闘争・逃走反応は体内のきわめて強力なホルモンと脳の神経化学物質をいくつも働かせる。
脳の非常ボタンである扁桃体は、体の自然な均衡を崩しかねない危険信号を感知すると、連鎖反応を作動させる。肉食獣に襲われることは確実にこのケースに当てはまるが、獲物を追う場合もそれは当てはまる。
※扁桃体の仕事は、入ってくる情報の強さを図ることで、その情報には生存に関わるものもあれば、そうでないものもある。
扁桃体は脳の多様な部位と繋がっていて、幅広い情報を受け取る。前頭前野という高次の情報処理中枢から入ってくる情報もあれば、そこを迂回して間接的に入ってくる情報もある。
意識下の知覚や記憶でさえストレス反応を引き起こすことがあるのはそのためだ。
警報が出てから10ミリ秒以内に、扁桃体はメッセージを発信し、それによって副腎が異なる段階で異なるホルモンを分泌する。
まず、ノルアドレナリン(=ノルエピネフリン)が稲妻のような速さで電気信号を発し、それが交感神経系を伝わって副腎を刺激し、アドレナリン(=エピネフリン)を血液に送り込む。
その結果、心拍数と血圧が上がり、呼吸が速くなる。
ストレスにさらされている時に体が興奮状態になるのはそのためだ。
同時に、扁桃体から視床下部まで、ノルアドレナリンと副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)によって運ばれた信号は、視床下部でメッセンジャー(神経伝達物質)に渡され、その際、メッセンジャーは各駅停車の列車となって血液中をゆっくりと流れる。
それらは下垂体を刺激して副腎の別の部分を活性化させる。
そこでは、ストレス反応にとって2番目に重要なコルチゾールが分泌される。
この視床下部(Hypothalamus)から下垂体(Pituitary)を経由して副腎(Adrenal gland)へというリレーは『HPA軸』と呼ばれ、一連のストレス反応のメカニズムにおいて重要な役割を担っている。
扁桃体は海馬にも信号を送って記憶の形成を促し、また、前頭前野にも別の信号を送って面前の脅威が反応を起こすに値するかどうかを判断させる。