この記事では、「痛み行動」における悪循環に密接に関与している「痛みの恐怖-回避思考モデル」について記載している。
痛みの恐怖-回避思考モデル
組織損傷は「痛み体験(pain experience)」に繋がるが、その体験によって不安が生じなければ、痛みと「対峙(confronation)」することができ、「回復(recovery)」につながる。
しかし、「組織損傷による痛み体験」が「ネガティブな情動(negative affectivity)」や「不要な病気の情報(threatening illness information)」によって破滅的思考(catastrophising)」につながることがあり、これが以下のような悪循環に繋がることがある。
組織損傷による痛みの体験
↓
破滅的思考
↓
痛み関連不安(pain-related fear)
↓
過剰回避行動(avoidance hypervigilance)
↓
3つのD
・disuse(不活動)
・depression(抑うつ)
・disability(能力障害・社会生活への適応障害)
↓
更なる痛み体験の蓄積
↓
破滅思考の強化
↓
悪循環
以下が『痛みの恐怖回路モデル』を図式化したものである。
※画像引用:ペインリハビリテーション
このように疼痛に対するネガティブな情動などによって生じた破滅的思考が、再発や増悪の不安・恐怖を助長し、活動を制限して様々な行動を避けるようになり、その結果、活動性の低下が更なる疼痛を招く慢性痛の悪循環を形成してしまう。
そして、この様な悪循環を『痛みの恐怖-回避モデル(fear-avoidance model)』と呼ぶ。
この破滅的思考に関しては、慢性疼痛の管理が困難な人々に共通しているネガティブな情動や思考の極端な発露であるとされている。
基本的に破滅思考は「最悪なシナリオが現実になる可能性の誇張」であり、その事態に何もできそうにないという自身の欠如と繋がっている。
加えて、恐怖回避や運動恐怖症に関しても、破滅思考と同様にネガティブな情動・思考に共通した現れであり、行動に有害な影響を与える。
これらの要素によって、運動するとダメージを受けるリスクが高いと思ってしまい、それゆえ活動を避けることで、体調を崩すなどさらに問題を引き起こす。
また、運動を恐れて回避する行動のような反応は、不安によって強められることもある。
「痛みの恐怖-回避思考モデル」からの脱却
この「痛みの恐怖-回避モデル」による悪循環から脱却するための支援に掲げる目標は下記の通りである。
- 否定的思考と感情を認識すること
- 否定的思考と感情がもたらす問題を理解すること
- 否定的思考と行動に挑戦すること
- リラクゼーション、活動と休息の時間のペース配分、ゴール設定の様な技法によって行動を積極的に行う方法を開発すること
関連記事
痛みの恐怖-回避思考モデルは、以下の「学習性無力感」とも関連している。
学習性無力感とは?失敗によるネガティブ感情に注意せよ!
恐怖-回避思考モデルによる悪循環は、以下の「セルフエフィカシー」や「ポジティブなコーピングスキル」によって脱却のカギとなる場合がある。
セルフエフィカシーとは?