この記事では高齢者の体力測定として活用され易いファンクショナルリーチテスト(FRテスト:Functional reach test)について、具体的な方法や基準値(カットオフ値)も含めて記載していく。

 

ファンクショナルリーチテストとは

 

ファンクショナルリーチテストとは、Duncanによって提唱されたバランス評価の方法であり、高い信頼性・再現性が確認されている。

 

ファンクショナルリーチテストは前方への重心移動範囲を反映しているとされている。

 

一方で、足圧中心移動距離で説明できるのは15%であり、残りの85%手度は筋力や可動域など様々の要因が関与しているとされている。(文献1

 

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ファンクショナルリーチテストの方法(やり方)

 

ファンクショナルリーチテストの方法(やり方)は以下の通り。

 

  1. 開脚立位で壁の横に立つ。

     

  2. 効き手側の上肢を肩関節90°屈曲位(肩の高さまで上肢挙上)とする。手は軽く握り拳を作る。

     

  3. そこから上肢をそのまま水平に最大限前方に伸ばすことのできる距離を測る。

     

  4. 測定は3回行い、平均値を算出する方法が推奨されている。

 

以下のA⇔B間の距離を測定
ファンクショナルリーチ
ファンクショナルリーチテストのイメージは以下の動画を参照。

 

 

※開始姿勢の段階で、既に体幹が回旋や前屈していないよう注意。

 

※開始後は体幹の回旋や前屈、つま先立ちでもOK。ただし、足を前方へ踏み出してしまったらやり直す。

 

※最大リーチ後、元の肢位に戻せず、バランスを崩してしまったらやり直す。

 

※利き手側に障害(例えば腱板損傷など)を有していれば、非利き手則でもOK。ただし、次回も測定手を統一することが望ましい。

 

 

ファンクショナルリーチテストを正確に測定するためのポイント

 

「開始姿勢において体幹屈曲や回旋などが生じていると、大きな誤差を生じてしまう」と前述したが、実際にはこれらのエラーが出ている高齢者は多い。

 

例えば、開始姿勢において体幹を前屈させてしまっているケースは多い。

 

そして、このエラーは高齢者は前屈位のほうが安楽だと感じてしまうことも関係しているのではと感じる。

 

また、開始姿勢において体幹を回旋してしまっているケースも多い。

※回旋は測定側(肩関節90°屈曲位とする側)へ回旋している場合が多い。

 

そして、「開始姿勢における体幹の回旋位」を防止するには「前ならえをしてください(両上肢ともに90°挙上位)」という指示が、感覚的に理解してもらい易い。

 

更に、「(前述した)開始姿勢における体幹の前屈位」を修正するために「背筋を伸ばして前ならえをして下さい」と指示するとスムーズに理解してもらい易い。

 

そこから、非測定側のみ降ろしてもらうと、エラーのない「開始姿勢」が出来上がることが多い。

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ファンクショナルリーチテストの準備

 

ファンクショナルリーチテストで準備する必要のあるものは以下の通り。

 

  • テープ:

    立ってもらう場所に目印テープを貼っておく。

  • 模造紙:

    メモリを刻んだ模造紙を壁に貼り付けておく(目盛りを刻むためのメジャーも必要)。

  • 付箋:

    模造紙に目盛りを刻んでいるので必ずしも必要ないが、開始肢位(上肢拳上)の位置で模造紙に付箋を貼り、最大リーチ位でも付箋を貼るという方法でも良い。そして付箋間の距離をテスト後に記録すると間違いが起きない。

 

あるいは、以下のような器具も売っている。

 

 

ファンクショナルリーチテストの基準値(カットオフ値)

 

ファンクショナルリーチテストは転倒リスクの予測に有用であり、15cmが転倒予測の基準値(カットオフ値)と報告されている。(文献3

 

※つまり、FRテストの測定距離15cm未満で転倒の可能性が大きくなるということ。

※25cm以上の高齢者に対し、15cm未満の高齢者は転倒の危険が4倍あるとされている。

 

ファンクショナルリーチの年代別基準(文献3

年代 ファンクショナルリーチ右
20~29(n=40) 42.71±0.78
30~39(n=47) 41.01±0.73
40~49(n=95) 40.37±0.53
50~59(n=93) 38.08±0.53
60~69(n=90) 36.85±0.53
70~79(n=91) 34.13±0.54

 

  • 文献1)Jonsson E et al : Does the functional reach test reflect stability limits in elderly people? J Rehabil Med 35(1) :26-30,2003
  • 文献2)Bohannon RW : Reference values for the five-repetition sit-to-stand test : a descriptive meta-analysis of data from elders. Percept Mot Skills 103(1) : 215-222,2006
  • 文献3)Isles RC et al : Normal values of balance tests in women aged 20-80.J AM Geriatr Soc 52(8) : 1367-1372,2004

 

 

ファンクショナルリーチテストの問題点

 

ファンクショナルリーチテストの問題点は、やはり構造的な円背を呈している人の測定だと感じる。

 

構造的な円背を呈している場合は、円背姿勢をベースラインとしてリーチングすれば良いのだろうが、「開始姿勢の段階で、もうすでに前屈(リーチ)している」ため、そこから更にリーチする羽目となるため、この値は参考にならない。

 

また、実際には構造的な円背に「安楽姿勢」が加味されているため、「背筋を伸ばして下さい」との声かけで円背が若干修正されることも多いが、この様に「努力を伴わせて修正させた開始姿勢」からスタートすることも、FRテストの意義を考えた場合に疑問が残る。

 

※もちろん、一概に「構造的な円背」といってもピンキリではあるが、言いたい事は分かってもらえるのではないだろうか。

 

結局のところ、「構造的円背が重度な人」は非適用となるのだろうが、グレーゾーンな人達に対して判断が困ることがある。

 

(あるいは、要支援者の体力測定としてパッケージ化したテストの中にファンクショナルリーチテストが入っている施設において、判断に困ることがる)。

 

 

ファンクショナルリーチテスト関連記事

 

転倒予防に関するテストを以下の記事にまとめているので、こちらも参考にしていただきたい。

 

転倒予防テストのカットオフ値まとめ

 

 

転倒リスクのカットオフ値が以下となる。
※ここからでも興味のある記事にアクセスすることができる

 

テスト カットオフ値
膝伸展筋力 1.2Nm・kg
FRテスト 15cm未満
片脚立位保持テスト(開眼) 5秒以下
TUGテスト 13.5秒以上
歩行速度 毎秒1m未満(横断歩道が渡りきれない)
5回立ち座りテスト 14秒以上
立位ステッピングテスト 17秒以上