この記事では、うつ病や不定愁訴、疼痛とも因果関係のあるセロトニンを増やすトレーニング方法(セロトニントレーニング)に関して記載していく。
目次
セロトニンは薬剤でも増やせるが・・・
セロトニンは薬剤によっても増やすことができる。
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ただし、薬剤には当然ながら副作用も存在する。
従って、重篤なうつ病などな特別な状態を除き、薬剤やサプリメントに極力頼らず、自然なトレーニングで脳内のセロトニン分泌を促進させた方が良いということになり、その分泌を自身で促進させるための方法が「セロトニントレーニング」である。
重要なのはリズム運動
セロトニントレーニングとして採用できる運動は「リズム運動」であり、この運動によりセロトニン神経を鍛えていくことになる。
例えば私たちが生きていく上で毎日行っている「歩行」や「咀嚼」や「呼吸」などもリズム運動と表現することが出来る。
そして、「リズム運動」を実施するにあたって特別なスキルは必要なく、誰でも簡単に実施出来る運動ということになる。
具体的なリズム運動のポイントは以下となる
・リズム運動の種類
・リズム運動の実施時間
リズム運動の種類
リズム運動とは「一定のリズムで、ある程度持続して行う運動」を指す。
つまり、有酸素運動として実施されることの多い「ウォーキング「ジョギング」「サイクリング」などは、リズム運動としてセロトニントレーニングに用いることができる。
ただし、セロトニントレーニングで言われるとことの「リズム運動」は、必ずしも全身運動のみを指さないため「リズム運動=有酸素運動」ではない。
例えば、咀嚼(ガムを噛む)や呼吸(腹式呼吸を繰り返す)などもセロトニントレーニングに含まれる。
また、同じ全身運動であったとしても、セロトニントレーニングはあくまでセロトニン神経の活性化なため、有酸素運動の目的と同じではない。
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この様にリズム運動には様々な種類があるので、自分が継続できそうなもの(あるいはセロトニンの活性化を実感出来そうなもの)を探してみると良い。
ただし、自分に合いそうだと感じたトレーニングは、種類を変えずに同じものを継続して実施することが望ましいとされている。
※まぁ飽きっぽい人は、継続できないよりは種類を変えてでも継続したほうが良い。セロトニントレーニングで重要なのは継続することとなる。
セロトニントレーニング(リズム運動)の実施時間
有酸素運動は20~30分以上実施して初めて脂肪燃焼効果があるとされ、この「20~30分」が一つの目安となる。
また、それ以上の時間で運動を継続すればするほど脂肪燃焼効果が得られるということになる。
※厳密には連続でなくとも多少の休憩であれば挟んでも脂肪燃焼効果は持続する
一方で、セロトニントレーニングも「ある程度の時間継続することで初めて効果が現れる」という点では同じだが、長時間トレーニングを実施すればするほど効果が高まるという訳でもなく、むしろ逆効果にすらなり得る。
具体的なセロトニントレーニング(リズム運動)の実施時間は5分~30分程度が目安となる。
セロトニン神経は運動を始めて5分くらいで活性化が始まり、通常は20~30分でピークに達し、それ以上に実施してもトレーニングの恩恵は受けられない。
従って、おおよそ15分程度の継続が一つの目安となる。
また、時間と同様に重要な目安は、本人がセロトニンの活性化が自覚できたかどうかである。
セロトニン神経が活性化されたかどうかは「スッキリ爽快な気分」を感じ始めたかどうかで判断し、もし仮に10分で感じることができたのであれば、そこで終了しても構わない(それ以上実施しても構わないが、もしそこが活性化のピークな場合、継続しても徐々にスッキリ爽快な気分は薄れてくるかもしれない)。
例えば、休日にボーっとしてしまい、何もする気が起きなかったとする。
そんな際に、外へ出て日の光を浴びながらウォーキングを10分ほどしてみる。
すると5分程度で気分が変わり、10分程度でスッキリ爽快な気分になるかもしれない。
ただし、続けて結局20分歩いてみるとスッキリ爽快というよりは疲労も入り混じって、スッキリ爽快とはいかない気分に変わっているかもしれない(ダイエット目的であればOK)。
スッキリ爽快になっても更に運動を継続することで脳内に疲労物質が貯まりはじめてしまい、これがセロトニン神経の活動を弱らせてしまうと言われている。
従って、(重複するが)決してセロトニン神経を活性化するためには「適度な時間」で、なおかつ「頑張り過ぎない程度」なリズム運動がポイントとなる。
セロトニントレーニングは簡単にできるものを選択
前述してきたように、セロトニントレーニングに採用するリズム運動は簡単なもので良い。
そして、もうひとつ重要なことは「普段から実施している運動」「苦ではない」が望ましい。
例えば、私は水泳が好きなのでジムのプールで泳ぐことはセロトニントレーニングになり得るが、水泳が苦手(嫌い)な人は採用しない方が良いだろう。
これはジョギングも同じで、走り慣れていない人、あるいは走るのが嫌いな人は、セロトニントレーニングには採用しない方が良いかもしれな。
また、出来るだけシンプルな動きが望ましいとされる(エアロビクスなどではなく)。
こうなってくると、ウォーキングであったり、ガムを噛んだりなどがセロトニントレーニングとしては理想的かもしれない。
軽く負荷をかけて疲れない運動をやる
ここまでセロトニントレーングのポイントを述べてきたが、皆さんには各々が採用できそうな運動がイメージ出来ただろうか?
私の予想では、多くの人がウォーキングを想定しているのではと感じる。
そして想定しているウォーキングは、「のんびりダラダラなお散歩」に近いイメージなのではないだろうか?(間違っていたら申し訳ない)。
もちろん、それで「スッキリ爽快な気分」になれば何ら問題はない。
ただし念のため記載しておくと、セロトニン神経を活性化させるためには「軽い負荷を加えること」が望ましいとされている。
つまり、ウォーキングを想定しているのであれば「のんびりダラダラなお散歩」というよりは、通常の歩行よりも少しペースを上げた「速歩」といったイメージだ。
さらにもう一つ付け加えると、「負荷は慣れとともに調整していくことが望ましい」という点も大切となる。
つまりは、「自分にとって軽い負荷が加わる程度の速歩」も毎日繰り返していくと、負荷を感じなくなってくる。なので「自身の運動機能に合わせて負荷も上げていく」というのがセロトニン神経活性化のポイントとなる。
セロトニントレーニングを3ヶ月間継続してみる
セロトニン神経を即時的に活性化させる目的であれば関係ないが、「セロトニン神経が弱っている体質(抑うつ傾向・無気力傾向・不定愁訴など)」を改善しようと思った場合は、一定期間は継続して実施する必要がある。
そして、セロトニン神経が普段でも活性化されていると実感できるまでは3か月は必要だと言われている。
その理由は「セロトニン神経の自己受容体」が関係しているとされている。
セロトニン神経は軸索によって他の神経細胞とシナプスするが、それだけではなく自分自身にも軸索を伸ばして抑制的なシナプスを形成している。
そして、いわゆる「セロトニン神経が弱った体質」では軸索から抑制的な刺激を受け取る「自己受容体の数」が多いことも問題の一つだと考えられている。
従って、セロトニントレーニングを実施してセロトニン神経が活性化されても、自己受容体の数が多いとセロトニンの放出が十分になされないということになる。
ただし、トレーニングを継続すると自己受容体の数が徐々に減り始め(つまりは放出が抑制されなくなり)、徐々に心身への変化が実感できるようになる。
重複するがセロトニン自己受容体の数を変化させるポイントは、日々継続的にセロトニン神経を刺激し続けることが大切となる。
※また、心身への変化が実感出来ても、そこで辞めてしまうと自己受容体の数が元に戻ってしまうとも言われているため、効果が実感出来た後も毎日の習慣として継続していくことが望ましい。
※つまり、毎日出来る簡単なリズム運動を選択することが大切となる。
セロトニントレーニングの関連記事
この記事ではセロトニンの分泌を促進する方法としてセロトニントレーニングを紹介したが、トレーニング以外にも日光浴や食事など、促進手段は他にもいくつかある。
それらの手段に関しては以下も参照して理解を深めていただきたい。