この記事では、褥瘡発生リスクの評価スケールである『ブレーデンスケール(Braden Scale)』と『OHスケール』を掲載しておく。
理学療法士・作業療法士が褥瘡発生リスクを評価する必要性
まず、『ブレーデンスケール』や『OHスケール』をリハビリ職種(理学療法士・作業療法士)が知っておくべきメリットから記載してみる。
病院や施設内のみでリハビリ業務に携わる場合においては、軽度な褥瘡(発赤レベル)を発見するのは、身体を介護・看護するスタッフであることが圧倒的に多い。
※オシメ介助や入浴介助時に(自覚症状がまだ無いレベルな)褥瘡が発見されることが多い。
っと同時に、褥瘡発生リスクに関しても、リハビリ職種より看護師のほうが注視している(でもって、場合によっては褥瘡が発生する前に対策を講じる)場合が多い。
※もちろん、チーム医療においてた職種の一員として理学療法士・作業療法士が一緒に携わることは多いとは思うが。
しかし一方で、訪問リハビリでは看護師による褥瘡リスク管理がなされていないケースがあり、その場合はリハビリ職種(理学療法士・作業療法士)がこれらのスケールを理解しておくことで、例えば褥瘡を未然に防いだり、医師の指導を仰いだり、例えば耐圧分散マットレスの提案を行ったり、体位変換・除圧の方法を指導する機会があったりする。
※褥瘡が発生する人は要介護度が高い人が多く、訪問介護スタッフが関わることはよくあるが、そのケースにおいては「褥瘡が発生したことが(ケアマネや医師に)報告されること」はあっても「褥瘡を未然に防ぐ」ということは無いように思う。
でもって、、『ブレーデンスケール』や『OHスケール』は褥瘡を未然に防ぐために有用なスケールであるため、漠然とでも良いので理解しておくと有益だと思う。
ブレーデンスケール
まずはブレーデンスケールを記載しておく。
ブレーデンスケールとは介護施設における褥瘡発生要因を研究し、その中から有意差のあった以下の6項目を点数化したものである。
- 知覚の認知
- 浸潤
- 活動性
- 可動性
- 栄養状態
- 摩擦とずれ
ブレーデンスケールの基準値(カットオフ値)
ブレーデンスケールの点数の範囲は以下の通り。
- 最低点⇒6点
- 最高点⇒23点
※点数が低いほど褥瘡発生リスクが高い
ブレーデンスケールの褥瘡発生リスクに関する基準値(カットオフ値)は以下の通り。
- 病院における褥瘡発生リスク ⇒14点以下
- 施設・在宅における褥瘡発生リスク⇒17点以下
※つまり、施設・在宅のほうが同じ点数であっても褥瘡発生リスクが高いことを意味する(まぁ、病院の方が褥瘡予防に対する知識・技術ともに高いので当然か。。)。
どの項目の点数が低いのかを把握し、その項目に重点を置いたケア計画を作成していくことが大切となる。
ブレーデンスケールの評価リスト
以下がブレーデンスケールの評価リストになる
※引用「日本褥瘡学会 編:在宅褥瘡予防・治療ガイドブック(第2版).照林社,東京,2012:44-45」
知覚の認知
圧迫による不快感に対して適切に反応できる能力 |
1点: 全く知覚なし
痛みに対する反応(うめく、さける、つかむ等)なし。この藩王は、意識レベルの低下や鎮静による。あるいは、体のおおよそ全体にわたり痛覚の障害がある。 |
2点: 重度の障害あり
痛みにのみ反応する。不快感を伝えるときには、うめくことや身の置き場なく動くことしかできない。あるいは、知覚障害があり、体の1/2以上にわたり痛みや不快感の感じ方が完全ではない。 |
3点: 軽度の障害あり
呼びかけに反応する。 しかし、不快感や体位変換おニードを伝えることが、いつもできるとは限らない。あるいは、いくぶんか知覚障害があり、四肢の1・2本において痛みや不快感の感じ方が完全ではない部分がある。 |
4点: 障害なし
呼びかけに反応する。知覚欠損はなく、痛みや不快感を訴えることができる。 |
---|---|---|---|---|
浸潤
皮膚が浸潤にさらされる程度 |
1点: 常に湿っている
皮膚は汗や尿などのために、ほとんどいつも湿っている。患者のを移動したり、体位変換をするごとに湿気が認められる。 |
2点: たいてい湿っている
皮膚はいつもではないが、しばしば湿っている。各勤務時間内に少なくとも1回は寝衣寝具を交換しなければならない。 |
3点: 時々湿っている
皮膚は時々湿っている。定期的な交換以外に、1日1回程度、寝衣寝具を追加して交感する必要がある。 |
4点: めったに湿っていない
皮膚は通常乾燥している。定期的に寝衣寝具を交換すればよい。 |
活動性
行動の範囲 |
1点: 臥床
寝たきりの状態である。 |
2点: 坐位可能
ほとんど、またはまったく歩けない。自力で体重を支えられなかったり、椅子や車椅子に座るときは、介助が必要であったりする。 |
3点: 時々歩行可能
介助の有無にかかわらず、日中時々歩くが、非常に短い距離に限られる。各勤務時間中にほとんどの時間を床上で過ごす。 |
4点: 歩行可能
起きている時間は少なくとも1日2回は部屋の外を歩く。そして少なくとも2時間に1回は屋内を歩く。 |
可動性
体位を変えたり整えたりできる能力 |
1点: 全く体動なし
介助なしでは、体幹または四肢を少しも動かさない。 |
2点: 非常に限られる
時々体幹または四肢を少し動かす。しかし、しばしば自力で動かしたり、または有効な(圧迫を除去するような)体動はしない。 |
3点: やや限られる
少しの動きはあるが、しばしば自力で体幹または四肢を動かす。 |
4点: 自由に体動する
介助なしで頻回にかつ適切な(体位を変えるような)体動をする。 |
栄養状態
普段の食事摂取状況 |
1点: 不良
決して全量摂取しない。めったに出された食事の1/3以上を食べない。蛋白質・乳製品は1日2皿(カップ)分以下の摂取である。水分摂取が不足している。消化態栄養剤(半消化態、経腸栄養剤)の補充はない。あるいは、絶食であったり、透明な流動食(お茶、ジュース等)なら摂取したりする。または、末梢点滴を5日間以上続けている。 |
2点: やや不良
まったに全量摂取しない。普段は出された食事の約1/2しか食べない。蛋白質・乳製品は1日3皿(カップ)分の摂取である。時々消化態栄養剤(半消化態、経腸栄養剤)を摂取することもある。あるいは、流動食や経管栄養を受けているが、その量は1日必要摂取量以下である。 |
3点: 良好
たいていは1日3回以上食事をし、1食につき半分以上は食べる。蛋白質・乳製品を1日4皿(カップ)分摂取する。時々食事を拒否することもあるが、勧めれば通常補食する。あるいは、栄養的におおよそ整った経管栄養や高カロリー輸液を受けている。 |
4点: 非常に良好
毎食おおよそ食べる。通常は蛋白質・乳製品を1日4皿(カップ)分以上摂取する。時々間食(おやつ)を食べる。補職する必要はない。 |
摩擦とずれ |
1点: 問題あり
移動のためには、中等度から最大限を介助を要する。シーツでこすれず体を動かすことは不可能である。しばしば床上や椅子上でずり落ち、全面介助で何度も元の位置に戻すことが必要となる。痙攣、拘縮、振戦は持続的に摩擦を引き起こす。 |
2点: 潜在的に問題あり
弱々しく動く。または最小限お介助が必要であある。移動時皮膚は、ある程度シーツや椅子、抑制帯、補助具などに擦れている可能性がある。たいがいの時間は、椅子や床上で比較的よい体位を保つことが出来る。 |
3点: 問題なし
自力で椅子や床上を動き、移動中十分に体を支える筋肉を備えている。いつでも、椅子や床上でよい体位を保つことができる。 |
OHスケール
次に、OHスケールを記載していく。
OHスケールとは、2001年に大浦(O)が発表した『大浦スケール』に堀田(H)が改変を加えて完成したスケールである(なのでOHスケールと呼ばれる)。
日本人が作成していることもあり、日本人のエビデンスに基づいている。
※日本人の褥瘡は「骨突出」と「拘縮」が特徴らしく、そんな日本人に対応できているスケールという事らしい。
※非常に簡便であり、体圧分散寝具の選定に利用されることも多い。
OHスケールの評価項目は以下の通り。
1.自力で、体位変換できるか? |
できる ⇒0点 |
どちらでもない ⇒1.5点 |
出来ない ⇒3点 |
|
2.病的骨突出(判定機の状態) BPスケール使用時 |
なし ⇒0点 |
軽度・中等度(ベンチ) ⇒1.5点 |
高度(シーソー) ⇒3点 |
|
3.浮腫(むくみ) |
なし⇒0点 |
あり⇒3点 |
||
4.関節拘縮 |
なし⇒0点 |
あり⇒1点 |
上記の様に4項目を2or3段階で判定する。
4項目の点数を合計し、以下の様に解釈する。
- 0点 ⇒褥瘡リスクなし
- 1~3点 ⇒軽度な褥瘡リスク
- 4~6点 ⇒中等度リスク
- 7~10点⇒高度リスク
つまり、前述したブレーデンスケールが「点数が低いほどハイリスク」なのに対して、OHスケールは「点数が高いほどハイリスク」ということになるので混乱しないように整理してみてほしい。
1.自力で、体位変換できるか?
意識清明であっても、誰かが声をかけるまで動こうとしない場合は、自力では動けないのに等しいため3点となる。
2.病的骨突出(判定機の状態) BPスケール使用
栄養不足によって痩せてしまい、廃用性筋萎縮など骨が突出してくると、その部分に褥瘡が形成されやすくなる。
でもって、どの程度病的な骨突出が生じているかを評価して点数化するのだが、
厳密な評価は、市販の骨突出判定機を使用する必要がある。
この判定機を使って「骨突出部から8cm離れた場所が、突出部よりどの程度低いかで、以下の様に判定する。
・骨突出なし⇒0cm以下、あるいは測定部より凹んでいる⇒0点
・軽・中等度⇒0~2cm未満⇒1.5点
・高度 ⇒2cm以上⇒3点
まぁ、リハビリ職種(理学・作業療法士)は持っていないと思うが、臨床的には「骨突出部から8cm離れた場所がどの程度低いか」という点から感覚的に評価が可能と考える。
3.浮腫(むくみ)
浮腫があるか、無いかの2段階で評価する。
- なし⇒0点
- あり⇒3点
OHスケールの浮腫は、全身的な病状が原因(例えば腎不全・肝不全・心不全・低栄養など)で皮下組織に水分が過剰に貯留した状態を評価する。
でもって、浮腫の「あり」「なし」は足背や下腿、背部で評価する。
4.関節拘縮
関節拘縮があるか、無いかの2段階で評価する。
- なし⇒0点
- あり⇒1点
全身の関節でどこか1つでも拘縮(OHスケールでは、関節の動きが正常に比べて少しでも悪い部分を拘縮と表現している)
関連記事⇒『関節拘縮って何だ?(廃用症候群シリーズ)』
褥瘡リスクに応じたマットレスの選び方
訪問リハビリなどの臨床における褥瘡リスク管理において、『ブレーデンスケール』や『OHスケール』を観覧してもらう事で何となく「この人、褥瘡が発生しそうだな」というイメージを持ってもらえるのではないだろうか(これらスケールを紹介したのは、点数を付けれるようになってもらうためではなく、医師や看護師にリスクを報告できるようになってもらうためである)。
でもって褥瘡発生リスクの高い患者に対して、「褥瘡予防・管理ガイドライン第3版」には、褥瘡発生率を低下させるために『体圧分散マットレス』を使用するよう強く勧められている(推奨グレードA)。
※複数の研究で、標準マットレスに比べて体圧分散マットレスの方が続総発生率は優位に低かったと報告されている(日本褥瘡学会 編:褥瘡ガイドブック. 照林社,東京,2012;14(2):216-217)。
また、自力で体位変換できない人に対して耐圧分散マットレスを使用する際は、『圧切替型エアマットレス』の使用が進められている(推奨グレードB)。
※自力で体位変換できない人の場合、標準マットレスやフォームマットレスに比べて圧切替型エアマットレスのほうが褥瘡予防効果を期待できる(日本褥瘡学会 編:褥瘡ガイドブック. 照林社,東京,2012;14(2):216-217)
関連記事
褥瘡(床ずれ)の予防と管理(廃用症候群シリーズ)ー『背抜き』も紹介するよ)