この記事では、『依存症』に関して、覚せい剤にフォーカスして記載していく。
条件反射制御法
「(本物そっくりの)注射器のおもちゃ」と「白い粉」。
これらを使って、以前薬物をやっていた通りの部位に注射器を刺す真似(おもちゃなので刺さらない)をしても、薬物という報酬がないので(当然のことながら)気持ちよいとは思わない。
これを何度も繰り返すことで、快楽報酬がないことを脳に刷り込まれ、注射針や白い粉を見たとしても「薬物への渇望」が起きることが少なくなるという。
これは、「ブザーが鳴ったら、食べ物にありつける」と条件付けされた犬がヨダレを垂らすのに対して、
「ブザーが鳴ること」と「食べ物にありつけること」が関連していないことを何度も何度も実験で知らしめていき、
最終的には「ブザーが鳴ってもよだれが垂れない」という状態にもっていくのと同じ原理だ。
ただし、薬物依存によって形成された報酬系回路の病的状態は半端ないので、そう簡単に改善するとは限らない。
例えばシンナーの依存症であれば、透明な袋とティッシュで疑似行動を行い、
アルコール依存症では、ノンアルコールビールをひたすら飲むということを繰り返す。
そうすると、「透明な袋とティッシュ」をみても、「ビール」をみても、報酬系が働きにくく、実際に手が伸びてしまうことが減るらしい。
ただし重要なことは毎日続けることだという。
そして、「依存症が治った」ではなく、「薬物を使わなくなっているだけ」という認識が正しいのだという。
したがって、依存症に陥りやすい物質であればある程、条件反射制御法を継続しなければならない期間は長くなり、覚せい剤などは「死ぬまで条件反射療法を続けなければならなくなる」のだ。
そう語るのは、薬物使用歴25年であった館山DARC職員のAさんだ。
館山DARCは5年前に設立されて、今が最も入寮が多いという。
※ちなみに入寮は本人の意思ではなく、生活破綻し、行政機関の紹介で来る人がほとんどとのこと。
また、同じく館山DARC職員で覚せい剤を12年使用していたBさんは、「覚せい剤を、今もやってみたいか?」との問いに以下のように答えている。
「今はやってみたくないけど、やりたい気持ちは半分ある。だから絶対に持ちたくない」
ドーパミンと報酬系
脳にはドーパミンという報酬を受け取る受容体がある。
ドーパミンは快感をつかさどる神経伝達物質とも言われており、ドーパミンの分泌レベルを平常時100%とすると、様々な行為によって以下の様に分泌レベルが上昇する。
- 美味し物を食べる:150%超
- 性的交渉:200%超
- ニコチン:220%超
- コカイン:350%超
- 覚せい剤:1000%超
※出典NIDA(米国)動物実験データ
※あくまで動物の実験データであるものの、いかに覚せい剤が他より突出したドーパミン放出を促してしまうかが良く分かる。
依存症に陥り易いかどうかのテスト
依存症になり易いかどうかのテストを以下に記載する。
(監修:心理カウンセリングルーム 渋谷 ナチュラルリソース)
- 頼まれごとをなかなか断れない
- 自分はこうあるべきという考えが強い
- 一人でいると強い寂しさを感じる
- 自分の本音を知られるのが怖い
- 他人の評価が気になる
- 将来のことが不安になる
- なんだか生きづらい世の中だと感じる
※1~2個:何かに強く依存する可能性は、少ない
3~5個:何かに強く依存する可能性が、少なくともある
6~7個:すでに何かに強く依存している
※ちなみにDARC職員のAさんは7点満点だった。
ただし、依存の形は薬物だけではない点には注意が必要だ。
それは食べ物かもしれないし、家族や恋人かもしれないし様々だ。
そしてビートたけしは以下のように語っている。
芸能人には、依存を爆発的なエネルギーに変えて成功を収めた人も多いはずだ。
大切なのは、自分にとっての合法的な麻薬、つまりは『自分がやりたいと強く望むもの』を早く見つけることであり、
それが見つかれば時として、その才能を大きく開花させる可能性を秘めている。
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