この記事では、セロトニンと日光の因果関係について記載していく。
光がセロトニン神経を活性化
日光が不足すると心身に不調が現れるというメカニズムにとって重要とされているのがセロトニン神経である。
光が私たちの眼の網膜に入ることで、視神経を介して、その信号が大脳の後頭葉に送られ、それが映像として認識され、私たちは物を見ることができる。
ただし網膜に入った光の刺激は別の場所、すなわちセロトニン神経にもえいきょうを及ぼす。
セロトニン神経は脳の中で、脳内物質であるセロトニンを使って情報のやり取りをしているが、セロトニンの量が少ないと、当然伝達できる情報量も少なくなり、心身に様々な不調が現れるといった弊害を及ぼすこととなる。
つまりは、私たちが光を浴びることは、網膜を介してセロトニン神経を活性化させてセロトニンの分泌が促進されることによって、私たちの覚醒レベルを調節してくれたり、様々な不調を改善させてくれる可能性がある。
日光浴でセロトニン神経を活性化
光を浴びすことがセロトニンの活性化に結びつくことを前述した。
ただし、光なら何でも良いというわけではなく、日光を浴びることが理想とされる。
例えば家の中の蛍光灯では照度が弱すぎて、セロトニンを活性化させるだけの効果はないとされる。
電灯の光がせいぜい100~250クルス程度なのに対し、日光はその10倍から100倍の照度があるとされる。
そしてセロトニン神経を活性化させるには2500クルス以上の照度が必要とされている(つまり日光を浴びるのがセロトニン神経を活性化させるのに理想的ということになる)。
ただし、セロトニンを活性化させたくても十分な日光を浴びることが出来ない場所も存在し、その様な場所では人工的な日光(高照度ライト)が活用されることもある。
季節性感情障害
例えば秋から冬にかけて、ロンドンでは雨が多くなり霧が発生して、スッキリしないどんよりとした天気が続いてしまう。
こうした日照時間の短さに加え気温も低くなるため、家の中にこもりがちになってしまい、季節性感情障害(俗に「冬季うつ病」とも呼ばれる)に陥る人が増えると言われている。
その名の通り冬場に発症し、季節が移り変わるにつれ次第に改善されことから、日光の重要性が指摘する人もいる。
事実として、季節性感情障害に対して高照度光療法(日光と同じくらいの照度な光を浴びる)が有効とされて、イギリスではこうした高照度のライトが一般家庭用としても市販されている。
日本のジメジメした梅雨の時期に曇りや雨の日が続いてしまい「何となく体調が悪い」「こころが重い」などと感じてしまう人は、もしかするとセロトニンが不足が影響しているかもしれない。
どのくらい日光を浴びれば活性化するの?
セロトニン神経の活性化に日光浴が重要だと述べてきたが、一体どの程度浴びれば良いのだろうか?
一般的に、セロトニン神経を活性化させるために最適な時間は20~30分とされており、それ以上日光を浴びると、セロトニン神経に備わっている自己抑制機能が働き、かえってセロトニン神経の活動レベルが下がると言われている。
また、日光の照度にも注意が必要で、一概に「日光」と言っても、天候や時間、場所、季節によって変わってくる。
従って、日光照度の変動にも注意して、日光を浴びる時間を調節することもポイントとなる。
※ただし、セロトニンは5分で活性化するため、5分未満では効果がないと言える。
※日光を浴びることでセロトニンが活性化されると「スッキリ爽快」といった気分が実感できるので、それが活性化されてきた一つの目安といえるかもしれない。
※そして「元気になった」「いい気持ちになった」を通り越して、疲労感、倦怠感を感じ始めたら長すぎということになるかもしない(セロトニン神経の働きが抑制され始めたということ)。
※つまり日光の照射時間は、自覚症状をベースラインとして判断すれば良いと思われる。
朝の日光浴が理想です
私たちがセロトニン神経を活性化させるべきタイミング(つまりは日光を浴びるタイミング)として最適なのは朝である。
というのは、セロトニン神経は、寝ている状態から起きる状態にシフトする際に重要な働きをするからだ。
前述したように、セロトニン神経には「覚醒レベルの調整」「自律神経の調整」「気分の調整」など様々な調整機能がある。
そして、この調整機能がスムーズに作動することで、その日一日は順調にスタートすることとなる。
私たちは通勤などで日の光を否が応でも浴びるが、患者さんなど一日中家で過ごす人たちは、カーテンを開けて日の光を浴びるなどでセロトニンを活性化させた方が良いと言える。
私たちも休日の朝は、家でゴロゴロと過ごす前に、少しでも日の光を浴びると、ゴロゴロする気が失せて、その日一日が有意義となるかもしれない。
つまりは、日光を浴びないことによって、「何となく調子が出ない」「体がだるい」「ボーっとする」などの不調を起こしかねない。
昼夜逆転の生活(例えば夜勤中心な生活)や日を浴びない生活は、セロトニン神経を活性化させる機会を奪ってしまい、セロトニン不足による心身の不調が現れる可能性を秘めている。