この記事では、医療・介護従事者が感染しやすい『疥癬(かいせん)』の基礎知識を記載していく。

 

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疥癬の基礎知識

 

疥癬は『疥癬虫(ヒゼンダニ)』という虫に感染することによって起こる。

 

感染経路は『接触感染』である。

 

つまり、「疥癬を有した人の肌」から肌への直接接触はもちろんのこと、衣類やシーツを介すことによっても疥癬が起こる可能性がある

 

潜伏期間は4~6週間(ノルウェー疥癬の場合は4~日でも起こる)とされている。

 

ノルウェー疥癬とは:

 

ノルウェー疥癬は『角化型疥癬』とも呼ばれる。

ヒゼンダニの寄生数が100万~200万と多いため、感染力も強く症状も強い(かゆみがないこともある)。

免疫力が低下している人に起こり易い。

 

以下は『図解 訪問理学療法技術ガイド』より引用。

 

疥癬はヒゼンダニが皮膚の角質層に寄生して1~2カ月の潜伏期間を経て発症する疾患である。

 

疥癬は「通常疥癬」と「角化型疥癬」に分けられ、訪問理学療法の現場で問題になるのは、感染力の強い角化型疥癬である。

 

通常疥癬に対しては特別な予防策を講じる必要はなく、標準予防策を行うことで対応が可能である。

 

一方、角化型疥癬に感染している場合には、標準的予防策に加えて接触感染予防策を行う必要がある。

 

『標準的予防対策』や『接触感染予防対策』に関しては『医療介護従事者が知っておくべき感染症の基礎知識まとめ』を参照。

 

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疥癬の症状

 

疥癬の症状は『激しい痒み(夜間に強い傾向)』と『皮膚症状』である。

 

でもって、皮膚症状の具体例は以下の通り。

 

  • 小さな丘疹(赤色)
  • 小豆大のしこり(赤褐色)
  • 疥癬トンネル(腋窩、股に好発。疥癬トンネルは手首・手のひら・指の間、指の側面に多い)

 

 

個人的にも疥癬に感染したことがある

 

私自身、疥癬に感染したことがある。

 

かなり昔の事なので、覚えていることは少ないのだが、皮膚科で薬を処方(飲み薬、塗り薬など、どんな薬を処方してもらったかも忘れたが)してもらったことは覚えている。

 

また、症状として「手が無性に痒くなり、指と指の間に赤く小さなブツブツが出来て、そのブツブツを目を凝らして観察すると極小な穴らしきもの開いていた(疥癬トンネル)」のを覚えている。

 

疥癬を有しているとの情報を有した患者と接触した記憶も無いので、いつどこで感染したかも分からなかった(急に痒くなり、疥癬だと診断された)。

 

ん~、あんまり参考にならない情報だったな。。。

 

 

疥癬に感染した人を発見した時の対処法

 

疥癬に感染した(あるいは可能性のある人)を発見した際は、皮膚科を受診してもらう。

 

※痒みや皮疹のある患者、更には「疥癬トンネル」を有しているかは一つの目安となり得る。

 

疥癬の効果的治療後24時間が経過すると感染力が無くなるとされている。

なので、疥癬と診断され、治療を受けた患者の肌に触れても医療従事者が感染する可能性は低い。

 

※治療継続1週間で感染率0%になるが、1週間経たなくても感染力はどんどん低下していくので感染の可能性は低い。

 

※一週間経過後も体内に卵が潜伏している可能性があるため治療は継続するが、治療中で感染力はない)。

 

※臨床症状の発現には感染してから1~2カ月間の潜伏期があるため数カ月間は再発生に注意する必要がある。

 

 

疥癬予防に関するケア上の注意点

 

疥癬予防に関するケア上の注意点は以下の通り。

 

  • 入浴:

    入浴の順は不問。タオル、足ふきなどの共用はやめる

 

  • シーツの交換:

    治療開始後1回交換、あとは通常通り、寝具は共用しない

 

  • 衣類の交換:

    治療開始後1回、入浴後1回、あとは通常通り

 

  • 洗濯など:

    ヒゼンダニは乾燥に弱く、人体を離れると速やかに感染力を失うので、洗濯は通常通りで可。

 

  • レクなど:

    皮膚の接触や一緒に寝たりしなければ感染しないので、参加して良い。ただし、長い間手をつなぐなどはしないこと。

 

 

その他で言われていること。

 

  • 体から離れた場合2~3日で死滅
  • 短時間の移乗介助などで感染することはまれ
  • 犬猫などの体表で増えることは無い
  • 掃除は通常通りで可
  • 感染者の業務⇒正しい治療なら約1週間で感染力も無くなるので復職しても可(痒みがあっても感染力が無ければ復職して可)。

 

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疥癬発生時のリネン・マットレス・布団などの処置は?

 

疥癬は、肌に触れることによる直接感染以外にも、リネン類などを介した接触感染も起こり得ることは前述したとおりである。

 

そのため、患者の治療をするのと並行して、リネン類の処理法を確実に行うことであり、その際には手袋プラスチックエプロン等を使用する。

 

※特に治療前の疥癬患者と濃厚な接触、衣類の処理、寝具の共用を行ったものは感染の可

能性が高く、医師の診断により予防的治療を行うことが必要となる。

 

疥癬に関して分かっていることは以下の通り。

 

宿主を離れた疥癬虫は乾燥に弱く、温度12℃・湿度90%の好条件でも2週間しか生きられない。

熱に弱く50℃10分間で死滅する。

卵は乾燥状況でも1週間は感染性がある。

 

それを踏まえたうえで、これらの条件を満たす処理を個々の処理対象物に対して各施設の実情に合わせて行う。

 

布団シーツ1枚なら、何℃、何分で処理するなどという指針を個別に表示することは事実上不可能である。

※フェノトリンペルメトリン等の殺虫剤の散布は不要。

 

 

デイケアやショートステイでの疥癬予防対策は?

 

疥癬の集団発生において重要な点は、発症者の診断が遅れることにより、多くの人に感染させてしまうことである。

 

そのため早期診断・早期治療が重要であり、普段から皮疹・痒みのある患者は早めに皮膚科専門医の診察が受けられるような環境を作っておく。

 

利用者が疥癬と診断された場合、疥癬患者と濃厚な接触、衣類の処理、寝具の共用を行ったものは感染の可能性が高く、医師の診断により予防的治療を行うことが必要であるため、該当者に広く通知する。

 

疥癬は効果的治療後24時間で感染力がなくなることから、皮層科医が疥癬と診断し、効果的治療を開始した患者に関して、それらの施設であまり神経質になりすぎる必要はない。

 

手袋・プラスチックエプロンを使用する(手袋・プラスチックエプロンは患者ごとに交換する)。

 

ケアの後、液体石けんと流水で手を洗うなど、標準予防策により対応することで十分である。

 

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