この記事では、高齢者も活用出来そうな立位バランステストを難易度準に記載していく。
これらの手法は「テスト」であると同時に「転倒予防のリハビリ(理学療法)」にも、そのまま応用できるので、そういった視点でも観覧してもらいたい。
ロンベルグテスト(Romberg test)
これは、単純に立位姿勢を保持してもらい、開眼・閉眼で体幹動揺に差があるかどうかを評価するテストである。
具体的には以下の通り。
試験の基本的要領は次の通り。
1.被験者は手を体の側面に添え、開眼して足をそろえて立つ。
2.被験者が目を閉じ、そのまま実施者は一分間観察する。
この試験では、閉眼によって被験者が倒れることがあるため、倒れた際には受け止められるように、実施者は被験者のすぐ近くに立っておくことが望ましい。
ロンベルグ徴候が陽性であるとは、次の2点をどちらも満たすことをいう。
①被験者は開眼していれば立てる。
②被験者が閉眼すると倒れる。
次のような場合は陽性とはいえない。
・被験者が開眼していても倒れてしまう。
・あるいは閉眼した際にふらつくが倒れない。
~ウィキペディアより~
感覚性運動失調がある場合は陽性となる。
※小脳性失調がある場合は、閉眼するまでもなく(開眼した状態でも)倒れてしまうことがあり、その場合は『陽性』とは表現しない。
感覚性運動失調が無い場合においても、閉眼で立位保持することによって(視覚情報を遮断した状態での)姿勢調整能力を評価することができる。
非常に難易度の高い方法ではあるが、姿勢調整能力向上のリハビリ(理学療法)と言えなくもない。
※もし、難易度を高めたければ上肢を前方に拳上してみたり、「PNFのフックライング」を閉眼立位にて実施しても良い。
マン肢位の保持
マン(Mann)肢位は、立位にて「一側のつま先」と「反対側の踵」をくっつけた状態で保持するテストとなる。
※「継ぎ足立位」や「タンデム肢位」などとも呼ばれる姿勢である。
~http://ikikenko.nms.ac.jp/kenkou/exercise/バランス感覚を養う運動 より画像引用~
これはバランステストの中でも最も基本となるテストに該当する。
判定基準は以下の通り。
正常:30秒以上保持することができる。
陽性+:30秒以上保持することは出来るが、体軸の動揺がみらえる。
陽性++:体軸の動揺が著しくみられるが、転倒することは無い。
陽性+++:短時間保持することすらできない。
目線はなるべく前方を見るように指示する。
ロンベルグテストと同様に閉眼にすることで、難易度が上がる。
単なる立位姿勢よりも側方への安定性が乏しくなるので、転倒へ配慮する。
安全性に配慮し、平行棒内で行うと対象者は安心できる。
マン肢位を活用してのリハビリ(理学療法)は以下の記事でも記載しているので参考にしてもらいたい。
ファンクショナルリーチテスト
ファンクショナルリーチテスト(Functional reach test)とは、立位姿勢から一側の上肢をなるべく遠くまで伸ばす(リーチする)テストである。
簡便かつ定量的な評価方法であり、立位でのバランス能力評価の方法として信頼性・妥当性が検討された代表的な評価方法でもある。
このテストと転倒の因果関係も示されており、介護保険の通所サービスでも体力測定の一環として導入している施設も多い。
ファンクショナルリーチテストに関しては以下の記事で詳細に解説しているので、参考にしてみてほしい。
⇒『ファンクショナルリーチテストを動画で理解!』
このテストも、そのままリハビリ(理学療法)に応用できる。
ただし、そのまま前方へリーチさせてばかりでは面白みがないので、理学療法士が「ギリギリ届く距離」で輪っかを持ち、その輪っかを対象者にリーチして取ってもらうといった手法でも良い。
単純な前方のみならず、側方、上方、下方などんお「ギリギリ届く距離」へリーチしてもらう事は機能的であり、転倒予防にもつながる。
この様なリハビリ(理学療法)でテスト結果が改善したら、すなわち「バランス能力が改善した」ということを意味する可能性がある。
余談としてファンクショナルリーチテストは、課題中に以下の3つの戦略を使い分けている。
・足関節回りの戦略(ankle strategy)
・股関節回りの戦略(hip strategy)
・体幹回旋の戦略(trunk strategy)
従って、動作分析をすることで、能力への寄与、バランス能力の使い分けを評価することも出来る。
「足関節回りの戦略(ankle strategy)」や「股関節回りの戦略(hip strategy)」に関しては、以下の記事でも言及しているので参考にしてもらいたい。
片脚立位保持テスト
最後は片脚立位保持テストである。
つまり、片足を浮かせた状態で姿勢を保持してもらうテストとなる。
意外に思われるかもしれないが、実はかなり難易度の高いテストだったりする。
その理由としては、支持基底面の最も小さい状態でのテストであり、高度の姿勢保持能力が要求される。
従って、(意外に思われるかもしれないが)実はかなり難易度の高いテストだったりする。
開眼か閉眼かでも難易度が変わるが、高齢者では「片足立ちくらいできそうな人」だと思っても、意外と(開眼の片脚立位保持すら)失敗してしまうことがある。
判定基準は以下の通り。
①片脚立位保持時間の異常判定:
・開眼30秒以下
・閉眼10秒以下
②接床の異常判定(30秒の片脚立位保持中)
・開眼:接床1回以上
・閉眼:接床3回以上
~補足~
①マン肢位テスト・片脚立位テスト:
・いずれか一方が異常判定⇒軽度傷害
・両テストとも異常判定⇒中等度障害
②ロンベルグテスト・マン肢位テスト・片足立ちテスト:
・いずれも異常判定⇒高度障害
片脚立位保持テストに関しては以下も参照