この記事では変形性股関節症に対する手術療法の一つである『人工関節置換術』について記載していく。

 

目次

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変形性股関節症に対する『人工関節置換術』の特徴

 

股関節の変形がかなり進み、ほかの治療法では改善できない場合、「人工関節置換
術」が考慮される。

 

傷んだ股関節を取り除き、金属などで作られた人工関節に替える手術である。

 

人工関節は、人工の寛骨臼と大腿骨頭がセットになっており、それぞれを骨盤と大腿骨に埋め込んで固定する。

 

体内に人工物を入れることに抵抗感を持つ人もいますが、人工関節に替えることで日常生活に不自由がほとんどなくなるため、進行期股関節症、末期股関節症では十分に
考慮すべき治療法と言える

①大腿骨頭は頸部から切除する。

②ステムを埋め込む部分を削る

③置き換えるカップが形状に合わせて、寛骨臼内部の損傷のある関節軟骨や骨の表面を削る

 

 

股関節への人工関節置換術のメリット・デメリット

 

人工関節置換術のメリット・デメリットは以下の通り。

 

メリット:

・痛みがほぼ消失する

・早期から荷重をかけることが出来る(短期間で社会復帰することが出来る)

・手術後の動作や日常生活が容易になる

 

デメリット:

・耐用年数に限りがある場合がある。

・人工関節が摩耗した場合、人工関節の緩みや脱臼が起きた場合は再手術が必要となる場合がある。

 

 

人工関節置換術は、病状がどれほど進行していても受けられるのが最大の特長だ。

 

ただ、自分の股関節を取り除くため、人工関節の耐久性が問題になる。

 

人工関節は長期間にわたり使えるものですが、摩耗したり、破損することもある。

ただし20年以上前に置換した人工関節でも、9割以上の割合で現在も問題なく使用できている(現在はより性能が高くなっているので、それより長く、20〜30年以上もつ可能性がある)。

 

そのため人工関節に替えるのは、50~60歳代以降の人に勧められる。

 

骨切り術は若い世代が対象ですが、人工関節置換術は、骨切り術の対象になりにくい中高年が主な対象なのも特徴と言える。

 

 

人工股関節術後のリハビリの大まかな目安

 

人工関節置換術後のリハビリテーションで注意したいのは、関節が外れる脱臼だ。

 

そのため、手術後の経過に合わせて、脱臼に注意しながら訓練を進めていく。

 

順調にいくと、退院後1か月ほどで、杖を使わずに歩けるようになる(ただし、術時年齢などにも左右されるので一概には言えないが)。

 

人工股関節術後のリハビリの大まかな目安は以下となる。

 

手術当日:

・ベッド上だ安静に過ごす

・ベッドを起こすこす(ギャッジアップ)は可能

・医療スタッフの管理下(人工骨頭が脱臼しないような管理下での)体位変換。

・ベッド上に手関節可動域訓練を開始。

・ポイント⇒足先を小まめに動かし、深部静脈血栓症や筋力低下を予防する。

 

 

手術後2~3日:

・医療スタッフの管理下で、車椅子を使って離床

・痛みの無い範囲で、手術した脚に荷重する(体重をかける)

 

 

手術4~6日:

・医療スタッフの管理無しで車椅子に移乗する(十分なリスク管理が出来る人に限るが)。

・許可が出れば、医療スタッフの管理下で、歩行器などを使って歩く。

・リハビリ室で立位訓練・歩行訓練などを始める

・ポイント⇒リハビリ以外の時間における自主トレーニングも積極的に実施する。

 

 

術後7~13日:

・医療スタッフの介助なしで体位変換をする。

・医療スタッフの管理無しで、歩行器や杖を使用して歩く。

・リハビリとして、階段昇降や、坂道の上り下りの練習を始める。

 

 

術後14日:

・杖を使っての歩行、階段昇降、体位変換が自分で安全に出来るようになる。

入浴づ小田など、自宅での安全な動作のしかたを覚える

 

 

退院

 

 

股関節の人工関節置換術に対するリスク管理(禁忌肢位)

 

股関節の人工関節置換術に対するリスク管理として「深部静脈血栓症」や「腓骨骨神経麻痺」といった下肢の術後に生じやすいものの他に、『脱臼』に注意する必要がある。

 

でもって、ここでは手術の侵入方法別の股関節脱臼について記載していく。

 

また、深部静脈血栓症や腓骨神経麻痺に関しては以下の記事で深堀しているので、興味がある方は観覧してみて欲しい。

⇒『脛腓関節のモビライゼーション(+腓骨神経麻痺)

⇒『深部静脈血栓症の意味・予防・治療・禁忌を整理しよう

 

 

手術の侵入方法別の股関節脱臼の事故予防(前方 or 後方アプローチ)

 

手術の進入方向は、オペレコード(手術記録)や執刀医へ聞けば容易に確認できる。

 

また、進入部の皮切跡を見ても確認できる。脱臼事故の発生は術後1カ月間に多い。

その原因は股関節周囲の筋力低下によるものや危険認知力の欠如が挙げられる。

 

後方アプローチの場合:

・後方アプローチが一般的である。

・過度の屈曲・内転・内旋。

・日常生活としては、車椅子のフットレストを動かす、床のものを拾う、靴の着脱。和式トイレのような動作。

 

前方アプローチの場合:

・過伸展・外旋に注意する。

・日常生活としては、例えば「立ったまま身体を捻って後ろのものを取ろうとするような動き」は危険。