この記事では、痛みにおける心理社会的要素の指標でもある以下の3つ(+レッドフラッグ)について記載していく。
・イエローフラッグ
・ブルーフラッグ
・ブラックフラッグ
目次
レッド・イエロー・ブルー・ブラックの各フラッグについて
レッドフラッグ・イエローフラッグ・ブルーフラッグ・ブラックフラッグに関して、『Mainとde Williams(2002)、Waddell(1998)による臨床フラッグ』では以下のように解説している。
レッドフラッグとは
レッドフラッグとは「生物医学的徴候」を意味し、以下が該当する。
- 深刻な臓器疾患
- 緊急で神経系にとって「生存危険性のある」圧迫
※レッドフラッグについてさらに詳しくは
イエローフラッグとは
イエローフラッグは「心理社会的または心理的徴候」を意味し、以下が該当する。
- 非現実的な希望や意見
- 利点とならない克服戦略
- 疲労=ネガティブなストレス
- 促進すべきではない疾患反応
- 状況を変えるための意識の欠如
- 病状を強める家族や社会的環境からの要因
ブルーフラッグとは
ブルーフラッグとは「社会的・経済的徴候」を意味し、以下が該当する。
- 職業状況のネガティブな作用
ブラックフラッグとは
ブラックフラッグとは「職業分野からの徴候」を意味し、以下が該当する。
- 疾患状態と保険からの利点
- 職場における不利な係争
- 仕事に対する不十分な満足度
- 仕事の条件が不十分と感じられる
- 仕事の特徴
- 社会保険システム
痛みにおける心理社会要素の重要性
結局のところ、ブルーフラッグやブラックフラッグも「イエローフラッグ」に含まれるのでは??細分化しなくても良いのでは??などと思うことがある。
他方で、ブルーフラッグ、ブラッグフラッグの存在は、以下を示す用語として意義深いとも感じる。
- 職業に関連したネガティブ因子(ストレスなど)が疼痛増強に関与すること
- 職業に関連したポジティブ因子(保険でお金が入る・仕事を休めるなど)が疼痛増強に関与すること
ブルーフラッグ・ブラックフラッグはイエローフラッグに含まれる
先ほど、以下の様に記載した。
でもって他にも調べてみると「Mainら(MainとBurton,2002;Mainら,2000)がイエローフラッグの要素である職業的な要素を、ブルーフラッグとブラックフラッグという言葉を用いて説明している」と記載している文献も見つけたので、その文献を参考にした内容も列挙しておく。
※個人的には、この解釈のほうがスッキリする。
イエローフラッグ
イエローフラッグは心理社会的なリスクファクターの総称である。
具体的には以下などが挙げられる。
- 患者の信条と対処方法
- 苦痛と病気の性質
- 変わりたいという意欲
・・・・・などなど、心理社会的リスクファクターすべて。
ブルーフラッグ
ブルーフラッグはイエローフラッグの中でもストレスに由来するものであり、業務に関する特徴を表したもを指す。
ブルーフラッグを特徴付ける特性としては以下が挙げられる。
- 高い要求と低い自制
- 困難な業務形態
- 同僚からの社交的な支援の不足
- 時間に対する重圧
- 業務に対する満足度の欠如
ブルーフラッグを有している人は「職場で他人が思っている以上に、その人の認識は重大なものである」という認知バイアスを有している点である。
したがって、理学療法の評価における心理社会面のスクリーニングの重要性は認識しておく必要がある。
ブラックフラッグ
ブラックフラッグはイエローフラッグの中でも「雇用主が定めた労働条件と、国が算定した雇用と疾病の条件に関する政策など」を指す。
ブラックフラッグを特徴付ける特性としては以下が挙げられる。
- 国家:
賃金率
交渉権(給付金制度、賃金弁済)
- 雇用主:
社会保険制度
職務制限策
業務形態
組織のサイズと構造
労働組合からのサポート
- 労働内容特有な側面:
人間工学的側面(重労働、持ち上げ動作の頻度、姿勢など)
時間的特性(労働時間の量、シフトパターンなど)
問診・クリニカルリーズニングの重要性
患者の評価と治療の経過を通じ、客観的評価と初期の試行的治療の反応をもとにレッドフラッグ・イエローフラッグ・ブルーフラッグ・ブラックフラッグについてのスクリーニングを行うことは、セラピストが予後を明確にし、適切な治療方法を決定するのに役立つ。
そのためには、『問診』を含めた評価・治療を、患者の言動・態度・振る舞いなどを注意深く観察しながら実施することで判断できる。
関連記事⇒『問診がリハビリに重要な件』
でもって、理学療法士・作業療法士は、それぞれ異なった仮説カテゴリーの中で、効果的に意志決定を行っていくのに必要なレベルまで患者を理解するための、様々な推論の方策に精通していなければならない。
関連記事⇒『クリニカルリーズニング(臨床推論)って何だ?』
心理社会的要素が影響を与える一例
例えば、交通事故で「ムチウチ(頸椎の急性捻挫)」になって通院している人を想定してみよう。
この人が、「早く復帰して仕事がしたい」といった前向きな姿勢な場合は『セルフエフィカシー』も伴って疼痛改善にプラスに働くと思われる。
一方で、「ムチウチの間は仕事が休める」「治療が長引くほど損害賠償が多くもらえる」といった状況にメリットを感じてしまうと、「早く痛みから解放されたい自分」と「メリットに魅力も感じている自分」との板挟みになるため、疼痛改善への弊害をもたらす場合がある。
※人は表層心理とは異なった深層心理を無意識に持っており、本人がメリットを自覚していないケースもある。
この点は以下の『痛み行動とは?』でも解説しているので、合わせて観覧してもらうと理解が深まると思う。
人間がとってしまいがちな『痛み行動』を徹底解説!
レッドフラッグもあるよ
冒頭でも紹介したが、イエローフラッグ・ブルーフラッグ・ブラックフラッグといった『疼痛に関する心理社会的要素』に対してレッドフラッグという用語も存在する。
レッドフラッグとイエローフラッグの位置づけは以下の通り。
(画像引用:ペインリハビリテーション)
レッドフラッグは「患者の症状(腰痛)の中に重大な病変があるか」をチェックする上で必須な知識であり、以下の記事でも解説しているので、合わせて観覧してみてほしい。