この記事では、医療・介護従事者が知っておくべき『AIDS(エイズ)』について、感染予防の観点も含めて基礎知識を解説していく。
AIDS(エイズ)とは
エイズ(Acquired Immune Deficiency Syndrome;AIDS)は、ヒト免疫不全ウィルス(human immunodeficiency virus;HIV)による慢性の進行性の感染症である。
HIVが免疫の働きをもつリンパ球(とくにヘルパーT細胞、すなわちCD4という糖蛋白を細胞膜にもつTリンパ球)に侵入して死滅させ、ヘルパーT細胞を減少させるために免疫機能が低下する。
その結果、発熱・貧血・体重減少などの全身的な症状や、日和見感染(後述する)、悪性腫瘍などの症状を呈するようになった状態を『エイズ』という。
HIV感染後、抗体陰性無症候性キャリアの状態が2~4週間続き、抗体陽性無症候性キャリアとなり、免疫能の低下などによりエイズが発症する。
HIVに感染するのはどんな時?
HIV(ヒト免疫不全ウィルス)そのものは生命力が弱く、熱や消毒液で容易に死滅し、感染も特別な条件下でしか成立しない。
でもって、そお「特別な条件下」というのが、ザックリと以下の3タイプになる。
- 性行為の際、粘膜の傷からウィルスが侵入する
- 血液による感染ウィルスを含んだ血液の輸血、あるいは血液製剤の注射、ドラッグ(晩薬、覚齪剤)の回し打ち、汚染臓器の移植など
- 母子感染⇒子宮内感染(胎児)、産道感染〈胎児)、母乳からの感染(乳児)
- 出血創
- 性器分泌液
- 血液
・・・など。
※それ以外の体液からの伝播危険度は低い。
- 肛門
- 損傷した皮膚
- 性病による潰瘍などの損傷がある性器
- 血液
・・・・など。
※針刺し事故ではウイルスは侵入しやすいが、ウイルス量が少なく感染する危険度は低いと言われている。
HIVに感染してエイズに至るまで
また、AIDSの病期は、次の四つに分けることができる。
- 急性期:
感染後1〜2ヵ月で、かぜ症状ともいえる熱、口内炎、下痢、渡汗などの症状が現われる。この時期の終わりには、血液中に抗ウィルス抗体が確認される。
- 無症状期:
次期のエイズ関連症候群期とあわせて数年〜数十年と幅がある。無症状で、外見上健康とみられるウィルス保有者である。主要な感染源となる。
- エイズ関連症候群期:
CD4細胞が減少して、熱が続き、全身のリンパ節が腫れ、だるさ、寝汗、体重減少が目立つ。
- エイズ期:
末期の1〜2年で、CD4細胞はいよいよ減って感染に無抵抗の状態となる。患者の衰弱は著しい(HIV消耗症候群)。
免疫力が極端に落ちたエイズ期には、二次感染症として、日和見感染症(普段は弱毒の微生物による感染症)にかかりやすくなる。
また、二次悪性腫瘍やその他の合併症がみられる。
エイズによる日和見感染(ひよりみかんせん)
HIVは重要な免疫細胞であるヘルパーT細胞(CD4細胞)を選択的に侵す。
RNA型のこのウィルスは、CD4細胞に侵入すると、逆転写酵素を用いてRNA型からDNA型に変身し、増殖をはじめる。
そして、ウィルスはリンパ球を食い尽くすまで増殖を続ける。こうして、CD4細胞は減り続け、個体の免疫能力はどんどん低下していく。その結果、個体はあらゆる微生物の餌食になってしまう。
この様に、免疫力が極端に落ちたエイズ期に生じてしまう二次感染症を日和見感染症(普段は弱毒の微生物による感染症)であると前述した。
※エイズ患者の死因の95%は(エイズ自体ではなく二次感染症である)日和見感染症であると言われている(CD4+リンパ球が1mm3㎥あたり200~300個以下になると、日和見感染症に罹患する確率が著しく増加する)。
この日和見感染症はエイズ以外にもさまざまな種類があり、日和見感染症に関し得は以下の記事でも記載しているので合わせて観覧してみてほしい。
関連記事⇒『日和見感染とは? 高齢者は感染症にかかり易い件』
エイズの診断と治療
AIDSの診断は、病状と経過から推定され、ウィルスの検査によって確定する。
診断には、抗体の測定とHIVの検出を行なうとともに、免疫機能の検査を行なう(CD4細胞の測定、100/㎥以下は重症)。
また、内臓や脳などへの合併症の検査も行なう。
治療は、ウィルスのDNAへの転写を妨げる逆転写酵素阻害剤のジドブジン(AZT)、ジダノシン(ddI)、ザルチタビン(daC)の投与や、ウィルスの増殖を妨げるプロテアーゼ阻害剤であるサキナピル、リトナビル、インジナビルを投与する。
また、二次感染症に対する抗生物質、二次悪性腫瘍に対する抗腫瘍剤の投与も行なわれる。
さらに、免疫力を強化するインターフェロン療法も試みられている。
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