この記事では、リハビリ職種(理学療法士・作業療法士)のみならず、医療・介護従事者全てが知っておくべき『感染症予防』についてのまとめ記事である。
記事の冒頭で、感染の種類について解説し、その後に具体的な感染症に関してリンクしている。
医療・介護に従事していれば感染症にかかるリスクは高いので、感染症の知識は必須と言える。
この記事では、感染症の中でも医療・介護従事者に馴染み深いものをピックアップしているので是非観覧して知識を深めてもらいたい。
感染の種類について
感染とは以下を指す。
でもって感染が起こるためには以下の3つの要素が必要となる。
- 感染源
- 感染経路
- 感染を受ける人
感染経路について
前述した3つの要素のうち、『感染経路』は以下に分類される。
でもって、各感染経路によって予防対策も異なってくるので必ず覚えておこう。
- 空気感染:
- 飛沫感染:
インフルエンザ・風邪など
- 経口感染:
はしかなど
ではでは、ここからは『接触感染』『空気感染』『飛沫感染』にフォーカスして深堀解説していく。
接触感染
接触感染は以下の2つに分類できる。
- 直接接触感染
- 間接接触感染
直接接触感染
直接接感染は、文字通り「直接接触することにより伝播する感染」を指し、患者ケア時に皮膚どうしの接触による感染などが挙げられる。
主な疾患としては以下などが挙げられる。
- 消化器、呼吸器、皮膚あるいは創の感染症、又はコロニー形成
- MRSA、大腸菌O157感染など
- 環境内に長期間生存し、微生物量が少なくて感染する疾患
- 伝染性が高い皮膚疾患(疥癬など)
- ウィルス性出血性感染症
直接接触感染の対策としては以下などが挙げられる。
- 手洗いと手袋、プラスチックエプロン(マスク、ゴーグル)
- 標準予防策の実施
- 清掃
間接接触感染
間接接触感染は「間接的に感染源が何かを介して伝播することで生じた感染」を指す。
例えば、患者ごとに交換されていな手袋などで感染したり、リハビリなどでは交換されていない枕を他者がそのまま使用することで使用するなどが挙げられるかもしれない。
間接接触感染の対策は、前述した直接接触感染と同様である。
空気感染
空気感染とは「蒸発物の小粒子残留物(5㎛以下の粒子)が空気の流れにより拡散することによって生じる感染」を指す。
主な疾患としては以下などが挙げられる。
※医療従事者で注意すべきは、上記の中では「結核」です。
空気感染の対策としては以下などが挙げられる。
- 特別な空気の処理、換気が必要
- 個室使用
- 標準予防策の実施
飛沫感染
飛沫感染は「微生物を含む飛沫が短い短距離(1m)を飛ぶ(5㎛以下の粒子)ことによって生じる感染」を指す。
空気感染と飛沫感染の違いが分かりにくかったりするが、違いは以下の通り。
飛沫感染の具体的な疾患としては以下などが挙げられる。
- 髄膜炎、肺炎(ジフテリア菌・マイコプラズマ・百日咳菌)
- ウィルス感染症(アデノウィルス・インフルエンザ・流行性耳下腺炎・風疹)
※私たちの身近な疾患では「インフルエンザ」が飛沫感染に該当する。
飛沫感染の対策としては以下などが挙げられる。
- 手洗いと手袋(マスク、ゴーグル)
- 標準予防策の実施
- 清掃
感染経路別に予防対策する必要があるよ
感染経路別予防対策は、空気感染・飛沫感染・接触感染など「感染経路別」に整理した上で対策を実施する必要がある。
標準予防対策と感染経路別予防対策
医療・介護現場における感染予防対策は以下の2つに大別できる。
- 標準予防対策
どの様な感染経路化に関わらず、全ての患者に対して実践すべき予防対策
- 感染経路別予防対策
各感染経路に対応した予防対策
背後にある思惑 | 対象 |
内容 |
|
---|---|---|---|
標準予防対策 | 全ての湿性生体物質は感染の危険がある | 全ての患者 | 手洗い、生体物質に対するバリアプリコーション、針刺し防止 |
感染経路別予防対策 | 感染対策の第一原理は感染経路の遮断である | 感染力の強い、重篤な病態を引き起こす感染症の患者 | 空気予防対策、飛沫予防対策、接触予防対策の3つ(標準予防対策に追加して行う)。 |
標準予防対策の一つである「手洗い」に関しては以下の記事で解説しているので合わせて観覧してみてほしい。
⇒『医療・介護従事者が知っておくべき『手洗い』の基礎知識!(おすすめハンドクリームも紹介)』
感染経路別予防対策の具体例
ここまで記載してきた内容と重複するが、具体的な「感染経路別予防対策」の一覧表は以下の通り。
感染経路 | 感染症 | 予防策 | |
---|---|---|---|
接触感染 |
・患者との直接的な接触 ・体位変換 ・患者の使用するリネン類 ・患者の使用している器具 (ベッド・手摺・ドアノブ) |
・腸管出血性大腸炎(O157) ・VRE(マイコマイシン耐性腸球菌) ・MDRP(多剤耐性緑膿菌) ・PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌) ・ノロウィルス ・ロタウィルス ・流行性角結膜炎 ・Clostridium difficille ・傷部感染 |
・ガウン ・手袋 ・・など |
飛沫感染 |
・咳・くしゃみ ・会話 |
・風疹 ・おたふくかぜ ・百日咳 |
・サージカルマスク |
空気感染 | ・空気中に拡散した飛沫核 |
・結核 ・麻疹 ・水痘 |
・サージカルマスク ・N95マスク ・ワクチン |
~『文献:図解 訪問理学療法技術ガイド』より引用~
疾患によっては一次感染経路と二次感染経路が異なったり、複数の感染経路が存在する疾患もあったり、空気感染と飛沫感染の区別をすることも大切となる。
例えば結核は、飛沫核を肺胞まで直接吸入することによって生じる空気感染であるので、予防策としては以下が必要となる。
- 飛沫核の発生を抑えること(咳の出る患者にマスクをしてもらう、検査室では飛沫核の発生に注意することなど)
- 飛沫核を吸入しないこと(換気をすること、N95マスクをつけることなど)
- 免疫を確認すること(易感染性ではないか)
飛沫感染の飛沫は1m以上飛ばないこと、ほとんどの感染症は接触感染であること、接触感染のうち交差感染は主に医療従事者の手指であることを理解する必要がある。
そのため、交差感染予防にとって最も重要なものは、手洗いと手袋である。
色んな予防対策一覧
以下は「米国疾病管理センターが刊行したガイドライン(CDCガイドライン)」に掲載されている様々な感染予防対策の一覧表である。
これらを標準感染予防対策として、あるいは経路別感染予防対策として活用していく。
標準予防対策 | 空気予防策 | 飛沫予防策 | 接触予防策 | |
---|---|---|---|---|
手洗い |
・体液・体物質に触れた後 ・手袋を外した後 ・患者接触の間 ・通常の石鹸を使う |
|||
手袋 |
・体液・体物質に触るとき ・粘膜・傷のある皮膚に触るとき ・使用後、非汚染物、環境表面に触る前。多患者の所に行く場合は外し、手洗いにする。 |
・入室時は手袋着用 ・汚染物に触ったときは交換する ・部屋を出るときは外し、消毒液で手洗いをする |
||
マスク | ・体液・体物質が飛び散って目・鼻・口を汚染しそうなとき | ・部屋への入室はN95マスクを着用する | ・患者の1m以内で働くときはサージカルマスクを着用 | |
ガウン |
・衣服が汚染しそうなとき ・汚れたガウンはすぐに脱ぎ、手洗いをする |
・患者に接触するときは着用し、出るときは脱ぐ | ||
咳エチケット |
・職員に対し咳エチケットの教育をする ・汚れたガウンはすぐに脱ぎ、手洗いをする |
|||
個室隔離 | ・他の人に病原体を伝播させる恐れのある人は出来る限り個室に入れる | |||
器具 | ・汚染した器具は、粘膜、衣服、環境など汚染しないように注意深く操作する |
・できれば専用にする ・できなければ消毒を行う |
||
環境管理 | ・病原体で汚染したと思われる環境表面は清掃、消毒する | |||
リネン | ・汚染されたリネンは、粘膜、衣服、他の患者や環境などを汚染しないように操作、移送、処理する | |||
患者配置 | ・環境を汚染する恐れのある患者は個室に入れる | ・個室管理の場合、陰圧にし、1時間に6回の喚起を行い、院外廃棄とする | ・個室管理あるいは集団管理あるいは1m以上離す | ・個室隔離あるいは集団隔離あるいは病原体の疫学と患者集団を考えて対処する |
腰椎穿刺 | ・脊柱管、硬膜外腔にカテーテルを置いたり、注射するときにはマスクを着用する。 | |||
患者移送 | ・患者移送はサージカルマスク着用 | ・患者移送はサージカルマスクを着用 | ・制限する |
ちなみに、以下が『サージカルマスク』である。
でもって、以下が「最強のマスク」として知られる『微粒子用(N95)マスク』である。
感染予防で知っておきたい疾患を解説!
ここから先は、感染予防で知っておきたい疾患記事を紹介しておく。
興味がある疾患があればアクセスしてみてほしい。
⇒『感染予防に必要な『肝炎(B型肝炎・C型肝炎)』の基礎知識』
⇒『医療・介護従事者が知っておきたい「疥癬(かいせん)」とは』
⇒『感染予防に大切な「AIDS(エイズ)」「HIV」の基礎知識』
合わせて読まれやすい記事も紹介
この記事と合わせて観覧されやすい記事としては以下になる。
⇒『リハビリのリスク管理に「安全管理・中止基準のガイドライン」を知っておこう!』
⇒『高齢者に多い「帯状疱疹(帯状ヘルペス)」とは?(個人的経験を含む)』