人間は加齢とともに、免疫力が低下してくる。

なので健康な人であれば問題ないような菌などでも、高齢者になると、ちょっとしたことで感染しやすくなる。

 

でもって、私たち医療・介護従事者が感染しないように防御することはもちろんのこと、菌やウィルスの媒介者にならないよう注意が必要となる。

 

患者・利用者に直接触れる機会が最も多い『手』を清潔にしておくことは大切であり、この記事では清潔にするために必要なな『手洗いの基礎知識』を解説している。

 

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手洗いの目的

 

効果的な手洗いは、手指から有機物(汚染物)と、病原体を取り除くことである。

でもって、その結果として以下の効果が期待できる。

 

  • 患者を医療従事者の手指を介した交差感染から守る。
  • 医療従事者を未同定の病原体から守る。

 

 

手洗いの種類

 

一般的に手洗いは次の2つに分類される。

  • 日常の手洗い
  • 衛生的手洗い

 

 

日常手洗い(social hand washing)

 

「液体石けんと流水による手洗い」のこと。

 

最も基本的であり、すべての手洗いはこれが原点となる。

汚れを落とす目的と通過菌を洗い流すことが目的で、以下などの日常業務全般にわたって実施する。

 

  • 出勤したとき
  • 食事をとるとき
  • トイレの後
  • 見た目に手が汚れているとき
  • 無菌操作を伴わない通常の診察や看護の前後
  • 一般清掃の後
  • 手袋の着用前後
  • その他(喫煙の後等)

 

 

衛生的手洗い(hygienic hand washing)

 

「消毒剤と流水による手洗い」のこと。

 

医療現場で無菌操作時やその他手指消毒を目的として行う手洗いである。

 

手が汚れている場合は消毒剤の使用前に、液体石けんと流水により汚れを十分に落とすことが原則である。

 

  • 患者と密接に接触する診察や処置の前後
  • カテーテル・IVH処理・気管内吸引・包帯交換・侵襲手術等の無菌操作を行う前後
  • 血液・体液・排泄物等で汚染された器具器械を取り扱った後
  • 汚れたリネンや感染症患者のリネンを取り扱った後
  • 清潔病室・隔離病室の入退出時

 

 

「日常手洗い」と「衛生手洗い」の違い一覧

 

「日常手洗い」と「衛生手洗い」の違いについて、一覧表を紹介しておく。

 

 

日常手洗い

衛生的手洗い

手洗い方法

流水と石けん

擦式消毒法

洗浄消毒法

洗浄消毒剤

界面活性剤

アルコール+消毒剤

(皮膚保護材含有)

界面活性剤+消毒剤

除菌又は殺菌機序

物理的に洗浄

消毒剤の殺菌効果

部地理的戦場と消毒剤による殺菌効果

汚れ・有機物の除去

可能

不可能

(洗浄効果なし)

可能

通過菌

物理的除去

殺菌作用

物理的除去と殺菌作用の両者

通過菌の手指からの除去・殺菌効果

15秒 1/10

30秒 1/100

60秒 1/1000

1/10000

1/100000

1/1000

1/10000

常在菌

除去されない

一部殺菌される

一部殺菌される

注意点

30秒以上の洗浄で、汚れも一過性菌も除去得着る。

水は温水が良い。

薬用せっけんでは手洗い後の常在菌の増加が抑えられる。

洗い残しがあると菌は残存(交叉感染の危険性)汚れは落ちない。

アルコールと他洗剤の併用によりアルコールの即効的な作用と他洗剤の残存効果が期待できる。

残存効果あり

~藤田直久:手洗いと手指消毒.INFECT CONTROL 2000;9:368-370より引用~

 

 

使用する『石けん』について

 

使用する『石けん』は「固形石けん」より「液体石けん」が望ましい。

 

液体石けんは容器に入っているので汚染が少ないという利点があるからだ。

 

ただし注意点として「継ぎ足し」は、容器が汚染されるため絶対禁忌となる。

使用後の容器に液体の詰め替えをしたいのであれば、容器を十分に洗浄後に乾燥させてから、新しい液体を入れるようにする。

 

※固形石けんは安価であるが、保管方法を誤ると様々な菌が増殖し、院内感染の温床となる。

 

※これは家庭でも同様であり、なるべく液体石けんを使用したほうが良い。どうしても固形石けんを使用したい場合は、その都度十分に乾燥できる環境にしておくこと。

 

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手洗いの方法

 

ここから先は、手洗いの方法について記載していく。

 

手洗いは「もみ洗い」が大切

 

手洗いが重要といっても、ただ「漫然と洗っておけば良い」というものではない。

でもって、手と手をこすり合わせる「もみ洗い」が基本となる。

 

きるだけ石けんを使って、手のひらだけでなく、指先や指の間、手首まで入念にこすり合わせて洗うことが重要だ。

 

これをきちんと行えば、ほとんどの菌はとり除ける。

 

医療・介護の前後にはかならず、実行しよう。

 

流水の設備がない場合、以下などで代用することもある。

  • 水を入れた洗面器に消毒剤を入れて洗う
  • 外出先などでは、速乾性のある消毒剤をすりこむ

・・・など(消毒剤については後述)。

 

 

手洗いでミスが発生しやすい部位

 

ちなみに、以下のイラストの部分が手洗いミスの発生しやすい部分となるので、特に注意した手洗いを心がけよう。

 

 

具体的な手洗いの方法

 

具体的な手洗いの方法は以下の通り。

 

手のひらを、よく擦る

 

 

 

手の甲も、よく擦る

 

 

 

 

 

指先も、念入りにこする

 

 

 

 

 

指の間も十分洗う

 

 

 

 

 

親指をねじり洗う

 

 

 

 

 

手首も、忘れずに洗う

 

 

 

 

 

 

手洗いを動画で確認したい方はこちらから

 

以下の動画は、タイトルが「ノロウィルス等の食中毒予防のための適切な手洗い」となっているが、すべてに通じる基本的な手洗いを紹介している。

 

※実際の手洗い場面だけ観覧したければ3分40秒から再生すればOK。

 

 

 

荒れた手には菌が付着しやすい

 

感染予防のためとばかりに何回も手を洗うと、皮膚損傷、いわゆる『手荒れ』が起こりやすくなる。

 

医療従事者は頻回に手洗いをする必要があるので、完全に手荒れを防止することはできないかもしれないが、以下などが手荒れ予防として言われている。

 

 

  • 自分に合う液体石けんを使用する(まぁ、院内で指定の石鹸を使用していると難しいが・・)。
  • 保湿剤(保湿クリームなど)の使用
  • 栄養
  • 休養

 

特に冬場は、夏場と比べて容易に手荒れを起こしやすいのでクリームを使用するなどで十分な保湿やケアをすることも大切となる。

 

保湿クリームを塗る手順は以下の通り。

  1. 手を洗う
  2. 手をペーパータオルでよく拭いて十分に乾かす。
  3. その後ハンドクリーム等の保湿剤を手に塗る。

 

ちなみに保湿クリームは、細菌汚染を防止するためにチューブ式な商品が望ましい。

相性があるので、万人にベストな保湿クリームは存在しないが、あくまで一般論としてアマゾンで圧倒的な支持を得ているハンドクリームは以下になる(チューブ式な点も◎)。

 

 

複数使用してみて、最終的に自身にあったものを選択することになる。

 

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荒れた手には菌がつきやすい。

 

手荒れは、本人の苦痛だけではなく、皮膚の損傷部位に細菌汚染(黄色ブドウ球菌)が生じやすくなるので、感染予防上、対策が必要となる。

 

※なぜなら、いったん手荒れ部位に黄色ブドウ球菌が付着すると、手をいくら洗っても菌の除去が容易ではないため。

 

 

消毒液の知識

 

ここから先は、「手洗い」の関連知識として『消毒液』について記載していく。

 

※先ほど「衛生的手洗い(手洗いと消毒液使用をセットで実施する方法)」を記載したが、消毒液の使用は必ずしも手洗いとセットではない点は誤解なきよう。。

 

手指用の消毒剤としては以下などがある。

 

  • 流水で洗う場合:

    ビビスクラブ・イソジンなど。

    水を流しながら洗う(石鹸で洗うだけでも十分な効果がある)。

 

  • 洗面器などで洗う場合:

    ヒビテン・オスバン・イソジン・ミルトン・ピューラックスなど。

    流水の設備が無い場合、消毒剤を入れた水でしっかりと洗う。

 

  • すりこんで乾燥させるだけ:

    ヒビスコール・ウエルパス・イソジンパーム。

    速乾性のある消毒剤をじゅぶんに指先に刷り込んで乾燥させる。

 

  • スプレー噴霧:

    霧吹きスプレーにアルコール系消毒剤などを入れ、指先に吹きかける。

 

※ちなみに、これらの消毒剤を使用するにしても、まず水で洗ってからの方が効果的である。

 

用途と効果は以下の通り(書籍『新しい介護』より引用)。

 

薬剤名 ーー 一般細菌 MRSA B型肝炎 C型肝炎

アルコール

(エタノール)

アルコール系 ○~△ ○~△
オスバン 第4級アンモニウム × ×
ヒビテン ビグアナイド系 × ×
ヒビスクラブ ビグアナイド系 × ×
ヒビスコール ビグアナイド系 ○~△ ○~△
ウエルパス 第4級アンモニウム ○~△ ○~△
イソジン ヨード系 × ×
ミルトン 塩素系
ピューラックス 塩素系

 

 

関連記事

 

以下の記事では、感染に関する基礎知識や、感染に注意すべき疾患をまとめているので合わせて観覧してみてほしい。

 

⇒『医療介護従事者が知っておくべき感染症の基礎知識まとめ