この記事では『腰方形筋(quadratus lumborum)』について解説している。
腰方形筋の基本情報
腰方形形筋の基本情報は以下になる。
起始
腸骨稜の後面
停止
第12肋骨の下縁、T12横突起、L1-4肋骨突起
作用
片側が働くと
①骨盤の挙上(胸郭が固定されている場合)
②腰部を同側へ側屈(骨盤が固定されている場合)
両側が働くと(腰椎が前彎位にあれば)腰部の伸展
第12肋骨を固定させる機能があるので横隔膜の収縮を助けている。
内側線維:第1-4腰椎に停止⇒体幹伸展や体幹側屈に作用
外側線維:第12肋骨に停止⇒骨盤挙上や体幹側屈に作用
神経
腰神経叢の筋枝(T12-L3)
筋連結
大腰筋(腱膜)・横隔膜(腱)・腹斜筋(筋膜)・内腹斜筋(筋膜)・腹横筋(筋膜)・腸肋筋(筋膜)・最長筋(筋膜)・外腹斜筋(筋膜)・内腹斜筋(筋膜)・腹横筋(筋膜)と連結。
腰方形筋の位置を動画で確認
腰方形筋の走行と位置関係は以下の通り。
- 腰方形筋の後面は、腹横筋と内腹斜筋の腱膜の胸腰筋膜深部におおわれている。
- 前面は腎臓と大腸に接している。
- 大腰筋は腰方形筋の内側縁にすべりこんでいる。
- 腰方形筋は深層の背筋によって外側からおおわれ、下方部分は広背筋の骨盤部にもおおわれている。
でもって、以下の動画は身体にペイントしつつ腰方形筋を表現している。
重層的にペイントされているので腰方形筋の位置が理解しやすい。
腰方形筋の触診
腰方形筋の触診方法は以下になる。
- 患者は背臥位
- 第12肋骨の後面をみつけ、脊柱起立筋外側縁に達するまで指を肋骨に沿って動かす(腰方形筋は肋骨後面下弓と後腸骨稜の間で脊柱起立筋外側に位置する深部筋である)。
- 手指を腰方形筋にゆっくりと沈み込ませ軟部組織の状態を評価する(患者の反応には注意する)。
腰方形筋は過緊張になり易いため、トリガーポイントを発見することがある。
※治療として、マイオセラピーへ移行することも在り得る。
腰痛と腰方形筋(+収縮後弛緩テクニック)
腰痛患者の中には、腰方形筋が過緊張であり、この過緊張を取り除くことが腰痛緩和につながることがある。
そんな腰方形筋の機能障害を判断するための一つの指標として「股関節外転運動」を消化していみる。
股関節外転は、主に股関節外転筋群(すなわち中殿筋と小殿筋)と大腿筋膜張筋によって行われ、共同的活動や安定化が腰方形筋や腹筋群深部の内在体幹伸筋群によって行われる。
でもって中殿筋や小殿筋が弱化もしくは抑制されると、大腿筋膜張筋か腰方形筋が主動作筋になることで補う。
もっとかみ砕いてポイントとなる所見を記載すると以下になる。
したがって、硬い腰方形筋は腰痛の隠れた原因となることがある。
この様な例では、股関節外転筋群(中殿筋・小殿筋)の筋力増強を図ることが重要となる。
また、腰方形筋自体が「痛みの悪循環」にハマっている可能性も考慮して、合わせて(後述するストレッチング)や収縮後弛緩テクニックを実施すると良い。
収縮後弛緩テクニックとしては、例えば以下などの方法がある。
- 背臥位で(非腰痛側)の骨盤を引き上げた状態が基本肢位。
- そこから、反対側(腰痛側)の骨盤を引き下げる(5秒間挙上位で収縮し続ける)。
- 元に戻してリラックス。
- 繰り返す。
腰方形筋のストレッチング
腰方形筋のストレッチングは、起始・停止から考えて「体幹の対側側屈により伸長される」という点がポイントになる。
例えば、以下の動画はストレッチングの一つのアイデアと言える。
個人的には、セルフストレッチングが可能であれば以下の方法をお勧めする。
これは「大腿筋膜張筋のストレッチング」なのだが、「起始部である骨盤」が尾側へ固定された状態で、側屈により「腰椎横突起や12肋骨を引き離す方向へ伸張してる」ということになる。
イラストは、左腸腰筋をストレッチしているということになる。
更に、体幹を右側屈させることで起始部を停止部から引き離すことで、伸長刺激を増やす。
ポイントは股関節を軸にして「くの字」に体を折った状態で、重力に任せて下に落ちていくイメージ。
重複するが、このイラストは大腿筋膜張筋のストレッチングを示しているのだが(腰方形筋の起始部である)骨盤が固定された状態で(停止部である)肋骨が離れていくため十分なストレッチング効果が得られる。
このストレッチングの良い点は以下の通り。
- 重力を利用しているので力を抜きやすい
- 立位で実施可能なため簡便。腰方形筋が短縮している腰痛患者などでも定期的に実施できて予防に活かせる
- 腰方形筋のみならず筋膜も考慮して全身へのリリースを試みたほうが効率的
多くの人が腰方形筋の伸長感を得ることが出来るので、ぜひ試してみてほしい。
身体の側方筋膜のリリースも体感してみてほしい。