この記事ではセロトニンによる鎮痛機序について、記載していく。
セロトニン神経
セロトニン神経は、以下のように様々な脳神経へ影響を与えている。
- 脳幹の縫線核群に小さな集団として分布していて、多様な機能に影響を与えており、延髄吻部の腹内側部にある『大縫線核(=B3)』、中脳中心灰白質の腹側正中線上にある『背側縫線核(=B7)』は下行性疼痛抑制系に関与している。
- B7からの出力には下降性線維は少なく、視床・視床下部・大脳基底核・扁桃体へ上行性線維も送っている。そして、B7による鎮痛効果は下降性疼痛抑制系だけでなく、視床のニューロンに対する抑制によっても生じると考えられている
- B7は覚醒レベルにも関与しているが、セロトニンには覚醒中枢に対して明確な興奮作用は認められないことから、「レム睡眠を抑制することによって覚醒作用を生じさせている」と考えられている。
※疼痛におけるセロトニンの関与として、中枢神経系では抑制性に働き、末梢では炎症メディエーターとして疼痛増強に働く。
つまり、セロトニンは疼痛の増強・抑制の、両方の性質を持っているということになる。
セロトニンが心身へ与える影響
前述したように、延髄吻部の腹内側部にある『大縫線核(=B3)』、中脳中心灰白質の腹側正中線上にある『背側縫線核(=B7)』も下行性疼痛抑制系として、脊髄後角に対して抑制的に働き、鎮痛として作用する。
また、セロトニンは「行動には抑制的に」「気分には興奮させる方向に」作用するとされている。
これらのことから、中枢神経系におけるセロトニンの分泌不足は、鎮痛作用の低下や、痛み回避行動の促進・認知の歪みといった悪影響を及ぼす可能性を秘めている。
うつ病患者もセロトニンが不足している場合があり、セロトニンを増やす薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を使用することで、症状が改善することがある。
また、パニック障害や強迫症状を有する患者のセロトニン不足が指摘されることもある。
そして、セロトニンによる影響を強める薬剤としてはSSRI・SNRI・三環系抗うつ薬があり、下記のような機序で作用することで鎮痛にも作用する。
セロトニンのエコな仕組み
セロトニンはシナプス間隙に過剰に存在しており、シナプス前終末にあるトランスポーターで取り込まれて、再利用されるというエコな仕組みになっている。
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しかし、セロトニンの分泌が少ない場合は、セロトニンが取り込まれてしまうことが疼痛悪化などの弊害につながってしまう。そして、上記に記した薬剤はセロトニンの再取り込みをブロックする作用がある。
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セロトニンの再取り込みが生じなければ、セロトニンの効果を持続させることができるので、鎮痛効果を発揮することができる。
また、セロトニンは薬剤のみならず、様々な手段によって分泌が促進されることも確認されている。
セロトニントレーニング