「モノアミン神経まとめ一覧」におけるセロトニンの解説は、モノアミン神経(セロトニン神経)から神経伝達物質として分泌されるセロトニンの役割にフォーカスを当てて記載している。
一方で、セロトニンは至るところに存在しており、脳内だけに存在しているわけではない。
この記事では、そんな「神経伝達物質としてのセロトニン」以外にフォーカスを当てて記載していく。
腸内はセロトニンが最も多く存在する場所である
セロトニンは脳内以外にも腸・肝臓・腎臓・血液中にも存在する。
そして、最も多くセロトニンが存在する部位は腸内であり、腸内のセロトニンは全体の90%にも及び、脳内のセロトニンは全体の5%にすぎない。
腸には単独でセロトニンを分泌する神経細胞があり、そこからセロトニンが放出されるとき、腸管が強く蠕動運動を始めるとされている。
そして腸管の蠕動運動によって腸の働きが促進されるため、その働きが弱ると便秘になり、過剰になると下痢になる可能性がある。
※腸内におけるセロトニンの作用は「蠕動運動」しか分かっていない。
※腸から分泌されたセロトニンは、最終的には肝臓へと流れていき、そこで大部分は破壊されて役割を終える。
また、「セロトニンは夜にはほとんど分泌されない」とされている(関連記事⇒日光とセロトニンの関係)が、それは脳内セロトニンの話であり、腸というのは夜寝ているときの方が活発に運動する。
つまり、腸内では夜に活発なセロトニン放出が行われているということになる。
血液にもセロトニンは存在している
体全体のセロトニンのうち、腸内に90%、脳内に5%が存在し、残りの大部分は血液中に存在しているとされている。
そして、血中にあるセロトニンの90%以上は血小板に取り込まれており、(血中セロトニンはどこかに運ばれていくのではなく)単純に血液中に合って体全体を循環しているだけだとされている。
全身を循環しているセロトニンの働きとしては以下の2つが挙げられる。
- 止血作用:
出血した時に血液を凝固させ、傷口を止血させる働き。
傷口が修復されるためにかさぶたが作られるが、この時にセロトニンは、血小板や赤血球、白血球などの細胞成分を固める働きをする。
- 血管の緊張(収縮)作用:
「セロトニン」という言葉の由来は、この「血管の緊張(収縮)作用」に由来している。
※セロはserum(血清)を意味し、トニンはtone(緊張)を意味する。
セロトニンの語源になっている血管の収縮作用がうまく働かないことによって生じる症状で有名なものには片頭痛がある。
血液中のセロトニンは場合によっては腸に流れていき、腸管の動きを変えることはあり得るが、その逆(腸内のセロトニンが血管に入るという現象)は無いとされている。
また、脳内のセロトニンは最終的には血液中に出ていくこととなる。
肝臓や腎臓にもセロトニンがあることは分かっているが、肝臓や腎臓でのセロトニンの働きは、まだ分かっていないのが現状である。
※前述したように、肝臓にセロトニンがあるのは「腸内に分泌されたセロトニンが分解されるために行きつく場所が肝臓だから」という点も影響しているのかもしれない。
片頭痛とセロトニン
片頭痛とは、こめかみのあたりがズキズキと脈打つ痛み、ひどい場合には何も手につかず、吐き気や嘔吐を伴うこともある。
そして片頭痛の原因には諸説あるが、その中にセロトニン欠乏説がある。
ただし、セロトニン欠乏説における片頭痛の原因は、脳内の「神経伝達物質としてのセロトニン」ではなく、頭部における「血液中に存在しているセロトニン」である点は混同しないよう注意が必要。
セロトニンが血液中も5%ほど存在するが、その主な働きは「傷口から出る知を凝固させる止血作用」・「血管の収縮作用」であると前述してきた。
そして、片頭痛は、脳の血管の収縮作用によって起こるが、このとき血液中のセロトニンが関係しているとされている。
ズキズキと脈打つリズムと同じように痛むのは、送られてくる血液で血管が過度に広がるからだという仮説に基づいている。
そして、この片頭痛に効果がある薬剤として、トリプタンというセロトニン系の治療薬が有名である。
※つまり「片頭痛が血管拡張が原因とする仮説」と「セロトニン(血管収縮作用)系の薬剤で改善がみられる」という2点が「セロトニン欠乏説が支持される理由となっている。
この薬は脳の血管に直接作用し、血液中のセロトニンの量を増やすことで、異常に拡張した血管を収縮させる。
トリプタンは良く効く上に、副作用が少ないために、いま注目されている片頭痛の薬といえる。
また、片頭痛は「血管内のセロトニン」と因果関係があり、「神経伝達物質としてのセロトニン」とは無関係と前述したが、片頭痛も「痛み」の一つであることから考えると、「痛みをコントロールする(下降性疼痛抑制系など)」という役割を担っている脳内セロトニンも関与していると言えなくはない。
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