古くから、情動は痛みの知覚に対して変調させることが臨床上指摘されてきた。

 

例えば、崖から転落して数十か所の複雑骨折をしたが、まずは身の安全を優先するために、中脳水道周囲灰白質の活動を高め、痛みを知覚させないように痛みの伝達システムを構築しなおしたと考えられる事例が報告されている。

 

これは、その時々の状況、そしてそれからもたらされる情動反応によって痛みの感受性は変化することが示唆されている。

 

なお、先の事例はレスキュー隊を発見した瞬間に、全身からの激痛を感じたという。

 

逆にいえば、中脳水道周囲灰白質の機能が低下すれば、痛みが容易に増強してしまう。

 

これをコントロールしているのが前頭前野と考えられており、その活動不全が痛みを慢性化させてしまうきっかけになることは容易に理解できるであろう。