この記事では、『肘関節』と『上下橈尺関節』へフォーカスを当てて、特徴を記載している。
肘関節について
肘関節は主に肘の屈伸を行うため蝶番関節とみなされるが、厳密にいうと上腕骨・尺骨・橈骨が形成する複合関節であり、具体的には以下の関節で成り立っている。
・腕尺関節(らせん関節)
・腕橈関節(球関節)
・上橈尺関節(車軸関節)
ちなみに、上橈尺関節は肘関節の屈伸というよりは(下橈尺関節とともに)前腕の回内・回外に働くため、肘関節とは別に扱われることもある。
補強靱帯としては、内側・外側側副靱帯に加え、橈骨頭を輪状に囲む橈骨輪状靱帯がある。
橈骨頭が未発達な乳幼児ではこの靱帯がゆるいため、急に手を引いたりすると亜脱臼を起こすとされる(これを『肘内障』と呼ぶ)
上腕骨遠位端について
上腕骨の遠位端は横長に拡大しており、外側上穎と内側上穎を皮下によく触れる。
とくに内側上穎は著しく突出しており、その後方に尺骨神経溝(尺骨神経が通る)も触知できる。
尺骨神経溝では、尺骨神経が骨に接して通るため損傷を受けやすい部である(⇒肘部管症候群、遅発性尺骨神経麻痺)。
腕尺関節と腕橈関節
前述したように、上腕骨は以下の2つとそれぞれ関節をなす。
・尺骨(腕尺関節⇒「上腕骨内側の上腕骨滑車」と「尺骨」で関節を形成)
・橈骨(腕橈関節⇒「上腕骨外側の上腕骨小頭」と「橈骨頭」で関節を形成)
上腕骨の腹側と背側には、鉤突窩と肘頭窩というくぼみがあり、それぞれに以下が入り込むことで肘関節の可動い息を大きくしている。
・鉤突窩⇒屈曲時に尺骨鉤状突起が入り込む
・肘頭窩⇒伸展時に肘頭が入り込む
上下榛尺関節について
橈骨と尺骨は、上・下橈尺関節と前腕骨間膜によって連結している。
※骨間膜は橈骨と尺骨の間に存在する強い膜状の靭帯のこと(回外時にとくに緊張する)で、骨間膜の拘縮は前腕の回外・回内を制限する。
上橈尺関節と下橈尺関節
上橈尺関節は以下の2つで形成される。
・橈骨の橈骨頭
・尺骨の僥骨切痕
下橈尺関節は以下の2つで形成される。
・尺骨頭(尺骨の遠位端のこと)
・僥骨遠位端の尺骨切痕
これらの関節が上手く動くことで前腕の回内・回外が可能となる。
前腕の回内で尺骨と橈骨は交差するよ
解剖学的肢位では、上肢は手掌を前に向けた前腕回外位にあり、橈骨と尺骨は平行である。
でもって、前腕を回内すると両骨は交叉する。
※下記イラストの右側が回内位。橈骨と尺骨がクロスしているのが分かると思う。
実際に自分の前腕をクルクル動かしてみても、橈尺骨が交叉しているイメージはわかないかもしれないが、実際は交差しているので骨模型でも確認してみてほしい。
※回内外の際には、橈骨頭が橈骨輪状靱帯の中で回旋すると同時に、橈骨遠位端が尺骨遠位端の周囲を回るように動いている。
前腕の回内外はADLにも重要だよ
前腕の回内・回外は手のひらを返。
す運動であるふだんなにげなく使っているが、日常生活活活動(ADL)における重要性は高い。
※例えば、字を書いたり箸を使うときは回内位にあるし、顔を洗うときは回外位にある。※ドアの取っ手を回すときやタオルを絞るときもこの運動を巧みに利用している。
前腕骨の骨折や骨間膜の拘縮遠位や近位の橈尺関節の異常が運動制限を起こしやすいので注意が必要である。