ICFの活用方法について、評価の手順を記した後に、その他に思いつくポイントをいくつか列挙していく。

 

リハビリ(理学療法・作業療法)を考える上で、何らかの貢献が出来れば幸いである。

 

目次

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ICFを活用した評価の手順

 

ICFを考慮した評価の手順を以下に示す。

 

①活動と参加から始める

 

活動と参加とは関係が深く、「活動」は「参加」の具体像なので、2つを同時にみていく。

 

評価の際は「できるADL」と「しているADLの差に敏感であると同時に、「活動」と「参加」の差にも注目すること。

 

マイナスの程度を記載(自分の判断で軽・中・重・最重度と大雑把に。

 

問題ないもの(プラス)を記載。特に潜在的な(引き出せる)プラスが重要である。

 

 

②健康状態・環境因子・個人因子の影響をみる

 

「活動」・「参加」のそれぞれに、「健康状態」、「環境因子」(物的、人的、制度・サービスなど)、「個人因子」(生活歴・職業歴、ライフスタイル、興味、価値観など)がどう影響しているかをみていく。

 

「環境因子」についてはプラス(促進因子としての)の影響、マイナス(阻害因子としての)の影響を明確にしていく。同じ「環境因子」がある「活動」についてはプラスだが、別の「活動」にはマイナスに働くということもあるので注意が必要。

 

 

③心身機能・身体構造は活動・参加との関連で

 

このように「活動」「参加」を中心にみてきてから、その後で「心身機能・身体構造」を「活動」「参加」との関連でみる。

 

これが「心身機能・身体構造を生活・人生との関連でとらえる」ということである。

 

その際「構造」は、手足の切断、器官の欠損などの場合以外は記入の必要はほとんどない。

 

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目標指向的アプローチ

 

障害レベル間の相互依存性と相対的独立性の両方を重視しつつクライアントの障害(マイナス)と生活機能(プラス)、
さらに環境因子のなかのマイナス(阻害因子)とプラス(促通因子、ファシリテータ―)をよく把握して、
それらの分析と総合に立って「どのような新しい人生を創るか」という個別的・個性的な目標を一人一人のクライアントに独自のものとして設定することが理想となる。

 

そしてその目標を、ICFの概念を用いながら実現していく。

 

運動療法における平均的・標準的プログラムを、全ての例について同じように、個々の例によって重点を変えるということもなく、画一的・機械的に実行していくというのは真のリハビリテーションとは呼べない。

 

 

「参加と活動と心身機能・構造」は「目的と手段と要素」である

 

「参加」と「活動」との関係は、「参加」は生きることの目的であり「活動」はそのための手段と言える。

 

例えば、ある人が美術館での鑑賞という社会参加の目的を果たすために、多数の生活活動を手段として用いているということになる。

 

一方、「生活活動」と「心身機能」は「手段と要素」の関係にあたる。

 

ある一つの生活活動、例えば屋外を歩いて移動するという手段のために、多数の「要素」となる「心身機能」を組み合わせて働かせているのである。

 

ここで重要な事は、目的と手段と要素の組み合わせは必ずしも固定的なものではなく、実はかなり柔軟性があるということである。

 

ある手段や要素が何らかの理由で使えなくなった場合に、そのままならその目的を達成できなくなる。ところが、実際にはこれまでとは違った手段や要素に変えることで同じ目的を達成することが出来る場合が多い。

 

介護保険分野においても、「目的」と「手段」と「要素」を取り間違えないようとの通達がなされている。

 

上記のように「参加」を必ずしも目標にする必要はない(と個人的には思う)が、
「筋力増強」「バランス能力向上」「関節可動域改善」「疼痛緩和」といった心身機能の改善は目標達成のための「要素」に過ぎず、
少なくとも「活動」レベルを目標に掲げたリハビリでなければならないとされている。

 

 

対象者のプラス面を評価する

 

状態の把握にあたっては「出来ない・問題がある」というマイナスな部分だけではなく、「出来ている・頑張っている」というプラスの部分も把握し、プラスの部分については、それが家庭内や地域の通いの場などで発揮できないかを検討することが重要である。

 

そのことで、クライアントの自己有効感を高め、積極的な社会参加や活動的な生活を促すことが出来る。

 

ここで示している「プラスの部分」とは「表面上に浮き彫りになっている残存機能・残存能力」だけを指しているのではなく、「隠れて見えにくくなっている潜在性生活機能」も含まれている。

 

そして、「潜在性生活機能」にも着目できるかどうかは理学療法士・作業療法士にとっての腕の見せ所と言える。

 

そして、潜在的なプラスを引き出し伸ばすことを主としつつ、それに加えてマイナスを減らすことこそが真のリハビリテーションと言える。

 

これにより潜在的な生活行為の能力や拡大することのできる社会的役割は非常に大きくなると言える。

 

 

ICFの関連ページ

 

リハビリ(理学療法・作業療法)を考える上で、ICF(生活機能分類)による「人間を包括的に捉える視点」は重要になってくる。

 

そんなICFの基礎に言及した記事が以下になる。

 

ICF(国際機能分類)って何だ?

 

 

また、以下のリンク先には、ICFに関連した記事リストがまとめられているので、興味があればこちらも参考にしていただき、問題解決に役立てていただければと思う。

 

理学・作業療法士が知っておくべきICFのまとめ一覧