グルタミン酸は脳の馬車馬となって働いているが、精神医学がそれよりも重視するのは、脳の信号操作と全ての活動を調整している一群の神経伝達物質だ。

 

すなわち、セロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンである。

 

それらを作り出すニューロンは、脳におよそ1000億個あるニューロンの1%にすぎないが、影響は甚大だ。

 

ニューロンに命じてもっとグルタミン酸をつくらせたり、ニューロンがより効率的に情報伝達できるようにしたり、受容体の感度を変えたりする。

 

また、余計な信号がシナプスに伝わらないようにして脳内の「雑音」を小さくしたり、逆に他の信号を増幅したりもする。

 

グルタミン酸やGABAのように信号を送ることもできるが、その第一の役割は、情報の流れを調節して、神経化学物質全体のバランスを調整することだ。

 

そして、精神の状態を改善するために用いる薬のほとんどは、これら3つの神経伝達物質の一つか、あるいは複数に働きかける。

 

だが、ここではっきりさせておきたいのは、そのシステムは非常に複雑なので、どれかを増減すれば決まった結果が出るわけではないということだ。

 

一つの神経伝達物質を操作すると、その影響は連鎖的に広がっていき、人によって現れる効果は違ってくる。