この記事では、神経ダイナミックテストの一つであり、神経系モビライゼーションにも応用される「ULNT2a」について記載していく。
ULNT2aの適応
正中神経領域の症状(特に肩甲骨下制により症状が出現する場合)
ULNT2aの手順
ULNT2aの手順(テスト側が右と仮定して記載)を以下に記載していく。
- 開始肢位
患者は背臥位脊柱を中間位にして、頭を治療台の右側の端へ寄せ、肩甲骨を台から出すようにして少し斜めに横たわる。
患者の肩関節を約10°外転する(上肢が治療台と平行になるようにする)。
枕は通常用いない(用いる必要のある時は、再評価時も同じ枕を用いるなどで、頭頸部のアライメントを統一させる)
PTはベッド側を向き、自身の左大腿の内側が患者の右肩に位置するように立つ。
PTは左手で患者右肘を下から支え、右手で患者右手首を把持することで患者の右肘を屈曲位に保持する。
- 右肩甲帯の下制
PTの大腿で患者の肩甲帯を注意深く下制(+/-前方突出・後退)する。
患者の肩関節を約10°外転し、上肢が台の端と平行になるようにする。
PTの左大腿で患者の右肩甲帯を注意深く下制(+/-前方突出・後退)する。→痛くないか聞く
※これは神経・筋の緩みを取るのが目的なため、伸張させるほどの力は加えなくて良い。
下制させた状態が少しでも戻ってしまうと以降の評価に影響を及ぼすため、以降の評価時も常にPTの左大腿を肩甲骨下制方向に固定するよう押し当てておく。
- 右肘を伸展
PTは把持していた患者の右手首を操作することで、右肘関節を伸展させる。
- 肩関節外旋+前腕回外
患者の上肢全体を外旋する(肩関節外旋・前腕は回外)。
- 手関節・手指の伸展
PTは④の操作の最後のほうで、自身の右手を患者の手掌へ滑らせ、
PTの母指を患者の母指との間の水かき部分に滑り込ませ、患者の手関節・手指・母指を伸展させる。
- 肩関節を外転
手順①~④の運動要素で情報が得られた場合は、肩関節外転は必要無し。
- 組織鑑別:
近位症状:手関節・手指の解放
遠位症状:肩甲骨下制の解放
感作運動:頸椎の対側側屈
ULNT2aの正常反応
- ULNT1と同様。
- 肩甲骨下制を解放することにより症状が軽減することが多い。
- 関節可動域:肘関節伸展0°、肩関節外転0°~50°
- 備考:正中神経のほか、下位頸椎神経根、脊髄神経、腕神経叢にも動きがみられる。
正中神経に対するテストであるULNT1とULNT2aの使い分け
①患者の問題となる動作に近い検査を用いる
②ULNT2aは肩甲上腕関節を外転せずに、神経系を検査することができるので、外転が禁忌あるいは困難なケースで使用可能
例えば①に関して、「高い場所の物をとろうとする際に痛みが生じる(肩関節屈曲・外転・外旋を伴う動作で疼痛が生じる)」といった際にはULNT1を使用する。
例えば②に関して、肩関節領域の手術(関節形成術、乳房切除術、脱臼)不安定性、関節包炎に対しても用いることができる。
正中神経(ULNT1・ULNT2a)に対するセルフモビライゼーションには以下のような方法がある。
以下はULNT2aのセルフモビライゼーション。
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