以前に紹介した『【書籍】エビデンスに基づく整形外科徒手検査法』ではお世辞にも「仙腸関節の触診」に関して信頼性が高いとは言えませんでした(っというか、ほとんど信頼できないらしい)。

 

でもって実際の臨床でも、触診だけに頼らず、様々なことを統合して考える必要があるわけですが、

 

今回は、マニュアルセラピーだけで著効を示した分かり易い症例がいたので(症例とかは挙げるの初めてですが)紹介します。

 

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症例紹介

 

自宅の庭先で尻もちをついてしまい、痛みのため動けなくなったため当院へ搬送されてきた80代女性患者さんについてです。

 

画像所見では異常は認められませんでしたが、右臀部の痛みが強すぎて座位すらとれず、一人暮らしだったため入院となりました。

 

しかし、2週間経っても、改善が認められないということで「これ以上寝ていたら廃用が進んでしまうので、出来る範囲で良いので筋トレしろ」みたいな指示がリハ科へ届き担当することになりました。その際は、10分程度の座位が限界なくらい右臀部の鈍痛が酷く、立位も右下肢荷重を避ける様な姿勢でした(歩行は痛みのため困難)。

 

まずは、受傷機転や疼痛部位から単純に右側の仙腸関節がハイパーorハイポになっている可能性を考えました。

 

腹臥位はとれなかったため、側臥位で仙骨の位置テストをしましたがあまり左右差は無い様子でした。

 

では、問題があるとすれば腸骨側かなぁということで仙腸関節の動的触診やジョイントプレイテストを施行するも全てのテストが一致せずアプローチをするにあたっての確証が持てませんでした。

 

再度、受傷機転や代償姿勢を考えると、以下などを考えました。

 

①尻もちをつた時腸骨で起こりやすいことといえば後方回旋なので後方回旋偏位(つまり前方回旋出来ない)の可能性

 

②右下肢へ荷重できない→荷重された際は寛骨臼と仙骨に加わる重力の位置関係から腸骨は後方回旋しなければいけないのに後方回旋偏位しているからこれ以上後方回旋出来ない

→なので荷重により更に後方回線方向へストレスが加わり疼痛出現するのでは

 

しかし、単なる推論であって確実に後方回旋偏位と断定は出来ていません。

 

ただ、ある程度の確証はあるということで、「少しだけ」前方回旋方向へ腸骨を可動させてみました。

 

すると「なんかジワーっと効いてる感じ」とのコメントあり。この「少しだけ」というのはグレード2+α程度のソフトな力で、自分の推論が正しいかを判断するだけで「試験的治療」とも言われたりもします。

 

ここで、「後方回旋偏位確定」としたいところですが、個人的には「効いてる感じ」といったコメントはハイポなケース以外でも起こりうるもだと思うので確定するのは危険と判断しました。

 

例えば、中位頚椎がハイパーで痛みを訴えている人が「こうすると効くんですよ~」とグーっと首をストレッチして見せてくれるのは良いのですが、その後益々不調を訴えるみたいな・・・・・・

 

なので、すぐにモビライゼーションへ移らずに、一旦座位・立位をとってもらい痛みが楽になったかを確認。幸いその方には楽になったとおっしゃって頂き、立位姿勢も客観的にみて若干右側へ荷重できるようになっていました。

 

そこで、左側臥位にて右側仙腸関節に愛護的に数回マッスルエナジーを施行して腸骨前方回旋方向への可動性を少し引き出す程度にとどめて、その日は様子を見ました。

 

翌日、「昨日のリハ後症状が悪化したりしなかったか」を尋ねると「今までより楽だった」とのこと。ここで「リハの時は良い気がしたが、その後は悪化した」では再度考察しなければならないのですが、大丈夫そうなので改めて可動性テストの後、積極的なモビライゼーションを施行・・・・

結局日に日に疼痛の改善が認められたため、4日目にはセルフモビライゼーションを指導してベッドサイドで自分でも疼痛をコントロールしてもらうようお願いして、最終的にはリハ開始後1週間半で退院されました。

 

ここまで、スムーズに骨盤のマニュアルセラピー単独で上手くいくことは稀かもしれませんが、マニュアルセラピーの可能性を感じられる良い症例でした。

 

 

終わりに

 

手技を施行する際には、十分な評価・再評価を繰り返す必要があると思います。

 

※例えば、安易に手技を試行してしまった結果、評価の時点でハイパーとハイポを間違えていると、治療のつもりが一転して患者を壊してしまうというリスクもあると思います。

また、海外では年齢とともに仙腸関節の骨癒合率は高くなり、その率は性別によっても差があるとの報告があります。

 

パーセンテージに違いはあれど、高齢な男性ほど癒合率は高いという報告が多いようです。

 

この情報から、例えば「高齢の男性で右臀部に疼痛があった際に右仙腸関節の問題を疑ってジョイントプレイをした結果非常に硬かった=モビライを施行する」と単純に考えてはいけないな(癒合しているならば硬くて当然なわけですから)といったリスク管理の考えも出来るのではと思います。

 

 

関連記事

 

⇒『仙腸関節障害を治療!(モビライゼーション情報あり)

 

⇒『仙腸関節テスト(検査)の精度を上げる方法

 

⇒『【書籍】エビデンスに基づく整形外科徒手検査法