この記事では『大胸筋(pectoralis major muscle)』について解説している。

 

各線維別のストレッチング方法も紹介するので、ぜひ観覧してみてほしい。

 

目次

閉じる

大胸筋の基本情報

 

大胸筋の基本情報は以下になる。

 

起始

  • 鎖骨部⇒鎖骨の内側1/2の前面
  • 胸肋部⇒胸骨と第2~第6肋軟骨の前面
  • 腹部⇒腹直筋鞘の前層

 

停止

上腕骨の大結節稜

走行と位置関係

腹部の筋線維は下から上へ垂直方向に走り、胸肋部と鎖骨部の筋線維は水平方向に配列する。

 

作用

肩関節の内転・内旋

鎖骨部と胸肋部の両筋束が収縮すると、肩関節の内転と内旋が生じる。

鎖骨部は伸展した上肢を屈曲し、胸肋部は屈曲した上肢を伸展する。

懸垂では、胸郭を“固定”された腕に近づける作用がある。

 

神経支配

内側胸筋神経・外側胸筋神経(C5-T1)

 

筋連結

胸鎖乳突筋、三角筋、腹直筋、胸骨筋、外腹斜筋、内肋間筋、広頚筋と連結。

 

 

大胸筋の筋長検査

 

大胸筋の短縮は、以下のように「鎖骨部・胸肋部・腹部線維」に分けて実施できる。

 

※これを、後述するストレッチングにも応用する。

 

足を伸ばす(股関節を屈曲しない)ことで、(膝立て位と比べて)肩関節の挙上角度が減少した場合は、大胸筋腹部線維と連結する外腹斜筋の短縮があることを示す。

 

 

大胸筋のストレッチング

 

患者肢位

治療台の端にテスト側の肩甲上腕関節が位置するように背臥位となる。

 

セラピスト肢位

セラピストはテストする肩のそばに立ち、患者に向かって歩行肢位。

ストレッチ中に胸郭を固定するために患者の胸骨上に手を置く。

 

 

ストレッチの方法

大胸筋は各線維ごとに別々にストレッチをする。

肩関節外転の角度を変えることで特定の線維を対象とすることができる。

 

腹部線維

セラピストは患者の肩関節をエンドフィールを感じるまで屈曲・外転・外旋させる(目安としては150°外転)。

患者の前腕を、自らの上肢と体幹で挟んで保持し、内側から上腕遠位部を把持する。セラピストは後方へ体重移動することにより、さらに屈曲・外転・外旋を加える。

PIR実施後に、更に伸張する。

 

胸肋部線維

セラピストは患者の肩関節を90°外転・外旋させる。そこから更に水平伸外転・外旋させる。

胸肋部線維の正常な長さは目易は、患者の上肢が水平位より下で静止すること。

PIR実施後に、更に伸張する。

 

鎖骨部線維

治療者は患者の肩関節を身体の近くで伸展位とし、静止するまで下げる。

鎖骨部線維の正常な長さの目安は、患者の上肢が水平位より下で静止すること。

PIR実施後に、更に伸張する。