- 誰か
「1年の中でどの季節が一番好きですか?」
- 私
「秋ですかね。気温が丁度良くて過ごしやすいですし。」
- 誰か
「だったら春も同じじゃないですか?」
- 私
「確かに。でも春は出会いと別れの季節って言いますよね?春の暖かさ、香りを感じるたびに何故だか切なくなっちゃうから嫌なんです。」
これは日常で私がよく患者さんとする会話。そして春がやってきた。
今日は夕方まで部屋でボーっと過ごした。
夕方になって起きて玄関に出てみたら、もう辺りは薄暗くなっていた。
駐車場で腰を降ろすと、春独特の良い香りが漂ってきて意味も無く切なくなった。
1週間前からアパート近辺に棲みついたノラ犬が田んぼから寄ってきた。
追い払おうとしても頭を押し付けてくるので、一緒にボーっと田んぼを眺めた。
二年前、「実家にいつまでも居座っていたら成長できない」と一人暮らしを始めた。
炊事・洗濯・掃除が一人で出来るようになった。ガス・水道・電気・家賃・・・今まで親に払ってきてもらったが、自分で払ってつくづく親の有り難味が実感できた。
つまり、自分は成長できたのか・・・・?
こっちに来た当初、「何で縁もゆかりも無いこの土地に来ようと思ったの?」と、よく病院のスタッフに聞かれた。
私は「誰も知らない土地で頑張ってみたかったからです」と答えていた。
そして、「私の尊敬していた人が一人で地元を離れて頑張っていたのを見て自分もその人みたいになりたいって思ったからです」と付け加えたこともあった。
つまり、自分はその人みたいになれたのか・・・・・?
分からない・・・。答えは見つからない・・・。でも、たまにこうやって自分を振り返ってみることも良いと思った。
とにかく一日、一日を大切に生きてみよう。
明日も玄関のドアを開けると、鳥のさえずり・暖かい朝日が出迎えてくれることだろう。
そして、春の香りが包んでくれることだろう。
「行ってきます」
そう言って、一瞬の切なさを胸に、明日も一日へ出発するのだ。