この記事では、肩関節(肩関節複合体)について記載していく。

 

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肩関節とは

 

肩関節は、解剖学的には肩甲骨と上腕骨との関節(肩甲上腕関節)を指すが、機能的にはいくつかの関節からなる複合機構としてとらえられている。

 

すなわち「肩」という場合、解剖学的関節(胸鎖関節・肩鎖関節・肩甲上腕関節)と、機能的関節(肩峰下関節・肩甲胸郭関節)を併せた名称である。

 

※運動学的には、肩関節は単一の関節ではなく、胸郭と上肢(鎖骨・肩甲骨・上腕骨)がなす複合関節とみなされる。

 

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鎖骨と胸鎖関節・肩鎖関節

 

鎖骨はS字状をしており容易に皮下に触れることが出来る。

 

胸鎖関節について:

鎖骨の内側端(胸骨端と呼ぶ)は「胸骨の鎖骨切痕(および第1肋軟骨の内側端)」と関節を成し、これを『胸鎖関節』と呼ぶ(胸鎖関節は鞍関節に該当する)。

 

関節腔は関節円板で2つに分けられており、可動域を大きくしている。

でもって鎖骨は、この関節を中心に肩峰端(外側端)が円を描くように動く。

 

 

肩鎖関節について:

鎖骨の外側端(鎖骨肩峰端と呼ぶ)は肩峰と関節を成し、これを『肩鎖関節』と呼ぶ。

 

肩鎖関節・胸鎖関節の動きによって肩甲骨の向きを変えることで、上肢の運動範囲を広げることができる。

 

肩鎖関節には上肢の動きに応じ強い力がかかるが、肩鎖靭帯と烏口鎖骨靭帯により肩甲骨にしっかり連結されている。

 

※ただし、肩を強く打つとこれらの靭帯が断裂することがあり、脱臼を起こすことがある。

 

 

 肩甲上腕関節(狭義の肩関節)

 

肩甲上腕関節は『狭義の肩関節』であり、肩甲骨関節窩と上腕骨頭がなす球関節である。

 

浅い関節窩なため、広い可動域をもつといったメリットがある反面、脱臼しやすい。

 

関節包や靭帯(関節上腕靱帯・烏口上腕靱帯・烏口肩峰靱帯)で補強されるほか、回旋筋腱板(小円筋・棘上筋.棘下筋・肩甲下筋の腱)で囲まれる。

 

※ただし、前下方部は補強が弱くいため、脱臼の大部分が前方脱臼である。

 

 

肩峰下関節(第2肩関節)

 

 

 『肩峰下関節』は(滑膜関節ではなく)機能的関節であり、『第2肩関節』とも呼ばれる。

 

第2肩関節の構成体:

第2肩関節の構成体は以下の通り。

 

・烏口肩峰アーチ(肩峰・烏口突起・烏口肩峰靱帯で形成されるアーチ)

・上腕骨頭の大結節

・肩峰下滑液包

・回旋筋腱板(の棘上筋)

・上腕二頭筋の長頭腱

 

 

第2肩関節の機能:

第2肩関節の機能は以下の通り。

 

・大結節の運動方向を制御する

・運動経路を選択する。

 

大結節周辺の軟部組織は肩関節の外転によって圧迫(インピンジメント)される。

なので、自動的に外旋位をとって大結節を後下方にのがし、摩擦を避ける生理的運動を持っている。

 

大結節は肩関節外転80°くらいから肩峰下に入り込み120°以降で肩峰を通過すると言われている(あくまで目安)。

 

※ROMテストやROMex時にも、この点を意識するとインピンジメントを予防できる。

⇒『肩関節のROMテスト | 参考可動域・代償運動・制限因子

 

 

第2肩関節の滑走障害:

第2肩関節に通過障害が生じるとを考えられる以下などの状態は『impingement lesions』というカテゴリーに一括される。

 

・肩峰下滑液包炎

・腱板炎

・腱板断裂・腱板損傷

・・・・・・・・など。

 

ちなみに、「何かが衝突したり挟み込まれる現象」をインピンジメントと呼ぶのだが、ニア(Neer, C.S)(1972)が「肩峰に棘上筋腱が衝突することが腱板断裂の原因である」と報告したのが最初である。

 

※ただし、インピンジメントは前述した意味であるため、肩だけでなく脊柱でもインピンジメントは起こり得る(例えば椎間関節に関節包が挟み込まれるなど)。

 

⇒『(肩関節における)インピンジメント症候群とは??

 

 

肩甲胸郭関節

 

肩甲胸郭関節は、肩甲骨と胸郭とがなす関節様のしくみ(機能的関節)を指す。

 

でもって、肩甲骨を胸郭に沿って動かす(挙上・下制・外転・内転・上方回旋・下方回旋・前傾)ことで関節窩の位置を変えるとともに、肩関節の運動範囲を広げている。

 

以下の動画は、肩甲胸郭関節の動き(胸郭上を肩甲骨が様々な方向へ滑っている様子)が分かり易い。

また、肩甲胸郭関節は前述した肩鎖関節・胸鎖関節も連動して動いているため、逆を言うとこれらの機能障害も受けるという事も理解しやすい。

 

 

※肩甲骨の動きは以下の記事も参考になると思う。

⇒『肩甲骨のモビライゼーションで可動性を高めよう

 

っということは、「加齢に伴う退行変性」や「脊椎圧迫骨折」によって胸郭を形成する胸椎にアライメント異常がおこれば、胸郭に沿って動く肩甲骨の運動(肩甲胸郭関節の動き)にも影響を与えることを意味し、更には肩関節の運動範囲にも影響を与えることを意味する。

 

 

肩甲上腕リズム:

実際の肩関節の運動は、肩甲上腕関節のみで起こることはほとんどなく、上肢帯と上腕骨の複合的な動きである。

 

例えば肩関節の外転に関して、上腕骨外転90°では、「30°が肩甲骨の上方回旋」「60°が肩関節(肩甲上腕関節)の外転角度」と言われている。

 

※この比率は(外転運動時においては)ほぼ1:2と一定に保たれているという人もいるが、さまざまな議論がある。

 

このような肩甲骨と上腕骨間の連携した動きを『肩甲上腕リズム』と呼び、詳しくは以下も参照してみてほしい。

 

⇒『肩甲上腕リズムは嘘?本当?

 

 

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肩峰下滑液包

 

滑液包は運動の円滑化にはたらく袋状構造で筋の停止腱付近(動きの大きい部位)にみられる。

 

肩関節周囲では、僧帽筋、大円筋、広背筋、肩甲下筋などの停止腱の下にみられるが代表的なものとしては以下などがある。

 

  • 肩峰下滑液包
  • 三角筋下滑液包
  • 烏口下滑液 包

・・・・・・・・・など。

 

以下は肩関節周囲を腹側(前面)から見たイラストとなる。

①上腕二頭筋長頭腱滑液包

②三角筋下滑液包

③肩甲下滑液包

④肩峰下滑液包

⑤肩峰上滑上包

⑥烏口上滑液包

⑦烏口下滑液包

⑧内上角滑液包

 

 

肩峰下滑包について

 

以下は肩峰下滑液包のイラストとなる。

赤の点が肩峰下滑液包となる。

 

 

  • 肩峰下包は肩峰下関節の棘上筋腱上にある滑液包で、しばしば三角筋下包と連絡する。

 

  • 肩峰下滑液包は、上肢の運動(肩関節の屈曲・外転・伸展など)によって棘上筋腱や上腕二頭筋腱が(前述した)第2肩関節を通過(滑走)するのを円滑にしてくれる。

 

 

  • 老化や過度の運動によって炎症を生じることがある(肩峰下滑液包炎、三角筋下包炎)。

    でもって、棘上筋腱などの腱板に石灰化(石灰沈着性肩関節周囲炎)も合併して、激しい痛みを伴うことがある。

    上記な場合、X線検査では滑液包内や腱板に石灰化像を認める。

 

 

肩甲上腕関節を補強する様々な靭帯

 

肩関節周囲には、安定性を補強するための様々な靭帯が存在し、具体的には以下などが挙げられる。

 

烏口上腕靭帯(CHL: coracohumeral ligament)

  • 解剖:

    関節包の頭・腹側に存在し、肩甲上腕関節を支える靭帯の中で一番強靭な靭帯である。

  • 機能:

    関節包を厚くし、安静時に正常に保つ。

    上腕の懸垂作用はない(懸垂作用は棘上筋にある)。

    肩関節屈曲・伸展で制御に作用する。

 

 

関節上腕靭帯(GHL:glenohumeral ligament)

  • 解剖:

    関節包の腹側に存在(関節上腕靭帯の頭側に烏口上腕靭帯が位置する)。

  • 機能:

    肩関節外転・回旋の制動に作用する。

 

※関節上腕靭帯は以下の3つに細分類される

・上関節上腕靱帯(スーペリア⇒SGHL)

・中関節上腕靱帯(ミドルGHL⇒MGHL)

・下関節上腕靱帯(インフリールGHL⇒IGHL)

 

 

腱板筋群(ローテータカフ)

 

肩関節は球関節で自由度が高い一方で、関節窩が浅いので安定性は低い。

 

でもって、回旋筋腱板(ローテーターカフ)は、前述した靭帯とともに、肩関節の安定性を高めてくれている。

 

回旋筋腱板(rotator cuff)の構成筋群:

ローテーターカフは以下の4つで構成されている。

 

・棘上筋 :肩関節の外転や上腕骨の受動的支持

・棘下筋 :肩関節外旋に働く

・小円筋 :肩関節外旋に働く

・肩甲下筋:肩関節内旋に働く

 

 

ローテーターカフについては、以下の記事も参照してみてほしい。

 

⇒『ローテーターカフとは?構成筋群や役割を解説!

 

 

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