この記事では、変形性膝関節症に対する手術療法の一つである『高位脛骨骨切り術』について解説していく。
高位脛骨骨切り術とは
変形性膝関節症の多くは、ひざ関節の内側の関節軟骨や半月板がすり減ることで、徐々にO脚になることが多い(あくまで一般論)。
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で、下肢に重みをかけるとO脚が強調され、内側にいっそう重みがかかるようになる。
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すると、ますます膝の内側がすり減りO脚が悪化、という悪循環に陥ってしまう。
変形性膝関節症には、膝関節の内側の関節軟骨や半月板がすり減って、大腿骨と脛骨の間が狭くなるタイプが多く見られる(俗にいうO脚タイプ)。
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O脚の人は膝の内側に偏って体重がかかるため、内側の軟骨がすり減りやすく、すり減るとさらにO脚が強まって負荷が増す。
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その結果、痛みがどんどん強まるといった悪循環に陥る
で、この悪循環を断ち切る手術法が、高位脛骨骨切り術だ。
高位脛骨骨切り術とは
前述した経緯で「膝の内側がすり減り、O脚が悪化する」という悪循環に陥ってしまうことが多いのだが、一方で「膝の外側の軟骨」は負担が軽く、関節軟骨は正常のままでいることも多い。
で、内側の関節面にかかる荷重を健常な外側に移動することで、病変部の負担を軽くし、ぐらつきを少なくするために行うのが『高位脛骨骨切り術』である。
※以下のイラストは、左足を例に「右側が術前」「右側が術後」を示している。
※「脛骨」を誤って「頚骨」と記載してしまったので謝っておく。
※術前イラストの「切除」と記載された部分がなくなることで、荷重軸が(菜骨があまりすり減っていない)外側に移動し、痛みが軽減されるという発想だ。
重複するが、手術によって以下が生じるということになる。
その結果、歩いたり動いたりしたときに痛みが軽減される。
ここまで記載下来たことからも分かるように、高位脛骨骨切り術の実施前に、関節の外側の状態が良好であることを確認する必要がある。
※外側の軟骨の状態も悪い場合は非適応となる。
※半月板損傷がある場合は、その処置を加えることもある。
高位脛骨骨切り術の方法
高位脛骨骨切り術には、『クローズドウェッジ法』と『オープンウェッジ法』という2つの方法がある。
以下のイラストは「①→クローズドウェッジ法」・「②→オープンウェッジ法」である。
クローズドウェッジ法:
膝下(脛骨)の外側を2cmくらい切開し、腓骨と脛骨を切る。最後に金属のプレートを挿入して固定する。
これで体重が膝の外側にかかるようになる。
※FTA180~200°ぐらいまでの人が対象となり、FTAが170°ぐらいになるように矯正する。
オープンウェッジ法:
こちらの術式の方が一般的である。
膝下(脛骨)の内側を切開し楔型になるように広げる。で、そこに人工骨(またはほかの部位からとった骨)を充填、金属製のプレートで固定する。
FTAが180~190°くらいの軽度のO脚の人が対象となる。
FTAについて
前述の2つの術式で『FTA』なる用語が出てきたが、以下のイラストで何となくFTAをイメージしてもらえればと思う。
FTAに関しては、以下の記事でもう少し詳しく解説しているので、興味がある方は観覧してみてほしい。
⇒『外反膝・内反膝(X脚とO脚)・スラスト現象を解説!-膝OAの治療法』
手術の適応・メリット・デメリット
「高位脛骨骨切り術」の適応・メリット・デメリットは以下の通り。
適応(この様な人に医師が勧めることが多い)
適応は以下となる。
この手術が行えるのは、軽度〜中等度で、なおかつO脚でもひざ関節の外側が健常に近い人となる。
また、立位で大腿骨と脛骨の角度(FTA)が180度以上あることが一般的な条件である。
メリット
- 手術の効果が長く続く
- 杖なしで自由に歩行できるようになり、山登りや畑仕事なども可能になる
- (人工膝関節全置換術と異なり)関節をそのまま残すので、手術後に膝を動かす感覚(深部感覚)が保たれる。
デメリット
- 入院期間が長い(2か月半程度)
- 日常生活が不自由なくできるようになるまでに手術後4~6か月程度必要
- 感染症、骨切り部近くにある神経の麻痺、骨の癒合が不十分、変形矯正の過不足などが起こる可能性も
- 関節そのものを治す手術ではないので、膝の可動域はあまり改善しない。
- 10年以上経過すると、痛みが再発する人がいる
関連記事
以下は、変形性膝関節症に関する様々な手術方法をまとめた記事になる。