この記事では、高齢者の筋パワー・俊敏性を簡便に評価する手法として「立ち座りテスト」と「ステッピングテスト(座位or立位)」を解説していく。

 

これらのテストは、通所サービス(デイケア・デイサービス)の体力測定として、活用され易いテストである。

 

スポンサーリンク

 

目次

閉じる

立ち座りテストとは

 

立ち座りテストとは、椅子に座った状態から、反復して立ち座り動作を繰り返してもらうテストである。

 

椅子とストップウォッチさえあれば簡便に実施でき、しかも信頼性、妥当性が検証されている代表的な筋パワーテストとなる。

 

 

立ち座りテストの種類

 

立ち座りテストには以下の2種類の方法がある。

 

number of stands protocol

決められた回数(5回あるいは10回)を立ち上がるのに要した時間で評価する方法。

 

time protocol

決められた時間内(30秒あるいは10秒)に何回立ちあがれたかで評価する方法

 

 

特に、time protocolにおける30秒を指標にしたテスト『CS-30(chair standing 30 second)』は比較的よく聞く用語である。

 

 

30秒間いす立ち上がり検査(CS-30):

 

下肢粗大筋力の一指標としてCS-30(chair standing 30 second)を測定する。

CS-30は下肢筋活動量やバランス能力,歩行速度と関連すると報告されており、いすからの立ち上がりを患者の最大速度で行うため、速い反復運動を苦手とするパーキンソン病患者に有用である。

 

 

理学療法関連のエビデンス:

 

中谷らは健常高齢者1,469名を対象にCS-30を測定し、CS-30は下肢筋力と相関することと各年代の基準値を報告している。

 

理学療法評価学テキスト(シンプル理学療法学シリーズ)の第1版より~

 

 

立ち座りテストの方法

 

立ち座りテストの方法は以下の通り

 

  1. 肘掛けがない椅子へ浅めに座る(背もたれから離れる)。

    両手を旨の前で交差させておく。

    両膝は握りこぶし1つ分くらい開く(出来るだけX脚やO脚にならないようにする)

    足底を床につけ、踵を少し引く

     

  2. テストが開始すると同時に、立ち座り動作を決められた回数(あるいは決められた時間)繰り返す。

    立つ際は、両膝が完全に伸展するまで立ち上がり、素早く座位姿勢に戻る。

 

※練習を5~10回行い、姿勢を確認した後に本番を開始する。

※特に、立ち上がった際に膝や腰が伸びていない場合があるので注意する。

※膝関節や腰部に違和感を訴えたら中止する。

 

 

立ち座り動作のイメージは以下の動画を参照。

 

 

10回立ち座りテストや30秒立ち座りテストでは(5回立ち座りや10秒たち座りテストと比べて)動作を何回も反復することから、筋パワーよりも筋持久力の要素が大きく影響するため、筋持久力低下による測定不能となる可能性もある。

 

筋パワーとは以下を指す。

 

筋力によって成された単位時間当たりの仕事量。瞬発的に筋力を発揮する能力

 

 

5回立ち座りテストの解釈

 

筋パワーテストとしては5回立ち座りテストが14秒以上かかる高齢者では転倒の危険性が7倍に高くなると言われている。

文献)Ikezoe T et al : Physical function screening of institutionalized elderly women to predict their risk of falling.jpn J Phys Fit Sport 58(5) : 489-498,2009

 

 

5回立ち座りテストの年代別基準値

年代 サンプル数 平均値(sec) 95%信頼区間
60~69歳 4184 11.4 11.4~11.4
70~79歳 8450 12.6 12.6~12.6
80~89歳 344 12.7 10.7~14.8

 

文献)Bohannon RW : Reference values for the five-repetition sit-to-stand test : a descriptive meta-analysis of data from elders. Percept Mot Skills 103(1) : 215-222,2006

 

スポンサーリンク

 

ステッピングテスト(座位or立位)

 

ステッピングテストとは座位あるいは立位で出来るだけ早く足踏みを5秒行わせ、その回数を測定するという非常に簡便な下肢俊敏性テストである。

 

高齢者では座位よりも立位でステッピングテストを行うほうが、再現性が高く、また転倒との関連性も認められる。

※高齢者の立位ステッピング回数と移動能力や転倒との間には密接な関連性が認められている。

 

転倒を回避するには、立位でいかに早くステップして体重支持ができるかは重要な要素の一つである。

 

この立位ステッピングテストが17回を下回る高齢者では転倒の危険性が約7~8倍に高くなると言われている。

 

文献)池添冬芽ほか:高齢者の転倒を予測するためのステッピングテストの有用性.PTジャーナル43 : 989-995,2009

 

 

立位ステッピングテストのイメージは以下の動画を参照。

 

 

高齢者は、こんな素早いステッピングは出来ないが、要は「素早くステッピングを意識してもらう」ということ。

 

 

関連記事

 

転倒予防に関するテストを以下の記事にまとめているので、こちらも参考にしていただきたい。

 

転倒予防テストのカットオフ値まとめ

 

 

転倒リスクのカットオフ値が以下となる。

※ここからでも興味のある記事にアクセスすることができる

 

テスト カットオフ値
膝伸展筋力 1.2Nm・kg
FRテスト 15cm未満
片脚立位保持テスト(開眼) 5秒以下
TUGテスト 13.5秒以上
歩行速度 毎秒1m未満(横断歩道が渡りきれない)
5回立ち座りテスト 14秒以上
立位ステッピングテスト 17秒以上