この記事では、リハビリ(理学療法・作業療法)でも用いられることのある用語として『コーピングスキル』を開設していく。

 

コーピングスキル

 

コーピングスキル』とは「ストレスや脅威に直面したとき、積極的に対処し克服しようとする個人の適応力」を指す。

 

痛みが急性痛から慢性痛に移行している場合は、除痛と並行して、「痛い時にはどうする」、「痛みを増悪させないためにはどうする」、「調子が良い時にはどうする」など、コーピングスキルとして痛みに関連する具体的な対処方法を多く身につけることも大切になる。

 

このようなコーピングスキルの獲得によって「万が一痛みが生じたり、悪化しても対処できるのだ」という自信がつけば、不安や恐怖を解消し、活動性の向上にも寄与する。

 

そして、活動性の向上は慢性痛の改善に結びつくとのエビデンスは多く、痛みの恐怖-回避モデルの悪循環から脱却し、好循環を作ることにつながる。

 

そのため、日常における注意点などを、しっかりと説明してあげることは重要である。

 

また、コーピングスキルは、クライアントが主体的に治療に参加した際に育ちやすく、主体性を持ちにくい治療であれば育ちにくいとされている。

 

すなわち、大切なのは「自分で治した」「自分の痛みを自分でコントロール出来るようになった」といった実感・経験であり、「治してもらった」「良くなったが、何で良くなったか分からない(あるいは分かったからといって自分ではどうしようもない)」といった感覚ではない。

 

そして、ポジティブなコーピングスキルが身につかずに、『痛み行動』や『痛みの恐怖-回避モデル』の要素が含まれた経験を繰り返すと、痛みが無くとも行動を避ける現象が生じてしまい、この現象は『痛み認知の簡略化』とも呼ばれている。

関連記事⇒『ブログ:痛み行動とは

コーピングスキル
~画像引用:痛みに対する予防理学療法~

 

ポジティブなコーピングスキルを身に着けるためには、痛みを客観化し、行動と痛みの変化を関連付ける認知行動療法などのトレーニングが必要も有効である。

 

トレーニングの際は、「痛みの改善する行動を提示し、それに対して痛みが確かに減少していることを確認する」といったことにより正の方向の強化を行っていく。

 

※例えば、中高年高齢者の膝痛への介入研究で、痛みのコーピングスキルの獲得が痛み関連QOLの改善に寄与するとしている文献もある。

 

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高齢者の慢性疼痛とコーピングスキル

 

高齢者の退行期における『様々な痛み』は、若年者の急性期の痛みのように「創傷治癒に従って、完全に消失する」といったことは必ずしも起こらない場合がある。

 

※10の痛みがリハビリ(理学療法・作業療法)によって3になることはあっても、0にまで改善しない場合もある。

 

※そして、3の痛みが気候・気温・気分など諸々の要因によって「限りなく0に近づいたり、6に悪化したり」といった変動を繰り返すこともある。

 

※あるいは高齢者は(構造的な障害に付随して)複数の機能障害を抱えているので、首を治療して良くなったと思ったら腰が痛くなり、腰が治ったと思ったら膝が痛くなり、膝が治ったら反対側が気になるというように、リハビリで良くなっても痛みに囚われて延々と『気になる場所を探し続ける』といったことも起こり得る。

 

そんな時、除痛だけを高齢者リハビリの至上命題としてしまうと、大きな罠にはまってしまうことがある。

 

従って退行期の痛みは、徐痛だけを目標とするだけでなく「痛みのコーピングスキル(主に心理的負担を軽減するための対処行動)方法を身につけることも目標となるり得る。

 

徐痛そのものよりも、痛いときにはどうする、痛みを増悪しないようにするにはどうする、調子が良いときにはどうするなど、痛みに関連する具体的な対処法が多いことも、生活範囲の拡大に貢献し得る。

 

※そして長期的な視点でみた場合は、「セラピストによって齎される即自的効果」よりも「コーピングスキルの獲得」の方が高齢者にとって重要である場合も多い。

 

そして前述したように、痛みのコーピングスキルは自分で獲得できないことも多く、だからこそリハビリ(理学療法)としても着目すべき概念と言える。

 

 

「痛み日記」とコーピングスキル

 

コーピングスキルは、生活上の工夫であるため痛みを基準にして、どのような対処が適当であるのか、自ら学ぶことができると考えられるが、実際には自分ではコーピングスキルを獲得しにくい。

 

通常であれば、「痛みが出たからその活動を避ける」というように、痛みの多寡(痛みが多いか少ないか)が行動に影響を与えるが、慢性痛に移行してしまうと『(痛みの)認知の簡略化』が起こってしまい、行動と痛みに関係なく(時として因果関係のない思い込みによるものも含めて)、痛みが無くとも行動を避ける現象が生じる。

 

重複するが、動くことによって痛みを和らげることが出来る行動と、そうでない行動があるにもかかわらず、いずれの行動も避けるようになってしまう。

 

この様な場合では、痛みを客観化し、行動と痛みの変化を関連付けるトレーニングが必要となる。

 

その際は、痛み変化についても、悪化することは、痛みを強化してしまうことにつながるので、痛みの改善する行動を提示し、それに対して痛みが確かに減少していることを確認する、正の方向の強化を行うことがポイントとなる。

 

※そんなコーピングスキルの獲得に際してVAS(疼痛評価スケール)を用いた痛み日記が活用できる場合がある。

⇒『ペインスケール(痛みの評価テスト)の臨床活用法

 

 

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認知行動療法の痛みリハビリ(理学・作業療法)への応用(外部リンク)