2回目の実習地は地元から遠く離れた場所でした。初めての一人暮らしを体験することとなり、それも新鮮でした。

 

ここでの一人暮らしの体験が、後に実家から離れた場所で暮らしてみようと思うきっかけとなりました。

 

2度目の実習先のトップの先生は臨床経験30年以上の大ベテランで、いつも口癖のように「回復期の段階で改善が見られても、自然回復の可能性があるから治療効果を立証できない。本当に自分の治療を立証しようと思うなら維持期で関わるべき」とおっしゃっていました。その先生がいる時は1回目の実習地のような和気あいあいとした雰囲気はなくいつもピリピリしていて先生がギャグを言ったら面白くなくても笑わなければならないのが辛かったです。

 

実際の片麻痺リハは非常に特殊で、その後PTジャーナルにも特集記事の一つとして取り上げられたほどで、今まで見たことのないようなアプローチをされていました(場所がバレるので具体的には書きませんが)。その他に、この先生はリハビリに関する機械を開発したり、慢性的整形疾患に対しても筋への押圧を利用した手技(マイオセラピーのようなものですが)を自ら考案していました。

 

ここでの体験は「リハビリって結果が出せるのであれば、マニュアルなんて存在しない。自分も型にはまらないリハビリがしたい」と思う大きなきっかけになりました。

 

維持期でありながら、中枢・整形疾患ともに結果をしっかりと出していて素晴らしいと感じました。

 

 

実習を終えて、衝撃の展開へ

 

実習中、一人暮らしをしていた学生同士で休みの日は飲みに行ったり、バーベキューをしたりと知らない土地を満喫もできました。実習直前・中盤に当時の彼女も遊びに来てくれて一緒に観光をしたのも良い思い出です。

 

ですが、実習終了の2日前の夜に事件が起きました。その時の彼女から別れを切り出されたのです。実習中に寂しくなって会社の同僚と遊びに行って、相手の男を好きになってしまったとのことでした。楽しい出来事や実習終了を目前にしての解放感も吹き飛びました。

 

次の日は、この病院が開催する勉強会のため全国各地から片麻痺治療に対する新しい考え方を学ぼうと先生方が集まってきました。

私もこの日を楽しみにしていたのですが、残念ながらその日のことをあまり覚えていません。

とにかく、頭の中が真っ白で放心状態なのを他の学生・先生方に悟られまいといっぱいいっぱいだったことだけ覚えています。

 

別れを切り出される1か月前にその時の彼女が遊びに来てくれて「寂しいけど、地元で帰りを待ってるからね」と名残惜しそうに電車から手を振ってくれていたのを思い出します・・・・あの時は確かにラブラブだったはずなのに・・・

 

この実習で、「男女の関係なんて一寸先は闇」というのも学べた気がします。

 

書いてて少し気持ちが暗くなりましたが、今では新しい彼女もできていますし良い思い出(のはず)です。

 

実習終了後、借りていた部屋を畳んで実家に戻る準備をしました。

 

約2か月と短い期間でしたが、ここでレポート徹夜したり、実習生同士で馬鹿話したりと思い出がつまった部屋でした。

 

もちろん彼女と楽しく過ごした思い出もあります。一緒に料理を作りながら「同棲しているみたいだね」と笑いながら話したりもしました。

 

電話で長時間話し合いましたが、別れると決意が固まっている彼女の声のトーンは以前の面影はなく冷ややかでした。さっぱりと片付いた部屋を玄関から眺めれば、この部屋で料理を作ったり、笑い転げたり、ゲームをしていた2人の残像が次々と出てきました。「地元に帰っても、もうこの時の彼女はいない」と思うと、もう少しこの見知らぬ土地で良い思い出にふけっていたい衝動に駆られました。

 

地元に帰ってすぐに彼女へ会いにいきました。私としては無理とは思いながらも、久々に会うことで彼女が自分のことを改めて思い直してくれるのではないかと考えたからです。

 

会うと彼女に「ちゃんと別れるために会いにきた。今の彼にも会うための許可はもらった。今の彼にちゃんと終わらせるよう頑張ってくるんだよ言われた。私のことは忘れてほしい。これから一緒に同じ道を歩んではいけないけれど、きっとカーは幸せになれる」と台本を朗読するかのようにスラスラと言われました。

 

彼女に言われた内容に関しては「やっぱ別れること前提か・・・まだ付き合って数日の男に許可もらわなくても・・・頑張ってくるんだよって人の彼女奪っておいてあなた何様なんですか?・・っていうか男に許可もらったとか頑張ってって言われたとか馬鹿正直に伝えなくても・・こんな急に別れ切り出しておいて幸せになれるってなんちゅー無責任な・・」と心の中で色々考えてしまうほど突っ込みどころ満載でした。

 

笑顔の似合う思いやりのある優しい子だったのに・・・・

 

あまりの声のトーンの変わりよう・話の内容・表情の硬さに、「え?人違い」と思わず疑ってしまうような変貌ぶりでした。改めて「もうここにおれの知っている彼女はいない」と思いました。

 

 

別れを切り出すまでの、彼女の経緯

 

彼女が別れを切り出すまでの経緯を教えてくれました。

 

私の実習地まで会いに来てくれた後、もう1か月も会えないことに落胆したそうです。

 

そんな時、職場の同僚であった男から映画に誘われたそうです。男は遊び人風らしく毎日いろんな女性を誘っていたもののいつも断られていたそうです。彼女も男には何度か遊びに誘われて断っていたそうなのですが、このときは暇だからということで映画に行ったそうです。

 

映画は思いのほか楽しく、その後も食事をしながら映画の話で盛り上がったそうです。その後日からは頻回に遊びに誘われるようになり、その都度一緒に遊んだそうです。彼女の好きなゲームセンターに行くことが多かったそうです。

 

ある遊びの帰り道。一緒に歩いていると男が急に手をつないできたそうです。ですが、その時彼女は男のことを悪い気がしなかったから振りほどかなかったそうです。

 

すると今度は暗い路地に入っていき、急にキスをされそうになったそうです。その時も彼女は男のことを悪い気がしなかったから避けなかったそうです。

 

そしてその後も何度か遊んだそうです。

 

そろそろ私の実習が終わりに近付いてきた頃、男は車の助手席に乗せた彼女に向ってこうつぶやきました。「もうすぐ彼氏が帰ってくるから会えなくなるね」と。すると彼女は「そんなの嫌だ」と答えたそうです。男は「でもこのままの関係は良くないからどちらかを選ばなきゃ。どちらを選ぶかは任せるよ」と続けたそうです。

 

彼女は「分かった」と答え、私と別れることを決めたそうです。

 

・・・以上が彼女から教えてもらった経緯です。

 

話を聞いている途中に、男と仲良くなっていく経緯を聞いたことを後悔しました。

 

車の中での会話から、男は彼女の心が完全に自分にあることを確信していると思えました。なので、あえて自分から「会えなくなるのは寂しい」「彼氏と別れて自分と付き合ってくれ」という必要はなかったのでしょう。あるいは、これらのことを口に出して言うほど彼女を好きではなかったのかもしれません。これらのことを自分から口にして責任を取りるのが面倒くさかったのかもしれません。私の彼女に対する思いが強かっただけに、相手の男は余裕で自分は必死になっているという図式がこの時分かり何ともやりきれない思いになりました。

 

そして、男に彼氏と別れるよう迫られたわけでもなく選択をゆだねられた上でこの結論を出した彼女に対しては・・・うまくその時の感情を表現できません・・・

 

そして、3年間続いた私たちの関係にピリオドが打たれました。

 

 

全ての実習を終えて

 

少し学生時代の私のことを書きます。

 

私の両親は共に学校の教員で、親へなにかをしてあげたいと思ったことのないボンボンでした。

 

生活においても親に頼りっぱなしであったにも関わらず感謝したことなどほとんどありませんでした。

家事の手伝いなど皿洗い程度で、よく母親に「洗濯して畳んであげた靴下を早く部屋へ持っていきなさい!」と叱られたものです。

 

高校を卒業して理学療法の専門学校へ入って勉強をがんばってはいましたが、仕事をしている彼女ほど心身ともに大変なはずはありません。

しかし、当時はあまりそのことが認識できていなかったように思います。

 

学生時代は、お金欲しさと病院業務の勉強になればと週末病院で夜勤介護の仕事を2年半続けました。

また、長期休みは理学療法の補助をしたりしてました。

彼女にもっと金銭的に色々してあげれたにも関わらず、誕生日やクリスマスなどのイベントで彼女にサプライズする以外は彼女に頼りっぱなしでした。

稼いだお金は勉強や友人との遊び、バイクの購入資金につぎ込みました。

 

少し彼女のことを書きます。

 

彼女は高校を卒業してすぐに地元を離れて、大手の会社に就職して一人暮らしを始めました。

 

朝は早くから夜遅くまで工場で働いていました。2年目からは夜勤にも入るようになりました。

 

入社してからの2年間は親へ仕送りを多めにしてあげたいからと2人部屋の女子寮に入って生活をしていました。

 

「私は社会人でお金があるから」と、遊ぶときはよくおごってくれていました。

 

私は彼女の仕事内容や人間関係に関してたまに悩みを相談されました。ですが、自分のこと以上に私の学業を理解・応援してくれ、支えになろうとしてくれていました。

 

現在私は地元から離れて働いていますが、初めの1年間は孤独感をよく抱いていました。新しい彼女はいるものの、当たり前のように身近にいた親や友人がいません。週末は新しい彼女しか遊ぶ相手がいないわけですが、彼女には私と遊ぶ以外にも色々と用事があるようです。学生時代の私のように・・・・

 

地元を離れて彼女も孤独だったのではないかと思います。しかし、自分の孤独を主張せずに、私を支えてくれていたんだなぁと今つくづく思います。

 

仕事の同僚といういつでも会える身近な存在に惹かれた時、彼女はとても大きな安心感を感じたのではないでしょうか。 

 

私に会いに実習地へ来てくれた時も、私を愛してくれてはいましたが心のどこかに「もっと幸せになりたい」という思いがあったんだと思います。

 

相手の男は彼女に対してどの程度の思いがあったのかは分かりませんが、どうか彼女を幸せにしてあげてほしいと思います。

 

彼女は初めて付き合った相手が私だったそうです。私は彼女に喜んでもらいたくて、いろいろな場所へ連れて行きったり、いろいろなサプライズをしたのを覚えています。その都度彼女は眼を輝かせて喜んでくれました。そして、銀行ATMの使い方すら知らなかった世間知らずの彼女が、いろいろな体験を通して、いつしか私にとって心強くかけがえのないパートナーになっていました。

 

最後に会った時、私は彼女に「○○は俺と付き合って得るものが沢山あって良かっただろうけど、俺は裏切られて傷ついただけで何も得るものがなかった!損をした!」と言ってしまいました。辛くて悲しくて最低の言葉が出てしまいました。

 

今振り返ってみると、私は彼女と付き合えてとても多くのものを得ることができたと思います。そして、彼女のような優しく思いやりのある人間になりたいと思っています。彼女という支えがなければ学校を無事に卒業できていたかも分りません。私は彼女という尊敬できる人に出会えたことをとても感謝しています。

 

最終的には、幸せになろうとお互いを称えて別れました。今彼女が幸せであることを祈ります。

 

 

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