訪問リハビリや通所サービス(デイケア・デイサービス)で重要となってくる嚥下機能と不良姿勢の因果関係を記載していく。
代表的な不良姿勢
①努力性の頭頸部保持
- 姿勢筋緊張が高くなり、舌骨運動の阻害
↓
- 食道入口部の開大不良が起こる。
- また、舌圧も低下するため咽頭への送り込みも不十分になり易い
②左右非対称な姿勢
- ①と同様に左右非対称な肢位は姿勢緊張を高めやすく、大きな誤嚥リスクとなる
③頭頸部の過度屈曲位
- 円背などにより頭を垂れた姿勢での食事では食塊を重力に抗して咽頭に送り込む必要があり、送り込みに大きな力が必要となる。
- 過度屈曲位では食道を開くための喉頭移動距離がとれずに誤嚥が増える。
④頭頸部の伸展位
- 気道を確保するときと同じ姿勢になるため、気道への落ち込みリスクが高くなる。
①②を総合すると、筋緊張が高くなった状態は誤嚥のリスクが高くなるということになる。
筋緊張が高くなる要因は様々だが、座位保持の安定性は最低限確保しておく必要がある。※この意味においても、床に十分足底が接地しておく必要がある。
③④を総合すると、頭頸部は過度な屈曲でも伸展でも誤嚥のリスクが高くなるということになる。
椅子座位と不良姿勢
不良姿勢にならない椅子座位のポイントは以下の通り。
- 頭頸部のポジション→頭頸部は軽度屈曲位
- テーブルの高さ→臍の高さよりも少し上
- 座面の奥行→膝裏と椅子の前縁に3㎝程度の隙間ができる程度
- 足の位置→足底が床にしっかりと着く(フットレストは×)
※介護施設で使用されているテーブルは165~170cmの人に適した高さなため、それに適合した椅子に座ると足が床に設置しない可能性もある。その際は、積極的に足台を使用する。
椅子座位におけるポイントは以下の動画も参照
リクライニング位
リクライニング位は重力を利用して誤嚥のリスクを低減するとともに、頭頸部の筋活動を低くし、筋がリラックスした状態を作ることができるため、重度の嚥下障害者に用いられる肢位である。
※誤嚥性肺炎のリスクが高い人には良い肢位であるが、食べやすい肢位ではない。
リクライニングベッドの操作方法
- 股関節(大転子あたり)とベッドの背上げ軸を合わせる。
- 足上げを先に行い、ずり落ちを防止する。
- 背上げ、足上げを交互に行いながら高さ調節する。
- 浮いてくる大腿裏にはタオルなどで詰め物をする。
- 肩とベッドの間に隙間ができないようにタオルなどを詰めておく
(安定性増大→リラックス) - 頭頸部のポジションは軽度屈曲位になるような枕を使用する。
- 適切な枕が無い場合は、タオルを重ねていくことで微調整する
(適切な頭頸部の角度による誤嚥予防)。
リクライニング位に関しては、以下の記事でも解説しているので、合わせて観覧してもらうと理解が深まると思う。
車椅子は可能な限り使用しない
車椅子は座角によって前座が上がっている(後座が下がっている)。
この様な座面であることによって車椅子座位の安定性は高くなるが、前方へ重心移動しにくいために、上肢の操作性が悪くなり、様々な筋活動が増大してしまい、その結果的に誤嚥のリスクが高くなってしまう。
従って、どうしても車椅子を使用しなければならない場合は、以下のような工夫を検討してみる。
- フットレストから足を下ろして床に足を着くことで重心の前方移動を促し、座角による影響を減らす。
- 両上肢をテーブルの上に置くことで重心の前方移動を促し、座角による影響を減らす。
また、車椅子の座面はスリングシートなため、たわみを有している。
そのため殿筋が萎縮している高齢者では「スリングシートの全体への圧」ではなく「スリングシートの局所への圧」が加わることでスリングシートが歪にたわんでしまい、左右非対称な姿勢となってしまう。
これも、上肢の操作性が悪くなり、様々な筋活動の増大、誤嚥に繋がるリスクを高めてしまう。
対策としては、段ボールを敷くなどで座面を硬くすることで「たわみ」による姿勢崩れを防止できる。
ただし、褥瘡には注意する必要あり。
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