この記事では、高齢者の認知機能検査として『Mini Mental State Examination(MMSE)』を記載していく。
リハビリ職種(理学療法士・作業療法士)や看護・介護の従事者はぜひ観覧してみてほしい。
※「HDS-Rとの違い」や「カットオフ値」も紹介している。
MMSEとは?
MMSEとは、高齢者の認知機能検査として有名な検査である。
従って、同じく有名な改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)と同様に臨床で活用されることも多い。
「高齢者の認知機能検査」と表現すると「認知症かどうかの検査」とイメージしてしまいがちだが、若年者も含めて高次脳機能障害全般に実施できる検査であり、以下なども適応となる。
・頭部外傷
・低酸素脳症
・脳卒中
・・・・・・などなど。
「MMSE」と「HDS-R」の違い
MMSEとHDS-Rの違いはザックリと以下の通り
・前述したように「MMSE」は国際的に標準化された検査なのに対して、「HDS-R」は日本で開発された検査である。
・「HDS-R」が記憶障害の評価が中心なのに対し、「MMSE」は失語・失行・失認に関する問題も含まれている。
・「HDS-R」は言語性課題を用いた主に記憶障害を評価する検査なのに対し、「MMSE」では書字や模写などの動作性課題も含まれている。
・上記からも分かるように、『簡易な検査』という点では共通しているものの「MMSE」のほうが総合的な認知機能障害の評価が可能ということになる。
MMSEの実際(総合得点とカットオフ値)
MMSEは11項目の質問で構成されており、総合得点は30点である。
でもって、23点以下の場合に認知機能の障害が疑われる(カットオフ値)。
ただし『21点~26点⇒軽度認知障害の疑い』『20点以下で明らかな認知障害がある』と解釈の解釈のもと、カットオフ値が『20点以下』と記載されている文献もあるので注意しよう。
MMSEの評価項目+点数
MMSEの評価項目および点数は以下の通り(総合得点30点)。
~参考:図解理学療法検査・測定ガイド~
質問内容 | 点数 | |
---|---|---|
1 |
①今年は何年ですか。 ②いまの季節は何ですか。 ③いまは何時ごろですか? ④今日は何曜日ですか? ⑤今日は何月何日ですか?
|
各1点 (計5点) |
2 |
①ここは何県ですか? ②ここはなに市ですか? ③ここは何病院ですか? ④ここは何階ですか? ⑤ここは何地方ですか?(例:関西地方)
|
各1点 (計5点) |
3 |
物品名3個(相互に無関係)用意し、検者は者の名前を1秒間に1個ずつ言う。 その後、対象者に繰り返させる。 正答1個につき1点を与える。 3個すべて言うまで繰り返す(6回まで)。 何回繰り返したかを記しておく。
|
3点 |
4 |
100から順に7を引く(5回まで)、あるいは「フジノヤマ」を逆唱させる。 ※計算が困難であったり拒否がある場合は、逆唱による検査に変更してみる。
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5点 |
5 |
「3」で提示した物品名を再度復唱させる。 ※正解1個につき1点(計3点)
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3点 |
6 |
・(時計を見せながら)これは何ですか? ・(鉛筆を見せながら)これは何ですか? ※各1点⇒計2点
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2点 |
7 |
次の文章を検者が言い、対象者に復唱してもらう。 「皆で、力を合わせて綱を引きます」 ※文章を完全に言えれば1点
|
1点 |
8 |
(何も書かれていないA4かB5の紙を用意して) 以下の3段階の命令をする。
①「右手にこの紙を持ってください」 ②「それを半分に折りたたんでください」 ③「机の上においてください」
以上のような3段階の命令に対して、段階ごとに正しく動作ができればそれぞれ1点。 各1点⇒計3点
|
3点 |
9 |
(次の文章を読んで、その指示に従ってください) 「眼を閉じなさい」
(対象者が見える大きさの文字で「眼を閉じなさい」と書かれた紙やボードを提示して) 「ここに書かれている動作を行ってください」と指示する。 対象者が、書かれているとおり眼を閉じた場合に1点を与える。 |
1点 |
10 |
(何も書かれていないA4かB5の紙と鉛筆を渡して) 「この紙に何か文章を書いてください。どのような内容でもかまいません」と伝える。
ちゃんとした文章になっていれば1点。 ※例文などは与えない。意味が通じれば1点。
|
1点 |
11 |
(A4かB5の紙と鉛筆を用意して、以下のような重なった2個の五角形を書き込んだ紙やボードを提示して)「この図形と同じものをこの紙に書いてください」と伝える。
模写された図形について、角が明確に10個あり、2つの五角形が交差していれば1点。
|
1点 |
各項目の意味
MMSEの各項目における意味は以下の通り。
- 1・2は『見当識』の評価である。(10点)
- 3は『記銘』の評価である(3点)
- 4は『注意と計算』の評価である(5点)
- 5は『再生』の評価である(3点)
- 6~11は『言語』の評価である(9点)
※11は「構成行為の評価である」との解釈もある。
関連記事
世界的に有名な認知症評価スケールは『MMSE』が有名だが、日本で一番有名なスケールは(ここまでも何度も記載してきた)『改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)』である。
※臨床では、HDS-Rを活用することの方が多い。
以下の記事では、HDS-Rについて各項目の評価ポイントも含めて深堀り解説しているので、ぜひ一度観覧してみてほしい。
HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール) | 認知症評価(+脳卒中患者へ活用時の注意点)
その他、認知症関連記事としては以下などもある。
特に介護・介護予防分野に携わる人は、これらのリハビリ職種にかかわらず、これらの知識を持っている人は増えているので要チェック!