この記事では、主観的運動強度について「ボルグスケール」と「修正ボルグスケール」について、違いも含めて記載していく。
『ボルグスケール』と『修正ボルグスケール』
1970年にBorgは運動中のつらさの自覚的強度を測るスケール(Borgスケール)を開発した。
安静時心拍数を60拍/分、最大心拍数を200拍/分と仮定し、心拍数10拍分を1段階とする15段階からなる尺度表を設計し、簡易な主観的表現と合わせて発表した。
さらに1980年には、比率特性を備えた、よりシンプルで汎用性がある修正版スケール(修正版ボルグスケール)を開発した。
主観的運動強度(Borgスケール)の活用法
主観的運動強度(ボルグスケール)を用いることで、個人の体力、環境、全身疲労などの要因を考慮し、運動者が運動中における自分の感覚を主観的に評価できる。
ボルグスケールと修正ボルグスケールの違い(っというか特徴)は以下となる。
(原型である)ボルグスケール:
- 6~12までの15段階で表される
- 心拍数の目安とされている
※この点数の10倍の値は運動時の心拍数とほぼ一致する
- 例えば13(ややきつい)が最大心拍数の60%、15(きつい)が85%に相当するとされている。
修正ボルグスケール:
- 0~10に0.5を加えた12段階で表される
- 酸素飽和度・血中乳酸濃度などを反映するとされている
- 例えば、3(中くらい)が最大心拍数の60%、5(きつい)が85%に相当するとされている。
- 心拍数単独よりも、被検者の疲労度を加味できる利点があるとされている。
※両者とも運動中の最大酸素摂取量を把握することができ、現在はどちらも併用されている。
ただし、「ボルグスケールが運動強度の評価に向いている」のに対して、「修正ボルグスケールは息切れや痛みの評価に向いている」との意見もある。
※『修正ボルグスケール』は血中乳酸濃度の変化や換気量の様な非直線的に変化する指標を説明するのにも役立つ。
以下の表がボルグスケールとなる(原型スケールと修正スケールを記載)
原型ボルグスケール | 修正ボルグスケール |
---|---|
6 7 非常に楽である 8 9 かなり楽である 10 11 楽である 12 13 ややきつい 14 15 きつい 16 17 かなりきつい 18 19 非常にきつい 20 |
0 何も感じない
1 かなり弱い 2 弱い 3 ちょうどよい 4 ややきつい 5 きつい 6 7 かなりきつい 8 9 10 非常にきつい 10< 最大 |
ボルグスケールと有酸素運動
ボルグスケールは様々な運動療法を実施する際の目安となり得る。
そんなボルグスケールだが、ここでは『有酸素運動の強度の目安』として記載してみる。
ちなみに、有酸素運動は以下を指す。
『のんびり気長に出来る運動、たとえばウォーキング、ジョギング、水泳、エアロビクスなど、酸素を沢山取り入れて脂肪を燃焼させる運動』
有酸素運動を効率的に進めるには、運動の強度と持続時間を正しく設定する必要があるのだが、呼気ガス分析などの特殊検査を用いて厳密に強度を設定せずとも、運動中の脈拍数や自覚的運動強度を目安に設定することも可能であり、この手法は広く普及している。
そして、簡便に設定できる目安の一つがボルグスケールという事になる。
例えば、『原型のボルグスケール』を活用した場合、数字の11~13あたりの「楽である~ややきつい(適度に息が荒くなり、汗が出る程度の強さ)」での有酸素運動が良いとされる。
※高齢患者や糖尿病患者で自覚症状の乏しい場合は、運動中の会話の中で息切れの程度をスクリーニングする(これをトークンテストと呼び、原型ボルグスケール11~13に相当すると言われている)。
※強度が強すぎると、有酸素運動より無酸素運動の比率が高くなり、これまで挙げてきた様々な効用が享受できない可能性が出てくる。
もう少し厳密な数字の目安を知りたい人は、運動中の心拍数が推定最大心拍数(220からその人の年齢を引いたもの)の60%くらいになるような強さで運動すると良い。
例えば50歳の人であれば以下のような計算となる。
(220-50)×0.6=102
※つまり脈拍が102回/分程度の運動強度ということ。
最近は、腕時計に脈拍測定機能が付いているものもあり、これなら常にチェックしつつ有酸素運動(例えばウォーキングなど)を実施できて良いかも知れない。
少しボルグスケールから脱線したが、医療・看護・リハビリ分野で『ボルグスケール』は頻繁に登場する用語の一つなので、是非頭の片隅に入れておいてもらいたい。
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