「心身機能・身体構造」(Body Functions and Structure)とは、生物レベルとして「生きること」の側面をとらえたものであり、体や精神の働き(運動機能・感覚機能、内臓の機能など)、また体の一部分の構造のことを指す。
この記事では、リハビリ(理学療法・作業療法)にとって重要な「ICFにおける心身機能・身体構造」について記載していく。
心身機能・身体構造障害の定義
「心身機能障害」「身体構造障害」とは、活動制限または参加制約の原因となる、またはその可能性となる、心身機能または身体構造の何らかの異常を指す。
つまり、必ずしも症状・徴候がこれに該当するとは限らない。
例えば「病的反射亢進」という徴候があったとしても、それが活動制限・参加制約の原因につながらないのであれば『機能・構造障害』には該当しない。
身体構造について
身体構造(body structures)とは『器官・肢体とその構成部分などの,身体の解剖学的部分』を指し、以下の7つに分類される。
①神経系の構造
②目・耳および関連部位の構造
③音声と発話に関する構造
④心血管系・免疫系・呼吸器系の構造
⑤消化器系・代謝系・内分泌系に関連した構造
⑥泌尿器系および生殖系に関連した構造
⑦運動に関連した構造
⑧皮膚および関連部位の構造
この記事では上記大分類の中で、『神経系の構造』と『運動に関連した構造』に関しての細分類のみを以下に示す。
神経系の構造についての細分類:
・脳の構造
・脊髄と関連部位の構造
・硬膜の構造
・交感神経系の構造
・副交感神経系の構造
・その他の特定の、神経系の構造
・詳細不明の、神経系の構造
運動に関連した構造についての細分類:
・頭頸部
・肩
・上肢
・骨盤部
・下肢
・体幹
・運動に関連したその他の筋骨格構造
・その他の特定の、運動に関連した筋骨格構造
・詳細不明の,運動に関連した構造
神経系・運動に関連した「構造」の個人的な拡大解釈
ICFの概念に必ずしも則していないかもしれないが、神経系・運動に関連した構造を個人的に拡大解釈して思考することがある。
具体的には、骨・靭帯・関節など、『運動器の解剖学的部分を構成する細部の構造』も「運動に関連した構造」と解釈し、さらに『運動器の解剖学的部分を構成する細部の構造』を①非可逆的なもの②可逆的なものに分類するという解釈での思考である。
※神経系も同様に解釈
非可逆的なもの・可逆的なものを整理すると、以下のようになる。
非可逆的なもの:
四肢の欠損・関節構構成体の変化(椎間板の脆弱化、関節軟骨や半月板や関節唇の摩耗、靭帯や関節包の緩みなど)・脳萎縮・脳損傷・・・・・・・などなど
可逆的な可能性を持っているもの:
筋の萎縮や構造的短縮、骨密度、脳部位(海馬など)の萎縮・・・・・などなど
心身機能について
心身機能(body functions)は『身体系の生理的機能(心理的機能を含む)』を指し、下記の8つに分類される。
①精神機能
②感覚機能と痛み
③音声と発話の機能
④心血管系・血液系・免疫系・呼吸器系の機能
⑤消化器系・代謝系・内分泌系の機能
⑥尿路・性・生殖の機能
⑦神経筋骨格と運動に関連する機能
⑧皮膚および関連する構造の機能
この記事では上記大分類の中で、『感覚機能と痛み』『神経筋骨格と運動に関する機能』に関しての細分類のみを以下に示す。
『感覚機能と痛み』の細分類(痛みについてのみ記載):
・痛みの感覚
・その他の特定の、および詳細不明の、痛みの感覚
・その他の特定の感覚機能と痛み
・詳細不明の、感覚機能と痛み
『神経筋骨格と運動に関する機能』の細分類(多すぎるので割愛しながら記載):
関節と骨の機能:
・関節の可動性の機能
・関節の安定性の機能
・骨の可動性の機能・・・など
筋の機能:
・筋力の機能
・筋緊張の機能
・筋の持久力性の機能・・・など
運動機能:
・運動反射機能
・不随意運動反応機能
・随意運動の制御機能
・不随意運動の機能
・歩行パターン機能
・筋と運動機能に関連した感覚・・など
神経筋骨格と運動に関する「機能」の個人的な拡大解釈
ICFの概念に必ずしも則していないかもしれないが、『神経筋骨格と運動に関する機能』について「一部の活動」も含めた視点で、個人的に拡大解釈した思考をすることがある。
「一部の活動」とはICFで分類されるところの『活動』に該当する「姿勢の保持」や「歩行(歩行パターンよりももう少し応用範囲の広い要素)」なども含めた上での「神経筋骨格と運動に関する機能」という解釈である。
構造と機能の因果関係
『機能』は『構造』に影響を与える場合がある。
例えば、脳卒中(脳の構造的変化)により片麻痺(機能的変化)が生じる場合がある。
また、麻痺側下肢を代償するために、活動時に非麻痺側下肢が過剰な働きを強いられれば、非麻痺側の下肢機能は(必要に迫られて)向上すると思われる。
このケースでは、脳卒中(脳の構造的変化)により、麻痺側及び非麻痺側下肢の機能に影響が及んだということになる。
『機能』は『構造』に影響を与える場合がある。
例えば脳卒中片麻痺における麻痺側下肢の機能を代償するために非麻痺側の機能を過剰に用いた場合は、それが例えば変形性膝関節症(半月板・関節軟骨の摩耗・骨の変形など構造的変化)などに繋がる可能性がある。
別の例では、生活不活発(つまりは体の機能を使わない)ということにより、骨密度の低下・筋の萎縮などの構造的変化をもたらす可能性がある。
一方で、適切なリハビリテーション(機能を使う)によって骨への刺激・筋の収縮が起こり、骨密度の改善・筋肥大などの構造的変化が起こる可能性もある。
つまり「機能」が「構造」に与える影響のうち、可逆的な要素であれば改善は可能となる(例えば、骨密度の低下・筋の萎縮など)。
一方で、不可逆的な要素であれば改善は困難である(例えば半月板・関節軟骨・骨の変形など)。
したがって、「今現在充実している機能」を、いかに丁寧に用いていくかという視点は「負の構造的変化が起こる可能性」を低くするという意味で重要である。
この意味において、「構造と機能」の因果関係を十分理解し、何らかの症状が出現しないうちからの「予防」という視点は重要となってくる。
ICFの関連ページ
リハビリ(理学療法・作業療法)を考える上で、ICF(生活機能分類)による「人間を包括的に捉える視点」は重要になってくる。
そんなICFの基礎に言及した記事が以下になる。
ICF(国際機能分類)って何だ?
また、以下のリンク先には、ICFに関連した記事リストがまとめられているので、興味があればこちらも参考にしていただき、問題解決に役立てていただければと思う。