、温熱療法に抵抗性の痛みに対しては『寒冷療法』や、ここで示した経皮的電気刺激(TENS)などの物理療法も勧められる。

 

TENSによる電気刺激は、「直接局所を刺激することで、治療に対する実感も得られやすいとい」とも言われており、この実感はプラセボ効果も生み出すことになる。

関連記事⇒『理学療法士・作業療法士が知っておくべきプラシーボ効果とは?

 

 

電気刺激療法の禁忌

 

ここまで経皮的電気刺激に関してメリットを記載して生きたが、禁忌も当然のことながら存在し、それは以下などが挙げられる(絶対禁忌)。

 

  • 心臓血管障害
  • 動静脈血栓症
  • 心臓ペースメーカーを使用している場合
  • 妊産婦
  • 出血性素因の高い場合

・・・・・・・・など。

 

また、電極設置の部位として頚静脈洞は不適切であり、浮腫、皮膚損傷、知覚障害の部位へのも慎重に行わなければならない(いわゆる相対禁忌)。

 

経皮的電気刺激(TENS)であれば副作用は稀で、皮膚の発赤程度である。

※この場合、電極を変えればうまくいく。

 

 

リハビリ物理療法)で活用される電気刺激治療法まとめ

 

ここから先は、リハビリ(理学療法・物理療法)で活用される電気刺激治療法を少しだけ異なった切り口から解説していく。

 

ただし、重複する部分も多々あるし、家庭用機器を使用するレベルであれば、ここから先の内容は観覧するに値しない可能性が高いため読み飛ばしてほしい。

 

ここでは、以下の療法について記載していく。

 

・TES(治療的電気刺激)

・TENS(経皮的電気刺激)

・FES(機能的電気刺激)

 

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治療的電気刺激(TES)

 

まずは『治療的電気刺激(TES:therapeutic electrical stimulation)』について以下の目的別に深堀していく。

 

  1. 廃用筋の筋力増強
  2. 脱神経刺激
  3. 痙縮の抑制
  4. 末梢循環改善と血栓予防

 

TESの目的① 廃用筋の筋力増強

 

動物実験では、正常の筋に低周波数の刺激を毎日長時間与えると、持久性は向上するが、筋線維の径が小さくなり、筋力も低下する。

ヒトでは、抵抗を加えた状態であれば、低周波の電気刺激により筋力と持久性ともに向上する。

しかし、通常の筋力増強訓練より早い筋力増強効果があるという証拠はない。

 

  • 刺激方法は通常、表面電極を用いた20~30Hzの低頻度刺激が用いられる。

 

  • 刺激電極は運動点付近に置く。

 

  • 脱神経筋の場合とは異なり、0.2~0.3msec程度の短パルス幅の矩形波で有効な筋収縮が得られる。

 

  • 刺激強度は、皮下脂肪など様々な条件によって異なるので、筋収縮の状態や疼痛などを観察して決める。

 

  • 40~50Hz以上では、筋疲労を生じやすい。刺激時間は4~5秒程度とし、休止をおくようにする。

 

 

TESの目的② 脱神経刺激

 

脱神経電気刺激療法は広く用いられているが、その効果については議論も多い。

 

動物実験では、電気刺激により脱神経後の筋萎縮を遅らせることができるが、神経再支配を促すわけではない。

また、軸索の終末における発芽を阻害する可能性も指摘されている。

 

したがって現状では、脱神経電気刺激療法は可逆性の末梢神経障害における筋の線維化防止や、神経再支配後に残存する筋力低下に対して適応となる。

 

また、外傷などによる完全麻痺の場合も再生効果を期待するのは難しいが、電気刺激による筋収縮を認め、神経の回復可能性が不明の時、筋の線維化の防止のために使用される

 

脱神経筋において、パルス幅の短い刺激では有効な筋収縮は得られないので、パルルス幅100msec以上の矩形波を周波数30Hz以下で利用する。

 

電極は筋の両端に置き、双極刺激によって疼痛の許す範囲内で筋収縮が得られるまで強度を上げる。

 

治療に際しては、臨床的な筋収縮の観察、筋力の測定のほか、神経伝導速度検査、表面筋電図針筋電図などによって神経・筋の状態を正確に把握し、治療効果の判定を行うことが重要である。

 

そして、随意収縮時の運動単位の出現の状態をみて、筋電図バイオフィードバック療法の併用や移行を考慮する。

 

 

TESの目的③ 痙縮の抑制

 

電気刺激を痙縮筋に作用させることによって痙縮が抑制される。

 

メカニズムとしては以下などが考えられている。

 

  • 痙縮筋の筋疲労
  • 主動筋のタイプIa線維刺激による拮抗筋の相反性抑制
  • ゴルジ腱器官からのタイIb線維の興奮による抑制

・・・・・・・など。

 

しかし、微小筋収縮程度の弱い刺激あるいは筋収縮のないデルマトーム刺激でも痙縮が抑制されることや、遠隔効果がみられることから、上記のメカニズムだけでは説明できない。

 

なので以下などの説もあったりして、更なる研究が必要な分野でもある。

 

  • 「廃用をきたした脊髄の抑制性のシナプスに広く非特異的な入力が入ることによる」という説
  • 「内因性物質が放出される」という説

 

 

電気刺激は0.2~0.3msec程度の短パルス幅の矩形波で、周波数20~100Hzで15~30分程度行う。

 

刺激強度については定説はなく、強収縮を生させる場合や筋収縮の閾値以下で行う場合がある。

 

効果は数分から数時間継続するが持続的効果については証明されていない。

 

『痙縮』という用語自体は以下で解説しているので、興味がある方は観覧してみてほしい。

⇒『筋緊張の評価を紹介(+痙縮と固縮の違い)

 

 

TESの目的④ 末梢循環改善と血栓予防

 

電気刺激による断続的な筋収縮によるポンプ作用や代謝の増加に対する反応により、刺激した筋肉の血流量は増加する。

 

刺激強度は、10%MVC程度であまり強くする必要はなく、刺激周波数は4Hz以下にする。※8Hzより大きくなるとかえって血流量は低下するから。

 

また、電気刺激は術後の深部静脈血栓症を予防する。

この場合下腿三頭筋を50msecのパルスにより、底屈が生じるくらいの強度で双極性に刺激する。

刺激周波数は、静脈系への血液の充満の時間を考慮して0.2Hz程度にする。

 

 

経皮的電気刺激(TENS)

 

TENSの作用機序として使われる『ゲートコントロール理論』は電気的除痛の現象をよく説明するが、多くの批判にさらされた後、いくつかの修正が行われている。

関連記事⇒『ゲートコントロール理論って何だ?

 

また、TENSで知られている刺激していない場所の除痛効果や刺激終了後の除痛効果などの現象を説明する説として、下降性疼痛抑制系の賦活や、内因性鎮痛物質であるエンドルフィンの関与が考えられている。

※エンドルフィンに関しては、電気刺激により髄液中のエンドルフインが増加することによって、全身性に鎮痛効果が持続するという考え。

 

 

TENSの電極位置は、疼痛部位を挟むか原因となる末梢神経に沿った部位とするが、効果をみながら部位を変更する。

 

最終的に疼痛部位からはかなり離れた場所を刺激することで効果があることもしばしばである。

 

TENSの効果は患者の主観的な疼痛軽減によって判定されるので、刺激条件は必ずしも画一的なものではなく、一般的には以下の2つがある。

 

  • 10~100Hzで刺激する高頻度刺激法
  • 0.5~10Hzで刺激する低頻度刺激法

 

高頻度刺激療法:

高頻度刺激法は、大径感覚神経の刺激による脊髄レベルでの鎮痛効果と考えられている。

高頻度刺激法では、感覚閾値付近から感覚閾値の2~3倍の強度で刺激する。

不快感が少なく、何時間も連続して治療することが可能である。

パルス幅は通常0.1~0.5msecにする。

 

 

低頻度刺激法:

低頻度刺激法は、内因性鎮痛物質を介した鎮痛効果と考えられている。

低頻度刺激法は、感覚閾値の3~5倍の強度で刺激するが、あまり快適とはいえないので、治療時間は20~30分間とする。

 

 

刺激強度の調節は患者によって合わせるべきで、0からはじめて患者が最高の効果と感じる点まで増やしていく。

臨床上は、まず不快感の少ない高頻度刺激法からはじめ、うまくいかない時は低頻度刺激法を試みる。

また、はじめのうち効果があっても徐々に治療効果が減少することが多い。

 

 

適応は急性痛から慢性痛まで多岐にわたり、臨床応用として以下などが挙げられる。

 

外科手術後・外傷後・外傷性末梢神経損傷・分娩後・変形性関節症・帯状疱疹後神経痛・断端部痛・幻肢痛・関節リウマチ・脊髄損傷などの疼痛。また、慢性疼痛・カウザルギー様(灼熱痛)状態末期癌患者の疼痛など。

 

禁忌に関しては、前述した『電気刺激療法の禁忌』に記載しているので割愛する。

 

 

機能的電気刺激療法(FES)

 

機能的電気刺激療法(FES: functional neuromuscular stimulation)は、この記事では言及しなかった電気刺激療法だが、最後にこの治療法について記載して終わりにする。

 

なぜ、ここまで記載しなかったかというと以下の通り。

  • かなり特殊な機器を必要とする(医療用品として高価な物しか売っていない)
  • 目的によって様々なFES様の機器が存在する。

 

 

機能的電気刺激療法(FES)とは

 

麻痺した筋肉や末梢神経を電気刺激により制御することによって、機能的な動きを産み出す方法が機能的電気刺激療法(FES)である。

 

適応は、簡単にいえば脱神経に陥っていない上位運動ニューロンの障害ということになる。

 

近年では実際の臨床場面で活用できる機器も増え、その効果も証明されつつある。

 

上肢麻痺に対するFES

 

中枢神経障害などの上肢麻揮に対する代表的なFES装置として、アイビスなど多数市販されている。

これらは総指伸筋や手関節伸筋を筋電出力に応じてアシストする随意運動介助型電
気刺激装置である。

 

HANDS療法の適応基準として標的の手指伸筋に筋活動を認めることが必要となるが、電
気刺激により随意連動を補助することにより、日常生活での長時間の使用が可能となるため、比較的重度の麻卿にも適応が可能である。

 

文章だけではピンとこないと思うので、以下のアイビス動画を観覧してみてほしい。

少し古い動画だが、観覧することで「機能的電気刺激(FES)」がどんなものかが十分すぎるほど理解してもらえると思う。

 

※2分50秒くらいから観覧してもらえればイメージがわくと思う。

 

 

ちなみに、最新アイビスのパンフレットは以下になる。

パンフレットを観覧してもらうと、更にイメージがわきやすいと思う。

⇒『(外部リンク)アイビスGD612のパンフレット

 

また、近年フランスベッドが開発した『NESSH200』はプラスチック製の前腕装具の中に表面電極が組み込まれ、装着するだけで(ワイヤレスに)実用的な刺激が得られる機器である。

こちらも機能的電気刺激(FES)をイメージしやすい。

フランスベッド社のHPを観覧してみてほしい。

⇒『(外部リンク)フランスベッド NESSH200

 

 

下肢麻痺に対するFES

 

下肢麻痺に対するFESは『NESSL300』が有名なので、その動画を紹介する。

 

下肢麻痺専用のFES装置は、表面電極によって総腓骨神経や前脛骨筋などを電気刺激し、足関節背屈を再建できる装置が一般的である(っというか、それしか知らない)。

 

NESSL300TMは以下から構成される。

  • 機能刺激カブ
  • コントロールユニット
  • Intelli-Sense Gait Sensor

 

患肢の下腿近位部に装着する機能刺激カブは内部に2チャンネルの表面電極を内蔵し、患者が一度最適な電極位置を決定すれば、その後は片手で簡便に装着できる。

コントロールユニットは刺激強度の設定やシステムの機能管理を行い、患肢の状態に合わせた最適な電気刺激を設定できる。

 

Intelli-Sense Gait Sensorは、靴内に設置して歩行モード時に遊脚期を検知し、他のコン
ポーネントに情報を無線通信する。

さまざまな歩行条件下でも遊脚期を自動的に検知する高度なアルゴリズムが使用され、機能刺激カブがこれらの無線信号に反応して歩行周期の最適なタイミングで電気刺激を行い、行面に左右されない安定した歩行再建が可能とされる。

 

以下は、NESSL300TMのイメージ動画であると同時に、実際に患者さんの歩容が着用前後で変化している様子も観覧できる。

 

 

 

以下の動画は、上記動画よりも更に劇的に、おじさんの歩容が改善されている様子が観覧できる。

 

 

脳卒中片麻痺では、下肢末梢の随意性は回復せずに後遺症として残存してしまう例は少なくない。

 

でもって、選択肢の一つとして下肢装具の着用が推奨されるが、下肢装具を使用するのであればロッカーファンクションを有したゲイトソリューション装具などが理想的である。

セントラルパターンジェネレーターも賦活されやすい。

 

そして、第二の選択肢として、ここで取り上げた機能的電気刺激(FES)の活用も理想的だと考える。

 

関連記事

 

以下の記事は、電気刺激療法を含めた『物理療法』のまとめ記事となる。

以下の記事から、興味がある物理療法へアクセスして様々な物理療法への理解を深めてみてほしい。

 

物理療法を使いこなせ!一人職場療法士が知っておきたい物理療法ポイントまとめ