この記事では、変形性股関節症に対する手術法の一つである『関節鏡視視下手術』について記載していく。
変形性股関節症に対する関節鏡視下手術
関節鏡とは、胃の内視鏡の様にカメラを関節内に挿入して、内部の状態を観察する医療器具である。
検査だけでなく、様々な処置を行うことも可能で、その治療法を「関節鏡下手術」と呼ぶ。
この治療法では、通常の手術の様に、皮膚を大きく切開することが無いため、体への負担が少なくて済む。
そのためどの年代でも受けることが出来、また、前股関節症から末期股関節症まで、どの病気でも手術が可能である。
ただし、治療後に症状が再発することもある。
関節鏡視下手術の主な特徴
関節鏡視下手術の主な特徴は以下になる。
対象となる人 |
・前股関節症状から末期まで、どの病気でも手術が受けられる。 ・前股関節症、初期股関節症で関節唇損傷がある人 ・進行期以降で、特に片側のみの人 |
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入院期間 |
・前股関節症、初期股関節症の場合は2~3週間程度入院する。 ・進行期以降では、1か月以上の入院が必要な場合もある。 |
メリット |
・手術時に皮膚を大きく切開しないため、体への負担が小さい ・傷跡が小さくて済む。小さな点状の傷跡が2~3か所残る程度。 |
デメリット |
・効果の持続期間に限りがある。 ・再び悪化した場合は、人工関節置換術が必要となることもある。 |
関節鏡視下手術の方法
関節内視鏡視下手術は、全身の麻酔あるいは腰椎麻酔をかけ、股関節の周辺に2~4か所、直径1cmほどの小さな孔を開ける。
この孔から関節鏡を挿入し、関節包を破って、関節内部まで入れる。関節鏡の先端に装着したカメラから送られる映像をモニターで見ながら、慎重に行われる。
手術時は、電動シェーバーや電気メスなどの手術器具を、他の孔から挿入する。
医師はモニター画面で関節の内部の様子を確認しながら、手術器具を操作して、必要な処置を施す。
術後は、孔が塞がり、直径5mm程度のポツリとした傷痕が残るだけである。
関節鏡視下手術法の種類
股関節に対する、関節鏡視下手術法の代表例としては以下などが挙げられる。
関節唇部分切除術:
関節唇が損傷すると、周囲の滑膜に炎症が起こるが、損傷部分を切除することで痛みが治まる。
関節デブリドマン:
痛みの原因となるデブリ(関節軟骨のかけら)を取り除き、大腿骨頭と関節包の癒着をはがす。
関節受動術:
関節デブリドマンに加え、骨棘の切除などで関節の接合面を整えたり、筋肉の一部を切ったりする。
ここでは、関節デブリドマンにフォーカスして解説していく。
関節デブリドマンについて
変形性股関節症では、関節内に断裂した関節唇片や増殖下滑膜などがある場合がある。
で、関節鏡でこれらを把握し、以下などの手術を施行する。
- 関節液中のデブリ(関節軟骨のかけら)を取り除き、きれいに洗浄する。
- 炎症で厚くなった滑膜を切除する(関節包と大腿骨頭の癒着があれば切り離す)。
股関節に痛みが起こる大きな原因の一つは、関節軟骨がすり減ることだと言われている。股関節に過剰な負荷がかかり続けると、関節軟骨が徐々にすり減ってくる。
ただし関節軟骨には、痛みを感じる神経が通っていないため、すり減ること自体で痛みが起こるわけではない。
関節軟骨がすり減ると、その破片が、股関節を覆っている関節包内に飛び散りる。
すると体の免疫機能が、その破片を異物として処理しようとする。その反応の結果、関節包の最も内側にある「滑膜」という組織に炎症が起きる。滑膜には痛みを伝える神経が通っているため、炎症によって痛みを感じる。
関節鏡視下手術のエビデンス
関節鏡視下手術のエビデンスとしてはMindsガイドランなどを参照してみてほしい。
⇒『外部リンク:Mindsガイドライン 変形性股関節症に対するの関節視鏡視下手術の治療効果は』
実際の所、手術によって痛みが大幅に改善されることもあれば、あまり変化が無いといったケースもあるようだ。
従って、(いくら身体への負担が少ない、侵襲が少ないとはいっても)手術に対する意見は医師によって異なる。
症状が改善されない場合は、以下などが選択肢となる。
- リハビリなどの保存療法(っというか手術をしてしまっているので、術後療法になるのか)を実施する。
- 変形性関節症の程度が軽い場合は、再度関節鏡下手術を受ける
- 変形性股関節用の程度が重い場合は、人工関節置換術を施行する。
・・・など。