この記事では『肩甲挙筋(levator scapulae muscle)』について解説している。

 

ストレッチング方法も掲載しているので合わせて観覧してみてほしい。

 

肩甲挙筋の基本情報

 

肩甲挙筋の基本情報は以下になる。

 

起始

第1~4頸椎の横突起の後結節

 

停止

肩甲骨の上角と内側縁の上部

肩甲挙筋の筋腹は胸鎖乳突筋と僧帽筋の深層に位置しているが、外側方からみると僧帽筋の下行部の前縁と胸鎖乳突筋の鎖骨頭の後縁との間で、他の筋腹に覆われていない領域がある。
 

作用

肩甲骨の挙上

肩甲挙筋とその共同筋である上部僧帽筋は、「強い肩甲骨挙上筋」という点では上部僧帽筋と同じであるが「肩甲骨の下方回旋に働く」とう点が異なる(僧帽筋は上方回旋)。この点は、ストレッチング時にも考慮する。
肩甲骨を固定すると頚板状筋を補助する作用が働く。

 

神経

頚神経叢の筋枝

肩甲背神経(C2-5)

 

筋連結

頚板状筋・前鋸筋・小菱形筋・前頭直筋と連結。

肩甲骨の上角の部位で肩甲挙筋を触診すると圧痛点が発見されることが多い。

 

 

肩甲挙筋のストレッチング

 

肩甲挙筋のストレッチング方法は以下になる。

 

「右」肩甲挙筋の場合

  1. 患者は頭頸部を屈曲・左側屈・左回旋させたポジショニングとする(側屈を出すため枕は外す)。
  2. 更に、上肢を屈曲・外転させる(これにより、肩甲骨を上方回旋位にすることができる。さらに、セラピストが停止部である肩甲骨を把持して、可動しやすくなる)
  3. セラピストは、患者の頭側へ位置する。
  4. セラピストは、右手の第5MP関節部を肩甲骨上角へ置き、左手は前腕部で患者の(屈曲・外転している)上腕を支えながら肩甲骨の外側へ置く。
  5. セラピストは右手の第5MP関節部で、患者の肩甲骨外角を尾・外側へと可動させる。

 

 

肩甲挙筋ストレッチング(背臥位パターン)

 

念のため、「背臥位」での肩甲挙筋のストレッチングも記載しておく。

 

「右」肩甲挙筋の場合

  1. 患者の傍脊柱筋群をリラックスさせるために股関節・膝関節屈曲位の背臥位とする。
  2. セラピストは治療台の頭側で立位か座位をとり、患者に向かう。
  3. (上部僧帽筋の筋の長さテストと同じ方法で)患者の頭部の位置を合わせる。
  4. 患者の頸部を屈曲・左側屈・左回旋位を、セラピストの左手で支える。更に患者に右手を挙上させることで、肩甲骨を上方回旋させる。
  5. セラピストは左手で頭頸部を固定した状態で、右手肩甲骨上角を尾側かつ外方へ抵抗を加える。
  6. セラピストは抵抗の質に注意し左右の抵抗を比較する。

 

1~3までは僧帽筋のストレッチングと同じ。違いは「頭部を治療筋側へ向ける点」と「肩甲骨の可動方向」となる。

 

肩甲骨挙上筋(僧帽筋上部線維・肩甲挙筋)は肩甲骨を下制することでストレッチングが可能なため、僧帽筋上部線維とセットで背臥位で実施することも多く、背臥位で実践しやすい。

 

ただし、肩甲挙筋にフォーカスした選択的ストレッチングを実施したいのであれば、肩甲骨の操作が容易な「側臥位」でのストレッチングがオススメである。

 

僧帽筋上部線維のストレッチングは以下の記事で解説しているので、合わせて観覧してみてほしい。

 

⇒『僧帽筋とは?ストレッチングや筋力トレーニングも含めて解説(マッスルインバランス)