この記事では、『股関節』へフォーカスして、特徴を解説した記事になる。

 

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股関節とは

 

寛骨臼と大腿骨頭からなる臼関節(関節窩の深い球関節)である。

 

寛骨臼の周囲には関節唇があることで関節はより深くなっており、さらに大腿骨頭靱帯とよばれる関節内靭帯を備えている。

 

股関節を形成する骨盤側の骨である『寛骨』は一つの骨ではなく、「腸骨」・「恥骨」・「坐骨」の3つで構成されている。

※腸骨・恥骨・坐骨は骨の成長が終わるまでは別々の骨だが、大人になると3つの骨の境界が分からなくなり、合わせて「寛骨」と呼ばれる。

 

で、『骨盤』は寛骨の他に「仙骨」・「尾骨」を加えた部分を指す。

 

 

寛骨臼と大腿骨頭の表面は、関節軟骨という弾力性のある組織で覆われ、関節液で満たされた関節包に包まれている。

 

で、関節軟骨には、血管がない。

 

なので、関節包に包まれた関節腔の中にある関節液を利用して栄養供給が為されている。

 

※関節軟骨というクッションと、関節液という潤滑油のおかげで、関節の滑らかな動きが可能となる。

 

また「関節唇のsealing機能」も、この点に関して重要な役割を担っており、具体的には意を参照してみてほしい。

⇒『股関節唇損傷を徹底解説!急性外傷後・変形性股関節初期の痛みの原因かもよ?

 

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大腿骨近位端と骨体部

 

大腿骨の近位端には以下がある。

・大腿骨頭

・大腿骨頚部

・大転子

・小転子

 

 

大腿骨頭:

大腿骨頭は球状で軟骨におおわれ、股関節をなす。骨頭の中央からやや下方に偏した部に大腿骨頭窩があり、大腿骨頭靭帯が付着する。

 

 

大腿骨頸部:

成人の大腿骨頚部は大腿骨と約125°の角度をなし(頸体角)、また骨頭は約10°前方を向いている(前捻角)。

高齢者の場合、転倒した際に骨折しやすい部分の一つが、この『大腿骨頸部』になる。

⇒『大腿骨頸部骨折=骨粗鬆症+転倒(でもってヒッププロテクターは予防に有効?効果なし?)

 

 

大転子:

大転子は大腿骨外側にあり上方に突出し、上端はほぼ大腿骨頭の中心の高さだと言われている。

 

・大転子には股関節外転筋や外旋筋が付着している

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⇒『中殿筋ストレッチングで最強はどれだ?

⇒『梨状筋の触診とストレッチを知って、梨状筋症候群のリハビリに活用

 

・皮下に容易に触れるため、計測点として重要である。

 関連記事⇒『杖の種類・特徴・選び方・使い方・調整方法を紹介!

 

・大転子は、杖の長さ調節の際に活用されるランドマークでもあったりする。

 関連記事⇒『形態測定って、どんな意味があるの?

 

 

小転子:

小転子は内下方にあり、腸腰筋付着部である。

関連記事⇒『腸腰筋の作用は沢山あるよ(エビデンス参考)

 

 

 

ついでに大腿骨体についても補足しておく。

大腿骨体は前外側にゆるく彎曲しており、後面には殿筋粗面、粗線があり、大殿筋・内転筋付着部となっている。

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⇒『大殿筋とブリッジ運動(+ストレッチ)

⇒『股関節内転筋群の選択的ストレッチを紹介

 

 

股関節の靱帯

 

関節周囲は腸骨大腿靱帯・恥骨大腿靱帯・坐骨大腿靱帯で補強されるため、肩関節に比べて運動性は低いが安定性は高い。

 

 

 

特に股関節の前面にある『腸骨大腿靭帯(Y靭帯)』は非常に強靭な靭帯で、股関節の伸展を制限し、立位安定に寄与している。

 

以下は、股関節の動きと靱帯の緊張を示している。

 

  屈曲 伸展 外転 内転 外旋 内旋
腸骨大腿靭帯(上) 2+
腸骨大腿靭帯(下) 2+
恥骨大腿靭帯 2+
坐骨大腿靱帯  
大腿骨頭靱帯  

 

 

『腰椎骨盤リズム』と『ヒップ スパインシンドローム』

 

骨盤と腰椎は協同して動き、これを『腰椎骨盤リズム』と呼んだりする。

 

でもって、骨盤と腰椎は協調して作用するからこそ、腰部に機能障害が生じれば、それが骨盤にも波及し、例えば臀部・股関節周囲などの痛みとして出現してしまうこともある。

 

この様に「股関節(+骨盤)とそれに隣接する腰部(腰椎)が互いに悪影響を及ぼしあって、様々な症状が出現してしまうことを『ヒップ スパインシンドローム』と呼ぶ。

 

ヒップ スパインシンドロームの一例としては以下のイラストも参照してみてほしい。

 

これは、「腰部⇒股関節の順に問題が派生する例」を示している。

 

①は腰椎の前彎が消失し、それに伴い骨盤後傾(骨盤が後ろへ傾く)が生じていることを示している

②は「①の結果、寛骨臼が後ろにずれ、(極端な表現をすると)大腿骨頭を覆いきれなくなること」を示している

覆いきれなくなった部分の大腿骨頭が、他の組織に何らかの機械的刺激を与えてしまい、疼痛などの症状が出現する可能性がある。

 

この様な身体の繋がりは『運動連鎖による理学療法 、これさえ読めばイメージ出来るよ!』でも詳しく解説しているので合わせて観覧してみてほしい。

 

 

これは、「股関節⇒腰部の順に問題が派生する例」を示している。

 

①は「股関節の異常で脚長差が生じ、それに伴い骨盤が傾いている状態」を示している。

②は「①による骨盤の傾きを補正するため、背骨の彎曲が起こっている状態」を示している。

この彎曲により脊柱の機能異常が生じ、腰部を中心とした様々な部位に問題を引き起こす可能性がある。

 

 

ちなみに、腰部の機能障害が関連痛として股関節周囲に生じてしまうことも良くあり、この場合は腰部へアプローチすることで股関節周囲の症状が即座に改善される場合もある。

 

関連痛に関しては以下の記事で深堀解説しているので、興味がある方は合わせて観覧してみてほしい。

⇒『関連痛(内臓+仙腸関節などの運動器)

 

 

余談:股関節の病期が原因で膝に障害が及ぶこともある

 

(後述する)変形性股関節症が進行すると、脚長差が生じる(左右差の脚の長さに差が出る)。

 

すると、股関節とともに体重を支える役割を担う、膝関節にも影響が及ぶ。

 

で例えば、左右の膝関節にかかる負荷が不均等になるため、膝痛が出現したり、(股関節の問題が長期にわたると)O脚(内反膝)やX脚(外反膝)などの変形が生じたりする可能性もある。

 

また、脚長差だけでなく「股関節の痛みを庇う」という目的のために反対側の脚で庇って歩くことが多くなると、反対側の膝に負荷がかかり痛みや変形に繋がることも有り得る(反対側の股関節にも問題が生じることもよくある=両側性の変形性股関節症)。

 

身体は繋がっているので、何処かに異常をきたすと、それが別の部位への異常につながることは良く知られている。

 

同様に、症状を訴えている部位とは別の部位をアプローチすることで、症状を訴えている部位の問題が改善されることも良く知られている。

 

関連記事⇒『運動連鎖による理学療法 、これさえ読めばイメージ出来るよ!

 

 

股関節の異常(股関節疾患)

 

股関節疾患としてては以下などが挙げられ、ここから先は主要な股関節疾患を列挙のリンクを掲載しておく。

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変形性股関節症

 

関節軟骨は加齢に伴って徐々にすり減っていくが、股関節の形状が原因で、特にすり減りやすい場合がある。

 

※日本人では、骨頭を覆う寛骨臼の大きさが不十分な「臼蓋形成不全」が原因の場合が、最も多く見られる。

関連記事⇒『発育性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)・先天性股関節脱臼とは | 原因・症状・予防法・治療法など解説

 

 

でもって、加齢や先天性(っというか発育性)の要因などによって生じる「股関節の変形に伴って疼痛が出現する病態」を『変形性膝関節症』と呼ぶ。

 

変形性股関節症の初期には、歩き始めに痛む程度だが、次第に痛みが治まらなくなり、やがて歩いているときは常に痛み、さらには寝ていても痛むようになることもある。

 

関連記事⇒『変形性股関節症とは?原因・症状・治療法など紹介するよ

 

 

股関節痛に関連するその他の因子

 

股関節痛に関連する因子は以下など多く存在する。

でもって、股関節唇損傷や大腿骨頭壊死などは、股関節の変形を助長させる可能性も持っている。

関節唇損傷

FAI

大腿骨頭壊死

関節リウマチ

・鼠径ヘルニア

・ヒップスパインシンドローム

・他部位からの関連痛

・・・・・など

 

鼠径ヘルニアとは:

早期を覆っている筋膜などが弱くなた部分から、小腸や大腸の一部が脱出した状態を「鼠径(そけい)ヘルニア」と呼ぶ。

鼠径部(太ももの付け根)に痛みや違和感が生じ、股関節の痛みと感じることがある。

 

 

大腿骨頸部骨折

 

大腿骨頚部は海綿骨構造となっており、体重負荷に耐えるため一定方向の骨梁が発達している。

しかし、高齢者になると骨粗潅症のため骨梁が減り、骨折しやすくなる。

また大腿骨骨頭は周囲からの血行が乏しく、骨折をすると骨癒合が悪く、壊死に陥りやすい(なので人工骨頭に置換してしまうケースが多い)。

女性は骨粗溌症を起こしやすいので骨折を起こしやすい。

大腿骨頚部骨折後に寝たきりになるケースが多く、注意が必要である。

 

関連記事

⇒『大腿骨近位部の骨折って何だ?原因・予防法・各手術方法も解説

⇒『大腿骨頸部骨折=骨粗鬆症+転倒(でもってヒッププロテクターは予防に有効?効果なし?)