リンク先サイト「筋骨格系理学療法の世界」で関節副運動について言及しているが、関節副運動に関連した画像が少なく、イメージしにくい可能性があるので、内容を補足する目的で記事を作成する。
※細かな解説は後述するリンク先を参照して頂きたい。
目次
関節副運動とは
関節副運動の概念は、ジョイントプレイテスト(=関節副運動テスト)や関節モビライゼーションを施行する際に必要な知識となる。
関節副運動は以下の様に1型と2型に分けられる。
関節副運動1型
『随意運動に抵抗が加わった時に起こり、関節の構造的な許容限界まで動く関節の運動』
関節副運動2型
『筋が完全にリラックスした状態で他動運動にのみ起こる関節面の動き』
この中で、ジョイントプレイテストや関節モビライゼーションに活用されるのは「副運動2型」の概念となる。
副運動1型について
副運動2型を記載する前に、副運動1型について記載していく。
関節副運動1型は、例えは「ボールを握った際に、ボールの硬さが抵抗となって、関節副運動が起こる」などが当てはまる。
そして、関節不安定性を有したクライアントほど、運動療法として抵抗運動を用いる際に関節副運動1型に留意する必要がある。
例えばリウマチ患者で関節が不安定な場合など、運動に抵抗を加えると(本来であれば起こらないような)過剰な関節副運動が起こってしまい、関節を傷める可能性がある。
※抵抗運動のみならず、自動運動ですら正常な関節包内運動が起こらないケースもあり、その様なケースではAKA博田法やマリガンコンセプトにおける「構成運動の概念を活用しながらの運動療法」のほうが安全に運動が実施できる場合がある。
個人的には、股関節唇損傷で不安定性を有している場合などで、急な方向転換で損傷側の下肢で踏ん張った際に、(骨運動は起こっていなくとも)関節包内運動は起こっており、これも副運動1型に分類しても良いのではと勝手に思っている。
※関節内の陰圧が保ってず「過剰な副運動1型」が起こってしまうことでクライアントに「不安定感」「不快感」が生じる。
※一方で、ゆっくりと「過剰な副運動1型が起こらないよう、自分に合った方向であったり、ゆっくりとした方向転換を心がける」ことで「過剰な副運動1型によって起こっている症状」は緩和される。
※もしこれが、構造的な問題であっても、症状の起こる動作を控える(安静にするという意味ではなく)ことで、修復が促進され、症状が緩和されることもあったりする。
関節副運動1型から考える原因組織の鑑別
もう少しだけ関節副運動について補足していく。
運動療法における一般論として「関節痛が生じている場合は、骨運動を伴う運動よりも、骨運動を伴わない運動(つまり等尺性な筋収縮)が望ましい」と言われることがある。
そして「骨運度を伴うことによる関節内への機械的ストレス刺激」を考えると、この考えは間違いではないと個人的には感じる。
※ただし、必ずしも等尺性収縮が関節に優しいという訳でもない。
一般的に等尺性収縮は関節の動きがないため、関節への負担が少なく安全とされている。
しかし、最大筋力を発揮した場合に関節にかかる力(関節圧迫力)を測定すると、短縮性収縮に比べて等尺性収縮のほうが関節圧迫力が大きい。
よって等尺性収縮であっても関節にかかる負担は少ないとは言えない。
~運動療法学より引用~
また、上記な考えと似たような理屈で以下の様に言われることもある。
関節周囲の疼痛が「収縮性組織」・「非収縮性組織」どちらが原因で起こっているかの鑑別が、「自動運動」「他動運動」「等尺性収縮」を組み合わせることで可能である。
これを一覧にしたのが以下の表となる。
自動運動 | 他動運動 | 等尺性抵抗運動 | |
---|---|---|---|
収縮性組織 | + | - | + |
非収縮性組織 | + | + | - |
※「+」⇒機械的ストレスを受ける組織
※「-」⇒機械的ストレスを受けない組織
ただし、関節副運動1型の考えに基づくと、「等尺性抵抗運動収縮の項目」は必ずしも上記な方程式ではなくなる。
確かに一般論として「骨運動を伴わない等尺性抵抗運動」によってストレスを受けるのは収縮性組織(筋肉)であり、非収縮性組織(例えば関節内組織や靭帯・関節包など)へのストレスは軽微な印象を受ける。
関連記事⇒『筋の収縮様式(求心性/遠心性/静止性/等尺性/等張性収縮)』
しかし例えば、極論として関節リウマチで骨破壊が進み関節もルーズになっているケースを想定してみるとどうだろう。
「骨運動を伴っておらず、一見すると関節副運動も起こっていない」と思われるケースであっても、(徒手抵抗によって起こる)副運動1型が過剰なケースでは、非収縮性組織にもストレス刺激が加わってしまうのがイメージしやすいのではないだろうか?
そして、(極論でなければイメージしにくいかも知れないが)一般的な「不安定性が混在した関節」でも十分に上記は起こり得る点は注意しておいた方が良いだろう。
ちなみに、上記表「他動運動」の項目における「収縮性組織はストレスを受けやすく、非収縮組織はストレスを受けにくい」という考えは、あながち間違っていないと感じる。
そして他動運動時に起こる「(関節包内運動の中の)関節構成運動」が異常をきたしているほどに、非収縮組織は機械的ストレスにさらされやすくなる。
そんな関節の他動運動を「理学療法」として実施するのであれば、関節構成運動の知識をある程度頭に入れたうえで操作したほうが痛みを誘発せずに済む。
ここから先は、話を「関節副運動2型」に関して、画像を用いて補足していく。
※以降は「関節副運動2型」を「関節副運動」と略して記載
関節副運動を画像でザックリ解説
重複するが、この記事はリンク先サイトの補足なので、詳しいことは後述するリンク先『関節包内運動(関節副運動・関節構成運動)』を参照にしていただきたい。
ここでは、画像を貼り付けて関節副運動をザックリ解説しておく。
関節副運動には以下の5種類がある。
- 離開(distraction)
- 圧迫
- 滑り(sliding)
- 回旋(spin)
- 傾斜(tilting)
そして、学派によっては回旋・傾斜・圧迫なども評価・治療に用いる場合があるが、ここでは活用されやすい「離開」と「滑り」を以下の図に示す。
関節副運動を「ジョイントプレイテスト」や「関節モビライゼーション」に活用する場合には、上記な様に「治療面」を基準に「離開」や「滑り」を考えていく。
離開や滑りのポイントは以下の通り。
- 離解
⇒『治療面に対して垂直な動き』
- 滑り
⇒『治療面に対して平行な動き』
治療面を各関節に当てはめてみよう
ジョイントプレイテストや関節モビライゼーション時のポイント
関節副運動をジョイントプレイテストや関節モビライゼーションに活用する際のポイントは以下となる。
患者と療法士の姿勢
- 患者をより快適な姿勢にする(with relaxation)
- 関節モビライゼーション時の肢位は、関節の障害の段階と治療者の技術に応じて最適にするべきである
・基本的にはLPP(最大ゆるみの肢位)で実施
・ゆるみの肢位以外で行うのは熟達した治療者が急性症状でないときに行う。
・療法士は適したボディメカニクスが用いられるような姿勢をとり、関節の副運動が可能な方向へ重力をうまく用いられるようにする。
療法士の手の位置
- 療法士の固定側の手は、対象となってる関節裂隙の(可能な限り)近位部を固定する。ベルトやテーブルでの固定も可
- 療法士の可動側の手も、対象となっている関節裂隙の(可能な限り)近位部に当てて、可動する
- 一般的に両側の手と理学療法士の体は最大限に患者の体に接触すべき
・力を広い表面積に分散⇒指尖× 手掌面全体○
・骨の突出部が接触することによる痛みを減少させる。
・患者の体をより強く固定
・患者に触れている部分を通じて信頼感を伝える。
関節副運動の関連サイト
以下のリンク先にも、関節副運動やジョイントプレイテストに関して詳しく解説してあるので、参照して頂きたい。
関節包内運動(関節副運動・関節構成運動)の概略
関節モビライゼーション施行の前提となる関節副運動テストとは?
また、関節副運動を活用した「関節モビライゼーション」に関しては以下を参照して頂きたい。
モビライゼーションとは!定義/適応・禁忌/方法を紹介
関節モビライゼーションと同様に、関節副運動を利用した治療手技にAKA博田法がある。
そんなAKA博田法と関節モビライゼーションの違いについては、以下の記事で言及しているので、興味がある方はこちらも参照してみてほしい。